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プラダーウィリー症候群の特徴(染色体異常)

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author:DNAサイエンス
プラダーウィリー症候群

プラダーウィリー症候群とは指定難病の一つで、長期にわたる継続的な治療やケアが必要なことから、小児慢性特定疾病として認定されています。

症状は多岐にわたり年齢に応じて変化しますが、食欲中枢や感情の中枢、性腺機能などの異常によって複数の身体的、精神的、行動的異常が起こります。

ここではプラダーウィリー症候群について、どのような特徴があるのか?原因は?といった内容も含めて基本的な情報をご紹介いたします。

プラダーウィリー症候群の特徴

【プラダーウィリー症候群の特徴と主な症状】

  • 筋緊張低下
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 低身長
  • 性腺機能不全
  • 精神発達遅滞
  • 性格障害・行動異常
  • 特徴的顔貌

これらの症状は生まれてすぐに現れるわけではなく、成長とともに顕著になったり変化したりします。

患者さんによって現れる症状の種類や程度には個人差があります。

筋緊張低下

筋緊張低下とは、筋肉の通常の緊張や固さが著しく低い状態を指します。

これは「筋肉の弱さ」とは異なり、筋肉の強さが正常であっても筋緊張が低下している場合があります。

プラダーウィリー症候群においては新生児期によく見られ、呼吸や哺乳する力、姿勢の維持が難しいことがあります。

肥満

大量の食べ物、肥満のイメージ

満腹中枢の異常により3歳ごろから過食傾向が始まり、生涯にわたって続きます。

常に空腹感を感じるため食欲の制御が難しく、食べ物に対する強い執着を示します。

さらに運動能力の低さから活動量が少ないことが多く、余分なカロリーが体脂肪として蓄積されやすくなります。

食欲に任せる生活を続けていると肥満、ひいては糖尿病につながります。

低身長

成長ホルモンの不足により幼児期頃から低身長が目立つようになります。

成長ホルモン補充療法を行わなかった場合、成人の平均身長は以下のようになります。

男性:147.7±7.7cm

女性:141.2±4.8cm

ほかにも、成長ホルモンの不足は骨の形成や代謝に悪影響を及ぼします。

性腺機能不全

生まれたときから外性器が極端に小さい、形態異常がある、曖昧であるなどの外性器低形成がよく見られます。

男児は停留精巣(睾丸が陰嚢にない)やミクロペニスが90%以上に認められ、女児は陰唇・陰核など外性器の低形成が起こります。

性腺が上手く機能しないため性ホルモンの産生に影響し、二次性徴が遅れたりこなかったりし、生殖能力の低下などにつながります。

精神発達遅滞

知的障害は軽度から中程度で、言語発達の遅れや学習困難、社会的スキルの遅れなどにつながります。

他人の感情や社会的な手がかりを理解するのが難しいことがあり、多くは特別支援学級へ進級します。

性格障害・行動異常

感情をコントロールする脳の領域に異常があるため、性格障害や行動異常が見られます。

大多数の人とは違う反応や行動をみせたり、ものの捉え方や考え方に偏りがあり特定のルーティンや習慣に強く固執することがあります。

感情が適切にコントロールできず爆発することがあり、友達を作ることや社会的な状況で適切に振る舞うことが難しく、状況にそぐわない行動でしばしば他者や本人にとって有害である行動をとってしまうことがあります。

特徴的顔貌

染色体異常では疾患ごとに似たような特徴を持つ顔立ちが見られることがありますが、プラダーウィリー症候群も以下の特徴的顔ぼうがあることで知られています。

【プラダーウィリー症候群の特徴的顔貌(がんぼう)】

  • 狭いひたい
  • アーモンド様眼瞼裂
  • 口角の下がった口

そのほか新生児期は表情に活気がない無欲顔貌が見られることがあります。

成長とともに増える症状

【新生児期・乳児期】

  • 筋緊張低下:泣き声が弱い、少ない
  • 哺乳障害:吸う力が弱く、経鼻・経管栄養となることが多い
  • 食欲不振・摂食障害
  • 外性器低形成
  • 色素低下:金髪に見えることも。

