妊娠初期に気をつけることはたくさんありますが、具体的にどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか?
赤ちゃんを授かった喜びと同時に、妊娠について心配事も多くて不安な気持ちになる方も多いのではないかと思います。
そこで、今回は妊娠初期に気をつけるべき11のポイントをご紹介します。
食べ物や飲み物、薬やサプリメントについてなど、みんなが気になる情報が盛りだくさん。
妊娠中の不安を減らし、健やかな赤ちゃんを迎えるために、ぜひご一読ください。
積極的に摂りたい栄養素
妊娠初期にはお腹の赤ちゃんはまだ小さいので多くのエネルギーは必要としませんが、一方で栄養バランスの取れた食事が非常に重要です。
特に、妊娠初期というのは胎児の器官形成が進む時期であり、適切な栄養素を摂取することが必要です。
その中でも、特に重要なのが「葉酸」「鉄分」「カルシウム」の3つの栄養素です。
葉酸
葉酸を妊娠初期に積極的に摂りましょうというのは聞いたことがあるかもしれませんね。
これは妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まるためです。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、妊娠初期に十分な葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害の発症リスクを最大70%減らすことができるとされています。
神経管閉鎖障害は胎児の神経管の形成が不完全で起こる奇形の一つであり、中枢神経系に障害が生じるため、脳や脊髄の形成に異常が起こります。
症状としては、脊椎や頭蓋骨の奇形、知的障害、発育遅延、麻痺、脳瘤などがあります。
葉酸は、ほうれん草、ブロッコリー、レンズ豆、オレンジなどの食材に豊富に含まれています。
食事だけでの摂取はなかなか難しいため、葉酸サプリメントも上手く活用できるとよいでしょう。
厚生労働省では、妊娠初期には1日あたり400μgの葉酸の摂取を推奨しています。
妊娠初期には葉酸を積極的に摂取し、胎児の健康な発育をサポートしましょう。
鉄分
妊娠すると赤ちゃんの成長のために鉄の需要が高まることと、胎盤や母体の血液量が増えるため相対的に鉄分の需要も増加することで、貧血になりやすくなります。
日本人女性はもともと貧血気味の方が多いですが、妊娠すると鉄の需要が増加するため妊娠前より多くの鉄を摂る必要があります。
鉄が不足すると、低出生体重児で生まれる頻度が高くなるほか、重度の貧血の場合は胎児死亡につながる可能性もあります。
鉄分が豊富な食材として、牛肉や鶏肉、レバー、豆類、ホウレンソウ、ひじきなどがあります。
また、鉄分と一緒にビタミンCを摂取することで吸収率が高くなるため、オレンジやトマトなどの果物や野菜も一緒に摂取することがおすすめです。
カルシウム
赤ちゃんの骨や歯などを作るのに必要なカルシウムは、母体から供給されます。
ママのカルシウムが不足していると母体中の骨などからカルシウムを補おうとするため、骨密度の低下につながります。
厚生労働省の指針によると、妊娠前より多く摂ることが推奨されているわけではありませんが、日本人女性のカルシウム摂取量はもともと不足しているため、妊娠中は意識してしっかり摂ることが大切です。
カルシウムは乳製品や小魚、豆腐、アーモンドなどに多く含まれています。
バラエティ豊かな食材を摂取することで妊娠初期からカルシウムを適切に摂取し、母体の骨密度維持や胎児の健やかな発達をサポートしましょう。
注意するべき食品
妊娠初期には、注意すべき食品があります。
特に、生ものやアルコール、カフェインなどは、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、摂取量には注意が必要です。
生もの
妊娠中は免疫力が低下し感染症にかかりやすくなるため、妊娠前は普通に食べていた食材でも注意する必要があります。
国立成育医療研究センターによると、妊婦は、生肉、生魚、生卵などを避け、必ず加熱処理をすることが推奨されています。
お刺身やお寿司などの生魚にはアニサキスという寄生虫がいる可能性があり、激しい痛みや嘔吐などの食中毒をひき起こします。
生肉や生ハムなどはトキソプラズマという寄生虫がいる可能性があり、赤ちゃんにも感染する恐れがあります。
非加熱のチーズはリステリア菌に感染する恐れがあり、中枢神経系症状などを引き起こす場合もあります。
