妊娠は多くの女性にとって大きな喜びですが、それに伴う不安も少なくありません。
特に妊娠初期の女性においては「切迫流産」という言葉を耳にしたとき、その不安はさらに増すことでしょう。
けっして安心はできませんが切迫流産のすべてが流産につながるわけではなく、その程度もさまざまです。
ここでは、切迫流産の症状や原因、防ぐためにできることなどについて分かりやすくご紹介しています。
切迫流産とは?
切迫流産とは「流産がせまっている」状態、つまり流産してはいないが流産の一歩手前の状態のことをいいます。
妊娠22週未満で胎児が亡くなることを「流産」といい、流産の兆候である1)性器出血、2)下腹部痛 があると、通常より流産のリスクが高い状態として「切迫流産」と診断されることがあります。
流産に至るリスクはありますがその程度はさまざまで、特に治療はせず経過観察のみというケースがあれば、すぐに入院が必要な危険な状態まで幅広くあります。
「流産」とついていますがまだ「流産予備軍」のような状態で、切迫流産と診断されても多くの赤ちゃんは無事に産まれることができます。
切迫流産で助かる確率
切迫流産と診断されても、85-90%程度は無事出産に至っています。
ある研究によると、切迫流産の流産率は14.3%でした。1)
流産の8割以上は妊娠12週未満の妊娠初期に起こっており、その原因の多くは赤ちゃんに遺伝子や染色体の異常などがあり育つことができないためです。
そのため、妊娠12週未満での切迫流産は流産に至る可能性が相対的に高く、防ぐことも難しいとされています。
切迫流産の症状
切迫流産の症状は性器出血と、下腹部痛やお腹の張りです。
性器出血
妊娠初期の不正出血(性器出血)はすべてが流産につながるわけではなく、子宮膣部びらんなどあまり心配のない出血から、絨毛膜下血腫などトラブルによる出血まで幅広くあります。
妊娠中は子宮内の血液循環量が増えるため、ちょっとした刺激でも出血しやすい状態になっています。
正常な妊娠でも少量の性器出血はよくあることですが、出血が止まらない、出血量が多い、鮮やかな色の血が出る、強いお腹の痛みを伴うなどの場合はすぐに受診してください。
下腹部痛
下腹部の張りや痛みは安静にすることでおさまることもあります。
しばらく横になっても痛みが続く場合や、強い痛みがある場合はすぐに医師にご相談ください。
切迫流産の原因
切迫流産、つまり性器出血や下腹部痛などが起こる原因はいくつか考えられます。
【切迫流産の原因として考えられるもの】
- 流産の予兆なら胎児の異常
- 絨毛膜下血腫
- 子宮の異常
- 感染症
妊娠12週未満に起こる流産の多くは胎児に異常があり、これ以上成長できず自然淘汰の結果起こります。
染色体異常は自然に発生することが多く、母親の健康状態や行動とは関連がない場合がほとんどです。
絨毛膜下血腫とは胎嚢(たいのう)の周りに血液が溜まった状態で、血腫が大きいと突然大量出血する危険性があります。
母親の子宮に異常がある場合(例えば子宮筋腫や子宮形成異常など)、それが妊娠の継続に影響を与え、切迫流産を引き起こすことがあります。
そのほかクラミジアや淋菌など子宮内感染が起こると切迫流産や流産のリスクが高くなります。
切迫流産と診断されたら?
切迫流産と診断されても、赤ちゃんの心拍が確認できて(生きている)、子宮頸管が開いていなければ(出てきそうな状態ではない)、少量の性器出血やお腹の痛みがあったとしても妊娠継続ができる可能性があります。
治療法
切迫流産の治療の基本は「安静にすること」です。
安静の度合いは日常生活の軽度の制限から、入院による厳格な管理まで個々の状況によって異なりますので医師の指示に従ってください。
妊娠12週までの切迫流産に対して、流産を予防する有効な治療薬はないとされています。
一方で妊娠12週以降に出血が多くおなかの痛みが強い時は子宮が収縮していると考えられますので、子宮収縮抑制剤などを用いることもあります。
切迫流産を防ぐためには?
妊娠12週未満の流産の多くは胎児の染色体異常や遺伝子の異常によるもので、これは多くの場合偶然に起こります。
もし流産が起こったとしても、ご自身を責めないでください。
切迫流産の完全な予防は難しいですが、妊婦の健康を保ち、リスクを抑えるためにはいくつか有効な対策があります。
まずは定期的に妊婦健診を受けることが重要です。
これによって早期に問題を発見し、適切な介入を行うことができます。
そのほか原因となる感染症予防に努めることや、禁煙禁酒を守ることでリスクを減らすことができます。
まとめ
切迫流産は妊娠初期に多くみられる症状で、切迫流産と診断されても85-90%程度は無事に出産に至っています。
主な症状としては性器出血や下腹部の痛みがありますが、これらが必ずしも流産につながるわけではありません。
感染症対策や禁酒禁煙などの基本的なことを守りつつ、過度に心配せずストレスを抱えないようお過ごしくださいね。
妊娠初期に気をつけるポイントについては以下のコラムもご参考にしてください。
【参考文献】