【幼児期】

  • 過食:異常な食欲により肥満に。
  • 低身長
  • 運動能力の遅れ:歩行開始などが遅れる
  • 言語発達の遅れ:言葉の習得が遅れる

【学童期】

  • 学習障害
  • 行動障害:頑固、他者を操ろうとする行動、脅迫行動など

【思春期】

  • 性的発達の遅れ:二次性徴発来不全
  • 学業成績の低下

【成人期】

  • 多くが不妊
  • 肥満に関連する健康問題:糖尿病、高血圧、心疾患、閉塞性無呼吸症候群のリスク
  • 骨密度低下:骨粗しょう症、脊柱側弯症
  • 睡眠障害
  • てんかん発作

なぜ起こる?原因とは

プラダーウィリー症候群の染色体

プラダーウィリー症候群は染色体異常によって起こる、先天性の病気です。

ヒトの染色体は23対(46本)あり、そのうち22対の常染色体は長いものから順番に1~22番の番号が割り振られています。

プラダーウィリー症候群は、15番染色体の特定部位に起こる異常によって引き起こされます。

この疾患は複数の遺伝的メカニズムによって生じることがありますが、共通しているのは、父親から受け継ぐ15番染色体の一部が欠如または機能していないことです。

【父親由来染色体の欠失:約70%】

父親由来の15番染色体の特定領域が欠けているケース。

【片親性ダイソミー:約25%】

母親から2つの15番染色体を受け継いでおり、父親からは受け継がれていないケース。

通常、私たちは一方の染色体を母親から、もう一方を父親から受け継ぎます。

しかし、このメカニズムでは父親の遺伝情報が欠如しています。

【刷り込み変異:約5%】

15番染色体の特定領域の遺伝子が適切に「インプリンティング」(特定の遺伝子が父親または母親から受け継がれた際にのみ活性化する現象:この場合は父親由来)されていないため、これらの遺伝子が不活性で正しく機能しないケース。

なお、同じく15番染色体の特定領域の異常によって起こる染色体異常に「アンジェルマン症候群」があり、こちらは母親由来の染色体が原因となります。

遺伝するのか?

染色体異常のイメージ、DNAが損傷している

染色体異常と聞くと親から子へ遺伝するように感じる方が多いようですが、その多くは遺伝ではなく突然変異で起こります。

プラダーウィリー症候群も「父親由来染色体の欠失」の場合、遺伝性はなく突然変異で起こります。

遺伝する可能性がある例としては、父親が保因者(症状はないが染色体に欠失がある)であるケースで、この場合は50%の確率で遺伝します。

治療方法

プラダーウィリー症候群の原因である染色体異常そのものを根本から直す治療法は存在しないため、症状に応じた対症療法を中心に治療を行っていきます。

治療には医師、栄養士、物理療法士、作業療法士、言語療法士、心理学者など、多職種の専門家が関与することが一般的です。

【プラダーウィリー症候群の代表的な治療法】

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 成長ホルモン療法
  • 性ホルモン補充療法
  • 糖尿病・高血圧治療
  • 行動症状に対する治療