このような感染症にかかると、流産や早産、胎児への感染などのリスクが高まるため、妊娠中は生の魚介類や肉、生卵などは避け、加熱調理されたものを選ぶようにしましょう。
アルコール
妊婦さんがアルコールNGなのは周知の事実ですが、これは妊娠中の飲酒によって胎児の発達に悪影響を与える可能性があるためです。
アルコール性胎児障害(FASD)は、妊娠中のアルコール摂取が原因とされる障害の一つで、知的障害や発達障害が引き起こされることがあります。
また、流産や早産になるリスクも高くなります。
妊娠がわかったら、すぐにアルコールの摂取を控えるようにしましょう。
カフェイン
カフェインは1日にコーヒー1~2杯程度なら問題ないとされています。
ですが、過剰に摂り過ぎると胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があり、妊娠中に1日200mg以上のカフェインを摂取すると胎児の成長が阻害されたり、流産や早産などのリスクが高まるとされています。
コーヒー1杯あたりに含まれるカフェインの量は70~100mg程度ですので、飲みたい場合は適切な範囲内に抑えましょう。
病気や感染症
免疫力が低下している妊娠中は、食べ物からの感染症のほか季節性の風邪やインフルエンザなどの症状にも注意する必要があります。
妊娠前より重症化しやすく、またお腹の赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があるため、予防が大切です。
症状が続くようなら、早めに受診して適切な治療を受けてくださいね。
妊婦さんでも飲める薬を処方してもらえます。
風邪
ただでさえつわりがある妊娠初期に風邪なんて引きたくないですね。
ウイルスへの抵抗力が弱まっている妊娠中は風邪を引きやすく、また薬を飲みたくないからといって我慢していると熱や咳、鼻水などの症状が長引く可能性があります。
引いてしまったらただの風邪と我慢せず、病院で薬を処方してもらいましょう。
インフルエンザ
妊娠中にインフルエンザに感染してもお腹の赤ちゃんに影響はないとされていますが、重症化しやすいため予防が大切です。
うがいや手洗いの徹底はもちろん、人混みなど感染リスクの高い場所は避けましょう。
妊娠前に予防接種を受けられると良いですが、妊娠中でも受けられます。
また、インフルエンザに感染してしまったとしても妊婦さんでも使える薬がありますので、安心して病院で治療を受けてください。
風疹
風疹は飛沫感染し、妊娠初期に感染すると胎児に先天性風疹症候群と呼ばれる障害が起こる可能性があります。
先天性風疹症候群は聴覚障害や心臓の異常、発育不全などの合併症が生じる可能性があります。
視力障害などを引き起こすことがあり、重篤な場合には死亡することもあります。
風疹の予防対策としては妊娠前に風疹抗体検査を受け、抗体が不足している場合は予防接種を受けることが推奨されています。
妊娠中は予防接種ができないため、感染リスクの高い場所や風疹患者との接触を避けることが大切です。
薬やサプリメント
妊娠中に体調を崩したとき、妊娠していることを病院で告げて薬を処方してもらえば安心ですが、どうしても病院へ行けない場合もあるでしょう。
ウェブで調べれば「妊娠中に服用して良い薬・悪い薬」の情報は出てきますが、ドラッグストアなどで市販薬を購入する際は必ず薬剤師や医薬品登録販売者の人に相談するようにしましょう。
市販薬
一部の市販薬の中には、妊娠中に使用すると胎児に悪影響を与える可能性のある成分が含まれているものもあります。
例えば、頭痛薬などの鎮痛剤の中には非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が含まれているものもあり、胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。
赤ちゃんの成長を妨げたり流産のリスクが高くなるため、妊娠中は使用できません。
また、漢方薬なら大丈夫と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、含まれる成分や配合などがメーカーによって異なるため、使用する場合は必ず医師や薬剤師にご相談ください。
サプリメント
サプリメントは適切に使用すれば栄養補助になりますが、過剰摂取によるリスクもあり、逆に母体や胎児に悪影響を与える可能性があります。
例えば、ビタミンAは皮膚や粘膜を健康に保ち、抵抗力を高めるはたらきがあるため積極的に摂りたい栄養素ですが、過剰摂取により胎児の先天奇形が増加することが報告されています。
