早産の時期は幅広く、ママのお腹の中でどのくらいの期間を過ごせたかによってその生存率や、生まれた赤ちゃんが直面する可能性のある健康問題は大きく異なります。
ここでは早産での胎児の生存率と、早産児として生まれた赤ちゃんに起こり得る健康問題について、在胎週数別にわかりやすくまとめています。
早産とは
正期産より早い時期の出産を「早産」といい、具体的には妊娠22週-37週未満での出産のことをいいます。
一言で早産と言ってもその時期の幅は広く、妊娠22週と妊娠36週では4か月近くも在胎週数に開きがあり、それだけ胎児の成長にも差が出ます。
妊娠22週は妊娠6ヶ月にあたり、胎児の肺以外の重要な器官はほぼ完成して見た目も新生児に近い状態まで成長していますが、自力で生きていくにはまだ未熟なため長期に渡る治療が必要となったり、重篤な障害が残る可能性が高くなります。
妊娠36週は妊娠10か月にあたり正期産を目前に控えている時期で、胎児の体の機能はほぼ出来上がっているため出生後の影響は少なくなります。
妊娠22週より前の出産は、胎児は未熟すぎて生きていくことができないため「流産」と呼ばれます。
早産になる確率
日本での早産率は約5%程度です。
2011年の12,808人の出生記録を調べた調査によると、早産率は4.6%でした。1)
世界でみてみると、2014年の世界の推定早産率は10.6%で、北アフリカは13.4%、ヨーロッパは8.7%という結果2)で、地域差があることがわかります。
日本の早産率は世界的にみても少ないことが分かりますね。
早産で生まれた赤ちゃんの生存率
早産で産まれた赤ちゃんは、在胎週数が短くなるほど生存率や健康状態への影響が大きくなります。
【早産で産まれた赤ちゃんの生存率】3)
ママのおなかの中にいる期間が短く妊娠22-23週で産まれた赤ちゃんの生存率は66.1%と決して高くはないものの、生きられる可能性があります。
妊娠26週を過ぎると生存率は90%以上となり、妊娠28週を超えると生存率は96.7%まで向上します。
早産で生まれた赤ちゃんの健康問題
在胎週数が短いということはそれだけ成長できる期間が限られるため、ほとんどの場合は低出生体重児*で産まれてきます。
早産の中でも特に出生時の体重が1,500g未満の赤ちゃんを極低出生体重児といい、体の各機関が未熟であるため、多くの健康上の問題を抱える頻度が高くなります。
【早産で産まれた赤ちゃんのリスク】
- 脳性麻痺 / 運動障害
- 発達障害 / 知的障害
- 行動異常
- 視力障害
- 聴覚障害
- 呼吸障害
- 心不全
- 腸閉塞
- 敗血症
- 感染症にかかりやすい
早く生まれれば生まれるほど上記のような障害が起こる割合は増加し、症状も重くなる傾向にあります。
運動機能や精神発達の遅れ、視力や聴覚の異常、心不全や腸閉塞など臓器系の問題等、全身の多部位へ影響が及ぶ可能性があります。
視力障害としては弱視や斜視をはじめとして、片眼もしくは両眼の失明を含み、在胎週数25週未満の早産児と相関があります。
全体としては障害が残る割合は在胎週数28週未満で多くなり、24週未満で加速します。
*【出生体重からの分類】
2,500g – 4,000g未満 | ◎正出生体重児 |
2,500g未満 | 低出生体重児 |
1,500g未満 | 極低出生体重児 |
1,000g未満 | 超低出生体重児 |
脳性麻痺
脳性麻痺とは出産前後の脳の損傷が原因で起こる運動機能障害のことを指します。
はいはいや歩く、立つといった運動機能の発達に遅れが出たり、場合によっては歩行困難や手足の不自由などの後遺症が出ます。
在胎週数が短いほど脳性麻痺が起こる頻度は高くなり、3歳時点での脳性麻痺の発症率は以下の通りです。
【早産での脳性麻痺(3歳)発症率】3)
在胎週数22週での出産では22.4%に脳性麻痺が発症しており、28週を過ぎると10%を下回ります。
発達障害
子どもの発達の程度は「発達指数」によって数値化されており、同年齢と同程度なら100となります。
【早産での発達遅延(3歳)発症率】3)
発達遅延が起こる頻度とその程度は在胎週数が短くなるにつれて多く強くなり、特に発達指数70以下の割合は在胎週数27週以下で増加傾向が加速します。
行動異常
3歳時点で多動やADHD、自閉症などの行動障害の疑いが持たれる割合は、在胎週数が短くなるほど増えます。
24週以下で生まれた子どもの約34%に、24週から27週で生まれた子どもの約16%にこれらの疑いが見られます。3)
早産の兆候
早産の兆候としてはお腹の張りや痛み、それらを伴う性器出血があります。
【早産の兆候】
- 下腹部の痛み
- お腹の張り
- 性器出血
下腹部の痛みや張り
お腹の張りや痛みは胎児が成長して子宮が大きくなるにつれて感じやすく、ほとんどの妊婦さんが経験します。
長時間歩いた後や体を動かした後、体が冷えたときにお腹の張りを感じることはよくあることで、しばらく座って休憩したり横になって安静にしていて治まるなら、特に心配する必要はありません。
しかししばらく安静にしていてもお腹の痛みが周期的に起こる、痛みが強くなる、張りが持続するといった症状がある場合はかかりつけの病院へ連絡しましょう。
性器出血
妊娠中はさまざまな理由で性器出血が起こる可能性があり、前置胎盤などのトラブルによるもの、妊婦健診の内診での刺激によるものなどがあります。
妊娠37週を過ぎていればお産のサインの一つである「おしるし」かもしれませんが、それ以前の場合は早産の兆候の可能性もあります。
出血の量や色での判断は難しいため、性器出血とともに強いお腹の痛みや張りがある場合は医師の指示を仰いでください。
早産になる原因
早産は以下のように多くの因子によって引き起こされることがあります。
【早産の原因】
- 感染症
- 子宮や胎盤の異常
- 妊娠合併症
- 多胎妊娠
- 生活習慣の乱れ
早産の原因として多いのは子宮内感染で、そのほかに前置胎盤や常位胎盤早期剥離などの胎盤のトラブル、子宮頸管無力症などの子宮のトラブル、多胎妊娠であること、ムリなダイエットによる痩せすぎや喫煙による影響などがあります。
これらの要因は、個々にまたは組み合わさって早産を引き起こす可能性があります。
妊婦健診によって原因となるトラブルを早期発見し、適切な医療ケアを受けることが早産の予防にもつながります。
まとめ
早産での生存率は在胎週数に大きく左右され、妊娠22-23週で生まれた赤ちゃんの生存率は66.1%に対して妊娠28週を超えると96.7%まで向上します。
生まれた赤ちゃんに障害が残る割合は妊娠28週未満での早産で多くなり、特に24週未満で多くみられます。
早産の一歩手前の状態である切迫早産についてはこちらのコラムもご参考にしてください。
【参考文献】
3)新生児臨床研究ネットワーク・データベース (極低出生体重児)から得られたエビデンス (2003-2012)(2021改訂版)