ムカムカや吐き気といった妊娠初期症状を感じて妊娠検査薬で調べたら陽性だったのに、その後の病院の検査で子宮外妊娠だといわれることがあります。
妊娠の反応はありましたが、残念ながら妊娠を継続することはできません。
症状で子宮外妊娠と正常な妊娠を判断することはできるのでしょうか?
ここでは子宮外妊娠の症状や原因などについてご紹介しています。
子宮外妊娠(異所性妊娠)とは
子宮外妊娠(異所性妊娠)とは、受精卵が育つことができない場所に着床することをいいます。
精子と卵子が出会って受精すると、受精卵となります。
受精卵は約1週間をかけて卵管から子宮へと移動し、子宮内膜へと着床(ちゃくしょう)します。
着床する場所は子宮の中のどこでもいいわけではなく、子宮内膜の厚みがしっかりした場所に落ち着く必要があります。
子宮以外の卵管や卵巣、腹腔などに着床してしまうことを「子宮外妊娠」と言い、子宮内でも正しくない位置に着床してしまうことを「異所性妊娠」と言うため、子宮外妊娠は異所性妊娠に含まれます。
ここでは、耳馴染みのある「子宮外妊娠」に統一して進めます。
妊娠検査薬で妊娠反応があるのにもかかわらず、妊娠6週以降のエコー検査で胎のう(たいのう)が確認できなければ子宮外妊娠が疑われます。
いつわかる?
子宮外妊娠に特有の自覚症状というものはないため、多くは妊娠検査薬で妊娠が発覚し、医療機関を受診した際に判明します。
妊娠検査薬が反応するのは次の生理開始予定日の1週間後くらいからで、性行為からは3週間後くらいです。
受精卵が着床すると胎盤のもととなる絨毛が作られ、胎盤の成長を促進させるhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)というホルモンが分泌され始めます。
妊娠検査薬は着床後3~4日後くらいから尿中に出始めるhCGの濃度を測定することで妊娠の可能性を判定しています。
そのため、妊娠検査薬で陽性反応があれば妊娠している可能性は極めて高いと言えますが、子宮外妊娠や流産直後、胞状奇胎(ほうじょうきたい)など妊娠の継続ができない場合でも陽性になるケースがあります。
陽性反応だけでは本当に妊娠しているのか?正常妊娠なのか?を判断することはできませんので、反応があったら次の生理予定日の1~2週間後を目安として早めに医療機関を受診してくださいね。
そのほか妊娠とは気づかず不正出血や激しい痛みで受診した際に子宮外妊娠と判明することもあります。
症状
【妊娠初期に起こること】
性器出血や下腹部痛が起こることもありますが、まったく自覚症状がないこともあります。
症状の起こり方や程度は妊娠週数によって異なります。
妊娠7週頃になっても医療機関を受診しておらず子宮外妊娠に気づかなかった場合、育ち始めた胎芽(胎児)によって卵管などの臓器が破裂し大量出血してママの命にかかわることもあります。
子宮外妊娠でしか起こらない症状というものはないため、症状によって正常な妊娠なのか子宮外妊娠かを見分けることは出来ません。
エコー検査などで調べてみないと分かりませんので、妊娠週数が進む前にきちんと受診をして早期発見をすることが大切です。
妊娠初期の出血
妊娠初期に起こる出血の原因として考えられるものは、子宮外妊娠以外にもいくつか考えられます。
【妊娠初期におこる出血の原因として考えられるもの】
- 着床出血
- 子宮腟部びらん
- 子宮頸管ポリープ
- 内診などの刺激による出血
- 切迫流産・流産
- 絨毛膜下血腫
- 胞状奇胎(異常妊娠の一つ)
- 子宮頸がん
着床出血というのは受精卵が子宮内膜に着床するときに子宮内膜が傷つくことでおこる出血のことをいい、次の生理予定日前後に起こる可能性があります。
タイミングが同じなため生理がきたと勘違いすることもあります。
これらの出血はあまり心配のないものと処置が必要なものとありますが、生理の痛みにしても個人差があるため判断は難しいところです。
出血量が多い場合や出血が続く場合、いつもと違うような痛みを伴う場合は速やかに受診してください。
産むことはできるのか?