食べ物からの過剰摂取はよほど大量に食べ続けない限りは基本的に心配ありませんが、サプリメントは簡単に過剰摂取になる可能性があるため、用法を守って適切に摂取することが大切です。
妊娠前から飲んでいるサプリメントだったとしても、念のため妊婦健診の際にお医者さまにご相談くださいね。
激しい運動は控える
妊娠中はヨガやアクアビクスなどのマタニティスポーツが推奨されていますが、妊娠初期はつわりもあり体調が安定しないことが多いので運動は控えたほうがいいでしょう。
妊娠初期に運動をしても流産のしやすさに影響はないとされていますが、妊娠12週までは運動の有無に関係なく流産がおこりやすい時期ですので、妊娠中期になり体調が落ち着くまではゆっくり過ごすようにしましょう。
激しい運動は転倒や衝撃による怪我のリスクもありますので、安定期に入っても控えましょう。
ウォーキングやピラティスなどの有酸素運動がおすすめです。
これらの運動は、筋力や柔軟性の維持に役立ち、リラックス効果も期待できます。
ただし、運動の強度や継続時間は、個人差があるため、自分に合った運動プログラムを選ぶことが重要です。
たばこをやめる
妊娠が分かったらすぐにタバコをやめ、受動喫煙にも注意しましょう。
たばこに含まれるニコチンは血管を収縮させるため、胎児に十分な酸素や栄養が行き届かなくなります。
これにより、胎児の成長が遅れたり、低体重児や流産のリスクが高くなります。
また、たばこに含まれるタールや一酸化炭素は、胎盤を通して胎児にも影響を及ぼし、早産や発育不良、呼吸器系の問題などが起こる可能性があります。
妊娠中のセックス
妊娠初期のセックスは基本的に問題なく、通常は胎児に影響を与えることはありません。
しかし、出血や痛みがある場合はすぐにやめることはもちろん、子宮やお腹に圧力がかかるなど無理な体位は避けましょう。
精子には子宮を収縮させる作用がありますので、必ずコンドームをつけるようにしましょう。
旅行
もともと予定していた旅行などは、妊娠中に行っても問題ないのでしょうか?
体調が変化しやすい妊娠中は、初期でも安定期でもあまりおすすめできません。
旅先で体調が急変した場合、近くに医療機関がない可能性もあります。
特に流産になる確率が高い妊娠12週未満での旅行は控えたほうがいいでしょう。
もし旅行や遠出をする際は長時間の移動は避け、自分の体調に合わせた計画を立てることが大切です。
こまめに休憩をとりながら身体に負担がかからないよう心がけましょう。
仕事との両立
妊娠初期はつわりや疲労感が強く出ることが多く、はたらく女性は仕事との両立を難しく感じることもあるでしょう。
どうしてもつらい場合は有給をとるなどして、妊娠前の感覚で無理をし過ぎないようにしましょう。
また、職場に妊娠を報告するタイミングですが、体調の変化により業務に影響が出る場合がありますので、直属の上司には妊娠が分かったら早めに報告する人が多いようです。
一般的には体調が落ち着いてくる安定期(妊娠5ヶ月頃)に入ったら同僚などへ報告するのが良いとも言われますが、実際は業務への影響や仕事内容の調整などを考慮して妊娠2ヶ月~3ヶ月頃に報告する人が多いようです。
旦那さんが気をつけること
妻の妊娠が分かって喜びいっぱいなのと同時に、何をすればよいのか?と戸惑う旦那さんが多いようです。
旦那さんも初めてのことで分からないことだらけかもしれませんが、それは女性も同じです。
思いやりの心を持って寄り添いましょう。
【妻が妊娠したら旦那さんが気をつけるポイント】
- 妻の体調の変化を理解する
- 妻の気持ちに寄り添う
- においに気をつける
- できる家事は率先してやる
1.妻の体調の変化を理解する
妊娠初期はつわりによって吐き気やムカつきが起こりやすいほか、眠気やだるさ、頭痛などさまざまな症状が起こります。
たとえ吐き気がなかったとしても疲れやすいということを理解して、旦那さんが帰宅したらソファーで横になっているのを見て「ダラダラして。。。」と思わず、妻の身体を気づかいましょう。
2.妻の気持ちに寄り添う
妊娠するとホルモンバランスの変化や不安感から、イライラや焦燥感など気持ちが不安定になりやすくなります。
妻の気持ちに寄り添って、じっくり話を聞きましょう。
穏やかな家庭環境を作ることで、妊娠中のストレスを軽減することができるでしょう。
3.においに気をつける
妊娠初期はにおいに敏感になることが多く、タバコやにおいが強い食べ物はもちろん、今までは美味しそうと思っていたご飯が炊けるにおいでも気持ち悪くなることがあります。
アルコールのにおいをプンプンさせて帰宅するのもNGです!
