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アンジェルマン症候群の特徴と顔立ち(染色体異常)

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author:DNAサイエンス
アンジェルマン症候群の少女、顔立ち

アンジェルマン症候群とは指定難病の一つで、生涯にわたる継続的な治療やサポートが必要なことから、小児慢性特定疾病として認定されています。

症状は主に神経系に影響を及ぼし、発達の遅れ、発語の欠如、平衡感覚の問題、知的障害、けいれん発作を特徴とします。

このような問題にもかかわらず、アンジェルマン症候群の人はしばしば陽気で興奮しやすい態度を示し、頻繁に笑ったり微笑んだりします。

また、独特の特徴的な顔立ちがあることで知られています。

ここではアンジェルマン症候群について、どのような特徴があるのか?原因は?といった内容も含め基本的な情報をご紹介いたします。

アンジェルマン症候群の特徴

【アンジェルマン症候群の特徴と主な症状】

  • 容易に引き起こされる笑い
  • 重度の精神発達の遅れ
  • 特徴的顔ぼう
  • 失調性歩行(ぎこちない動き)
  • 運動障害
  • てんかん発作
  • 睡眠障害
  • 言語障害

神経症状と発達の遅れが主な症状です。

発達の遅れは生まれてすぐは気づかれず、10ヵ月健診で座ったりはいはいなどといった動作の遅れで発覚することが一般的です。

容易に引き起こされる笑い

アンジェルマン症候群の人は何でもないことでも容易に笑い、それは時として場にそぐわないこともあります。

この行動の背景には、脳の学習や記憶、情緒制御に関わっている領域の異常が関係していると考えられます。

つまり、彼らの笑いは必ずしも幸福感や娯楽と関係があるわけではありません。

重度の精神発達の遅れ

多くの場合は重い知的障害があり、言語発達の遅れや学習困難、社会的スキルの遅れなどにつながります。

行動異常として、多動と興奮しやすい性格を示します。

興奮したように手をばたつかせたり、注意を長時間維持することが困難だったりします。

また自閉症的行動や自傷行為も頻繁にみられます。

特徴的顔貌

アンジェルマン症候群の少女、顔立ち

染色体異常では疾患ごとに似たような特徴を持つ顔立ちが見られることがありますが、アンジェルマン症候群も以下の特徴的顔ぼうがあることで知られています。

【アンジェルマン症候群の特徴的顔貌】

  • あごが突き出ている
  • 大きな口
  • 歯と歯の隙間が広い
  • 舌が突き出ている
  • 小頭症
  • 低色素症

このような特徴は個人差があり、また年齢とともに顕著になることもあります。

「小頭症」とは頭が異常に小さい状態のことで、多くは脳の発達が不完全で小さいために起こります。

「低色素症」の症状としては金髪、虹彩の色が薄い、肌が白いなどがあります。

失調性歩行

歩行訓練をするアンジェルマン症候群の少女

発達の遅れがあり、生後6-12ヶ月で支えがないと座れない、ハイハイが遅れるなどの特徴を示すことがあります。

このような発達の遅れは時間が経つにつれて、特に同級生と比較してより明らかになります。

ゆっくり運動機能は発達しますが、運動能力や平衡感覚に大きな影響があります。

「失調性歩行」は歩行時の協調性が損なわれることによって生じる特徴的な歩き方で、歩くときに足を広げてバランスを取ろうとすることが多く、不安定なぎくしゃくした歩き方になります。