子宮外妊娠という響きから「妊娠には違いないんでしょ?」と思われるかもしれませんが、残念ながら産むことはできません。
通常は妊娠すると赤ちゃんが育つための部屋となる胎嚢(たいのう)が作られますが、子宮以外の場所ではそれが作られず、胎盤も出来ないためママから栄養や酸素をもらうことができません。
狭い卵管などで着床してしまった場合は育つためのスペースもありませんので、そのまま妊娠週数が進むと破裂しママの生命にまで危険が及んでしまいます。
原因
原因として考えられるものはいくつかあります。
【子宮外妊娠の原因として考えられるもの】
- 卵管の炎症や癒着
- 受精卵の移送障害
- 過去に受けた手術の影響
- 子宮内避妊具(IUD)
- 不妊治療で体外受精を行なった
精子と卵子は卵管で出会って受精卵となり、その後子宮へと移動し着床することで妊娠が成立しますが、卵管の炎症や癒着があったり機能の問題で受精卵がうまく移動できないと子宮外妊娠となることがあります。
子宮へと移動する途中で卵管で着床してしまうことが多く、子宮外妊娠の実に98%以上は卵管で起こっています。
卵管の炎症や癒着がおこる原因としては、感染症や過去に受けた手術の影響などがあります。
炎症や癒着などによって卵管の動きが悪くなっていると、受精卵がうまく子宮へと移動できず卵管へ着床してしまう原因となります。
帝王切開や卵巣手術によってできた傷跡に受精卵が着床してしまうこともあります。
子宮内避妊具とは子宮の中に装着して精子の侵入や受精卵の着床を防ぐことで避妊効果を発揮する器具のことですが、まれに妊娠することがありその場合は子宮外妊娠となる可能性があります。
そのほか体外受精を行なった際の胚移植が原因となることもあります。
しかし子宮外妊娠のすべての原因が分かるわけではなく、不明なケースもあります。
子宮外妊娠を起こしやすい人の特徴
子宮外妊娠を起こしやすい人の特徴としては以下のものが考えられます。
【子宮外妊娠を起こしやすい人の特徴】
- 性感染症にかかっている
- 帝王切開の経験
- 子宮や卵管などの手術を受けたことがある
- 子宮外妊娠の経験
- 子宮内避妊具(IUD)を使用している
- 不妊治療で体外受精・胚移植を行なった
- 喫煙者
上記のような特徴がある人すべてが子宮外妊娠を起こすわけではありませんが、その状態によっては可能性が高くなります。
性感染症
卵管が炎症を起こす原因となるクラミジアや淋菌などの性感染症に感染していると卵管が狭くなったり、受精卵を卵管から子宮へ運ぶ機能がうまくはたらかず卵管に着床してしまう原因となります。
腹部の手術を受けたことがある
帝王切開や卵管・卵巣の開腹手術を受けたことがある人は、手術痕に受精卵が着床してしまったり、炎症や癒着によって子宮外妊娠となる可能性があります。
子宮外妊娠の経験
過去に子宮外妊娠を経験していると、約10%の人が次の妊娠も子宮外妊娠になるとされています。
体外受精
体外受精とは体外で卵子と精子を受精させ育てたものを子宮へ戻す方法のことで、体外受精で妊娠した人の約20人に1人が子宮外妊娠を起こしていると考えられています。
喫煙者
タバコを吸っていると卵管の動きが悪くなり、子宮外妊娠を引き起こす確率が高くなることが指摘されています。
確率
子宮外妊娠が起こる確率はすべての妊娠の約1%で、およそ100人に1人の割合だといわれています。
その90%以上は卵管で起こっており、その他にも卵巣や腹腔、子宮内であっても子宮頸管や子宮筋層に着床すると正常に育つことができません。
検査方法
子宮外妊娠の検査は尿検査、超音波検査、血液検査などによって行なわれ、妊娠検査薬では陽性だったけれども胎のうが確認できないとき、不正出血や下腹部の激しい痛みで受診した際にその疑いが持たれます。
正常な妊娠では、妊娠5週ごろに超音波検査によって赤ちゃんを包み込む胎嚢(たいのう)が確認できるようになり、胎嚢と心拍が確認できると妊娠確定です。
妊娠6週を超えての超音波検査でも胎嚢が確認できない場合は子宮外妊娠もしくは流産を疑い、血液検査や尿検査によって、妊娠すると分泌されるホルモンを測定します。
妊娠検査薬が陽性で受診した際に胎嚢が確認できなくてもそのすべてが子宮外妊娠や流産とは限りません。
胎嚢が確認できるようになるのは妊娠5週ごろですが、受診が早すぎたり、生理周期の乱れや妊娠週数の数え間違いなどによって計算がズレている可能性もあるからです。
治療方法
治療方法については、残念ながら赤ちゃんを助けることはできませんが、放置するとママの命にも危険が及ぶため、早期発見と早期治療が大切です。
治療方法は妊娠週数と着床部位によって異なります。
大きくは手術による切除と薬物療法がありますが、明らかに育っていない場合は自然排出を期待してそのまま様子を見るケースもあります。
妊娠週数が進んでおり破裂の恐れがある場合は急いで手術を行なう必要があります。
本人の希望も加味されますが、最終的には胎児の大きさや状態、病院の方針などによって治療方法が選択されます。
手術
手術にはお腹をメスで切開する「開腹手術」と、お腹に開けた小さな孔から内視鏡で手術を行なう「腹腔鏡手術」があります。
一般的には内視鏡で子宮や卵管の一部だけを切除してその部分を修復する手術が行なわれますが、状態によっては開腹手術ですべてを切除しなければならないこともあります。
薬物療法
妊娠のごく初期の場合、メトトレキサートという抗がん剤を使用して受精卵の細胞分裂を止めて組織が縮小、消失するのを待つ方法もあります。
手術による負担を減らすことができる一方で、薬物の効果が出なければ手術に切り替えなければならない可能性があります。
次の妊娠への影響
一度子宮外妊娠を経験していると、次の妊娠も子宮外妊娠になる確率は約10%程度だといわれています。
手術で卵管を切除していても卵管は二つありますので妊娠は可能です。
以前の子宮外妊娠の原因が卵管の炎症などだった場合は、両方とも炎症している可能性がありますので、一度検査を受けるのが良いでしょう。
まとめ
子宮外妊娠では残念ながら赤ちゃんを産むことはできません。
感染症を防ぐなどの対策はできますが、すべての原因が分かっているわけではないため予防することも困難です。
妊娠検査薬で妊娠反応があったとしても正常な妊娠か子宮外妊娠かは医師でも検査してみないとわかりませんので、大切なのは適切な時期に受診をして早く発見することです。