成長ホルモン療法は身長の成長を促すだけでなく、筋肉量を増加させ、体脂肪を現象させる効果もあり、身体的な活動能力と生活の質の向上にも寄与します。

性ホルモン補充療法により二次性徴の発現を助けるだけでなく、骨密度を改善して将来の骨粗しょう症のリスクを減少させることができます。

過食に対しては食事療法によって栄養管理を行いつつ、行動療法や運動療法などにより多方面からサポートします。

平均寿命

プラダーウィリー症候群の患者における平均寿命は不明ですが、予後は症状の重症度や合併症の有無および管理によって大きく異なります。

死亡要因としては乳幼児期ではウイルス感染時の突然死、成人では肥満、糖尿病に伴う合併症が多いです。

プラダーウィリー症候群の子が生まれる確率

プラダーウィリー症候群の子が生まれる確率は、約15,000人に1人の割合であると推定されていますが、正確には不明です。

高齢出産で確率が高くなる

妊婦さんの年齢が35歳以上で、はじめて出産することを一般的に「高齢出産」といい、高齢出産ではプラダーウィリー症候群の子が生まれる頻度が高くなります。

女性の出産年齢が高くなると胎児の染色体異常が起こる確率が高くなる原因は、卵子が作られる過程で細胞分裂のエラーが起こりやすくなることにあります。

近年では高齢出産の割合が増えているため、母性片親性ダイソミーによるプラダーウィリー症候群も増えています。

検査方法

プラダーウィリー症候群の診断は染色体検査によって行われ、この検査は生まれる前と生まれた後のどちらでも可能です。

染色体異常は生まれつきのものなので後天的になることはありませんが、症状が軽い場合は新生児期にはプラダーウィリー症候群だと気づかれず、成長とともに発達の遅れなどによって何らかの異常を疑い検査をして、はじめてわかることもあります。

出生前診断

新型出生前診断(NIPT)の仕組み

妊娠中に胎児の病気や障害について調べる検査を「出生前診断」といい、広義には妊婦健診で行うエコー検査も含まれます。

プラダーウィリー症候群を調べるために出生前診断を受けることはほとんどないと思いますが、ダウン症などを調べる「NIPT(新型出生前診断)」を受けた結果、思わず発覚することがあります。

NIPTを実施している施設では基本的にプラダーウィリー症候群は調べませんが、一部の「微小欠失症検査」を行っている検査施設では検査対象疾患となっています。

DNAサイエンスではプラダーウィリー症候群も検査対象疾患です。

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生まれた後の検査

生まれたときに弱々しい感じがする、動きが極端に少ない、哺乳不良などにより何らかの病気を疑い各種検査を行った結果、発覚することがあります。

そのほか、狭いおでこ、アーモンド様眼瞼裂、口角の下がった口などの特徴的顔貌や、色素が薄い、小さい手足、男児の場合は外性器低形成などの特徴的な症状によってプラダーウィリー症候群と分かることもあります。

出生前診断でプラダーウィリー症候群と分かったら?

出生前診断でダウン症などの染色体異常が発覚した場合、中絶を選択する人が多いことについて議論がつきませんが、プラダーウィリー症候群は基本的には命にかかわる重篤な症状があるわけではありません。

出生前診断では生まれた後の障害の程度までは分かりませんが、生まれる前にプラダーウィリー症候群が明らかになることで適切な分娩環境を整えたり、出生後に起こり得る問題について早期に計画を立てることが可能になります。

プラダーウィリー症候群では知的障害や性腺機能不全などが起こる可能性がありますが、それはプラダーウィリー症候群に限ったことではありませんし、誰しも生きていれば後天的に病気や障害を負うリスクと常に隣り合わせです。

しかし長期的なケアが必要になることで、将来に渡る不安は抱くことと思います。

染色体の疾患については、遺伝医学に関する専門家である「臨床遺伝専門医」や「遺伝カウンセラー」による遺伝カウンセリングを受けて、現状を正しく理解し取れる選択肢を知ったうえで自己決定することが大切です。

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DNAサイエンス

まとめ

堤防に腰掛ける若い夫婦、将来を話し合っているイメージ

プラダーウィリー症候群は食欲の異常増加、肥満、身長の低さ、筋力の低下、精神発達の遅れ、および性的発達の問題など、多様な症状を特徴とします。

プラダーウィリー症候群の治療と管理は、患者とその家族にとって生涯にわたる課題です。

治療計画は個々の患者のニーズに合わせてカスタマイズされ、多職種の専門家による包括的なアプローチが必要です。

また、家族のサポートと教育も非常に重要であり、患者が可能な限り自立し、充実した生活を送れるようにすることが目標です。

生まれる前の出生前診断でプラダーウィリー症候群だと分かった場合、どのような疾患か分からず不安になるでしょうが、早い段階で発覚したからこそできる対応もあります。


【参考文献】

厚生労働省「193 プラダー・ウィリ症候群」2024/2/28

GENE Reviews Japan「Prader-Willi症候群(プラダー・ウィリ症候群)」2024/2/28

日本小児内分泌学会「プラダーウイリ症候群コンセンサスガイドライン」2024/2/28


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