歩くときに歩幅が不規則でふらついたり、一歩ごとの歩幅が変化することがあります。

これらの症状は脳の、特に身体の平衡感覚と運動の調整を司る小脳が適切に機能していない場合によく見られます。

てんかん発作

てんかん発作は脳内の神経細胞が異常に活性化し、一時的に制御不能な電気的放電を起こすことにより発生します。

この異常な電気活動が脳の特定の部位または全体に広がることで、手足のふるえ、体の硬直やけいれん、意識の消失など、人によってさまざまな症状が起こります。

睡眠障害

睡眠障害はアンジェルマン症候群の人によく見られる症状で、入眠困難、夜間の頻繁な覚醒、早朝の覚醒などの症状が現れます。

睡眠障害は日中の活動に影響を及ぼす可能性があり、注意力の低下、学習困難、情緒不安定などさまざまな問題を引き起こす原因となり得ます。

また、家族の睡眠も乱れることがあり、家庭内のストレスが高まる要因となることもあります。

言語障害

ほとんどのアンジェルマン症候群の人は全く話せないか、言語を使用できる場合でも単語の数が非常に限られているため、単語を組み合わせて意思疎通を図ることが困難です。

そのためコミュニケーションはジェスチャーや手話、絵などの視覚支援ツールを用います。

なぜ起こる?原因とは

アンジェルマン症候群の染色体

アンジェルマン症候群は染色体異常によって起こる、先天性の病気です。

ヒトの染色体は23対(46本)あり、そのうち22対の常染色体は長いものから順番に1~22番の番号が割り振られています。

染色体は父親由来のものと母親由来のものがペアとなります。

アンジェルマン症候群は、そのうち母親由来の15番染色体に存在する「UBE3A」遺伝子が正常に機能していないことで引き起こされます。

遺伝子は基本的に父親由来でも母親由来でも同じようにはたらきますが、中にはどちらかの親由来の遺伝情報しか機能しないものがあることがわかっており、「UBE3A」遺伝子が当てはまります。

つまり、この種の遺伝子は片方の遺伝情報のみが活性化し、もう片方の遺伝情報は不活性ではたらかないことを意味します。

UBE3A遺伝子は正常な脳の発達と機能に不可欠であり、アンジェルマン症候群はこの遺伝子が存在しないか、正常に機能していない場合に発症します。

アンジェルマン症候群が起こるメカニズムは以下のようにいくつかあります。

【母親由来染色体の欠失:約70%】

母親由来のUBE3A遺伝子を含む15番染色体の一部が欠失しているケース。

【UBE3A遺伝子の変異:10%】

母親由来の15番染色体にあるUBE3A遺伝子の突然変異により正常に機能しないために起こるケース。

【片親性ダイソミー:約5%】

父親から2本の15番染色体を受け継いでおり、母親からは受け継がれていないケース。

父方のUBE3A遺伝子は機能しないために起こります。

【刷り込み変異:約5%】

15番染色体の特定領域の遺伝子が適切に「インプリンティング」(特定の遺伝子が父親または母親から受け継がれた際にのみ活性化する現象:この場合は母親由来)されていないため、これらの遺伝子が不活性で正しく機能しないケース。

母方のUBE3A遺伝子が存在しても、インプリンティングプロセスの欠陥により不活性化されます。

【原因不明:約10%】

アンジェルマン症候群の約10%は原因が分かっていません。

遺伝子の検査ではアンジェルマン症候群だと特定できませんが、臨床症状としてはこれに当てはまります。

なお、同じく15番染色体の特定領域の異常によって起こる染色体異常に「プラダーウィリー症候群」があり、こちらは父親由来の染色体が原因となります。

遺伝するのか?

染色体に異常が起こるイメージ画

染色体異常と聞くと親から子へ遺伝するように感じる方が多いようですが、その多くは遺伝ではなく突然変異で起こります。

アンジェルマン症候群もその多くは遺伝ではなく偶然に起こります。

遺伝する可能性がある例としては、「UBE3A遺伝子の変異」のケースのうち約30%は母親が保因者(症状はないが変異した遺伝子を持っている)で、「刷り込み変異」のケースの一部でも母親が保因者である可能性があります。

治療方法

治療の一環で開発ゲームで遊ぶアンジェルマン症候群の少女

アンジェルマン症候群の治療は症状を管理し、患者の生活の質を向上させることを目的としています。

根本的な治療法は存在せず、症状に応じて多職種の専門家による総合的なアプローチを行っていきます。

発作の管理のための薬物療法、コミュニケーション能力を向上させるための言語療法、身体的な協調性と運動能力を高めるための理学療法や作業療法などを組み合わせて、継続的なケアとサポートを行っていきます。