4.できる家事は率先してやる
洗濯や掃除、ゴミ出しなどできる家事は率先してやりましょう。
特に「においづわり」がある妊婦さんは料理中の香りでも気持ち悪くなるため、料理も時々でも作れるといいですね。
以上が、妊娠初期の妊婦さんの旦那さんが気をつけるべきポイントです。
二人の子どもですから夫婦で協力し、旦那さんは妊婦さんの体調や気持ちに理解を示し、優しくサポートすることが大切です。
起こるかもしれないトラブルと対処法
妊娠中はさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
子宮外妊娠や、妊娠初期の流産のように防ぎようのないトラブルもありますが、それでも早期発見と適切な対処が大切です。
妊娠合併症は妊娠中期~後期におこることが多いですが、妊娠初期からの体重管理の習慣や適切な妊婦健診の受診などによって、重症化を防ぐことができます。
赤ちゃんの状態を知る出生前診断には、スクリーニング検査として実施されるNIPTやクアトロテストなどのほか、確定診断として実施される羊水検査や絨毛検査などがあります。
それぞれ検査の実施期間がありますので、結果的に検査を受けなくても早めに検討する必要があります。
子宮外妊娠が疑われる場合
子宮外妊娠(異所性妊娠)とは、受精卵が育つことができない場所に着床してしまうことです。
腹痛や性器からの出血、吐き気などの症状が出ることがありますが、このような症状は正常妊娠でも起こり得ます。
妊娠検査薬では陽性となり、超音波検査などで調べてみないと分かりませんので、妊娠週数が進む前にきちんと受診をして早期発見をすることが大切です。
子宮外妊娠については、「コラム:子宮外妊娠の症状と原因」もご参考にしてください。
妊娠合併症
妊娠糖尿病は妊娠中の女性の約8人に1人の割合で起こり、赤ちゃんが育ちすぎたり、逆に発育が悪くなったり、死産につながる可能性があります。
妊娠前に太り過ぎていたり、やせすぎていたりすると妊娠合併症になるリスクが高くなりますので、妊娠前からの適切な体重管理が大切です。
流産や死産のリスクと注意点
流産とは妊娠22週未満にお腹の赤ちゃんが亡くなってしまうことをいい、医療機関を受診して妊娠が確認された女性のうち、約15%が流産しており決して珍しいことではありません。
その中でも特に妊娠12週未満の妊娠初期に起こる流産が8割以上を占めており、その原因の多くは赤ちゃんに遺伝子や染色体の異常などがあり育つことができないためにおこります。
妊娠初期におこる流産の原因の多くは胎児側にあり、妊娠前の行動や生活習慣はほとんど影響しないと考えられていますので、もし流産してしまってもご自身を責めないであげてくださいね。
過度な喫煙や飲酒でなければ、妊娠が発覚してすぐに止めれば赤ちゃんに影響はないと考えられています。
流産については、「コラム:流産の確率と年齢との関係」もご参考にしてください。
赤ちゃんの状態を知る検査
妊娠中におなかの赤ちゃんについて何らかの先天性の病気がないかを調べる検査のことを「出生前診断(しゅっせいぜんしんだん)(しゅっしょうまえしんだん)」といいます。
広い意味ではエコー検査も含まれ、おなかの赤ちゃんの状態やリスクを知ることが出来る検査です。
しかし、すべての先天性(生まれつき)の病気が分かるわけではなく、いくつか種類がある出生前診断ではそれぞれ対象としている疾患や得意不得意に違いがあります。
エコー検査以外は任意の検査で、妊娠初期から妊娠中期にかけて実施しているため、検査を受けるか迷う場合は早めに検討する必要があります。
出生前診断については、「コラム:出生前診断ってなに?分かりやすく解説」もご参考にしてください。
まとめ
妊娠中は免疫力が弱まるため、妊娠前は気にしていなかったお刺身や非加熱のチーズなど、生の食べ物に注意しましょう。
また食べ物のほか風邪やインフルエンザなどの感染症にも注意して、人混みを避ける、手洗いうがいを徹底するなどの基本的な対策は習慣化しましょう。
アルコールやタバコは妊娠に気づいてすぐにやめれば胎児に影響はないと言われていますが、妊娠前の摂取量が過剰な場合はその限りではありませんので、妊娠を意識したときに一度見直してみるのがよいでしょう。
そして夫婦で支え合って、健やかな妊娠生活を送ってくださいね。