言語能力が限られているため、アンジェルマン症候群の人は自分のニーズ、願望、感情を表現することが難しいと感じることがあります。

これは本人にとっても家族など介護者にとってもフラストレーションにつながりますが、手話、絵カード、デジタルコミュニケーション補助具などの代替コミュニケーション手段を身につけることによって軽減を図ることができます。

平均寿命

アンジェルマン症候群は生命の維持に関わるような臓器の奇形などがあるわけではありませんので、平均寿命は一般と同じです。

ただしけいれん発作や摂食障害、嚥下障害、運動障害などがありますので、適切に管理されていない場合、重大な合併症や事故などを引き起こす可能性があります。

特に誤嚥性肺炎や、平衡感覚の問題による転倒や怪我などに注意が必要です。

アンジェルマン症候群の子が生まれる確率

アンジェルマン症候群の出生頻度は約15,000人に1人の割合であると推定されています。

いつ分かる?検査方法

アンジェルマン症候群の診断は染色体検査によって行われ、この検査は生まれる前と生まれた後のどちらでも可能です。

染色体異常は生まれつきのものなので後天的になることはありませんが、多くの場合は生後直後にはアンジェルマン症候群だと気づかず、成長とともに発達の遅れなどによって何らかの異常を疑い検査をして、はじめてわかります。

出生前診断

妊娠中に胎児の病気や障害について調べる検査を「出生前診断」といい、広義には妊婦健診で行うエコー検査も含まれます。

アンジェルマン症候群を調べるために出生前診断を受けることはほとんどないと思いますが、ダウン症などを調べる「NIPT(新型出生前診断)」を受けた結果、思わず発覚することがあります。

NIPTを実施している施設では基本的にアンジェルマン症候群は調べませんが、一部の「微小欠失症検査」を行っている検査施設では検査対象疾患となっています。

DNAサイエンスではアンジェルマン症候群も検査対象疾患です。

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生まれた後の検査

アンジェルマン症候群は臓器の奇形など身体的特徴がないため生後すぐは気づかれず、座ったりハイハイをはじめるといった運動機能の遅れや言葉の遅れなどにより何らかの病気を疑い各種検査を行った結果、発覚することがあります。

そのほか、あごが突き出ている、大きな口、歯と歯の隙間が広いといった特徴的顔貌や、色素が薄い、不適切な笑いなどの特徴的な症状によってアンジェルマン症候群と分かることもあります。

出生前診断でアンジェルマン症候群と分かったら?

出生前診断でダウン症などの染色体異常が発覚した場合、中絶を選択する人が多いことについて議論がつきませんが、アンジェルマン症候群は命にかかわる重篤な症状があるわけではありません。

出生前診断では生まれた後の障害の程度までは分かりませんが、生まれる前にアンジェルマン症候群が明らかになることで適切な分娩環境を整えたり、出生後に起こり得る問題について早期に計画を立てることが可能になります。

アンジェルマン症候群では知的障害や言語障害などが起こる可能性がありますが、それはアンジェルマン症候群に限ったことではありませんし、誰しも生きていれば後天的に病気や障害を負うリスクと常に隣り合わせです。

しかし長期的なケアが必要になることで、将来に渡る不安は抱くことと思います。

染色体の疾患については、遺伝医学に関する専門家である「臨床遺伝専門医」や「遺伝カウンセラー」による遺伝カウンセリングを受けて、現状を正しく理解し取れる選択肢を知ったうえで自己決定することが大切です。

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まとめ

リハビリ訓練中のアンジェルマン症候群の少女

アンジェルマン症候群は知的障害、発達の遅れ、言語障害、けいれん発作などの神経系の症状を主とした症候群であり、その治療と管理はご家族と患者本人にとって生涯にわたる課題です。

治療計画は個々の患者のニーズに合わせてカスタマイズされ、多職種の専門家による包括的なアプローチが必要です。

生まれる前の出生前診断でアンジェルマン症候群だと分かった場合、どのような疾患か分からず不安になるでしょうが、早い段階で発覚したからこそできる対応もあります。


【参考文献】

アンジェルマン症候群(指定難病201)-難病情報センター

アンジェルマン(Angelman)症候群-小児慢性特定疾病情報センター


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