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妊娠高血圧症候群の症状チェックとなりやすい人の特徴

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author:DNAサイエンス
妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は妊婦に特有の疾患の一つで、妊娠中の女性の約10~15人に1人の割合で起こります。

誰にでもその発症リスクがあり初期の段階では自覚症状はほとんどありませんが、重症化するとママにとってもおなかの赤ちゃんにとっても命の危険があります。

ここでは、妊娠高血圧症候群の原因はなんなのか?その症状やなりやすい人の特徴などについてご紹介しています。

妊娠高血圧症候群とは

高血圧の定義

妊娠高血圧症候群とは妊娠をきっかけに高血圧となる疾患のことです。

妊娠中は胎児の成長とともにママの循環血液量も増えていくため血管に負担がかかりやすくなります。

そのためまだ胎児が小さい妊娠初期に高血圧となった人は除く、妊娠20週~分娩後12週までの間に高血圧が見られた場合のことをいいます。

初期は自覚症状がほとんどないため妊婦健診で発覚するケースが多く、特に妊娠後期におこりやすい疾患です。

全妊婦の7-10%が発症するといわれており、妊娠前の血圧に関係なく誰にでもおこる可能性があります。

【妊娠高血圧とは】

  • 妊娠20週~分娩後12週までの間に高血圧が見られる
  • 妊娠前は高血圧ではなかった

【高血圧とは】

  • 収縮期血圧 140mmHg以上(重症では160mmHg以上)
  • 拡張期血圧 90mmHg以上(重症では110mmHg以上)

高血圧の状態が続き血管に負担がかかり続けるとタンパク尿や全身の臓器障害を伴うこともあり、母体死亡や胎児死亡の原因にもなります。

高血圧になったタイミングや合併する症状などによって管理方法が異なるため妊娠高血圧症候群の中でもいくつか分類されます。

妊娠中毒症

妊婦の足の浮腫

現在は使われていませんが20年ほど前までは、「高血圧」「尿タンパク」「浮腫(ふしゅ)」があると妊娠中毒症と診断されていました。

しかし、むくみ(浮腫)は妊娠中には一般的によく見られる症状であることなどから診断基準から外され、妊娠に関連しておこる高血圧の総称として「妊娠高血圧症候群」と呼ぶようになりました。

妊娠高血圧症

妊娠中にはじめて高血圧を指摘され出産後に正常値に戻る場合を「妊娠高血圧症」といいます。

【妊娠高血圧症】

  • 妊娠20週以降に初めて高血圧を発症
  • 分娩12週までに正常化する
  • 妊娠高血圧腎症の定義に当てはまらない

おなかの赤ちゃんがかなり大きくなった妊娠32週以降に発症しやすい妊娠高血圧症候群ですが、早くから発症するほど合併症がおこりやすくなり重症化するリスクも高くなるため注意が必要です。

妊娠高血圧腎症

妊娠高血圧腎症

妊娠高血圧に加えてタンパク尿をともなう、またはそれに近い状態が認められる場合を「妊娠高血圧腎症」といいます。

腎臓では血液をろ過して老廃物や余分な水分や塩分などを尿として排出するはたらきがあります。

健康な人の尿には微量のタンパク質が含まれるものの身体に必要な栄養素であるタンパク質は再吸収されるため、必要以上に排出されてしまうタンパク尿は腎臓の機能の指標とされています。

【妊娠高血圧腎症】

  • 妊娠20週以降に初めて高血圧を発症
  • 分娩12週までに正常化する

上記を満たし、さらに下記のどちらかに当てはまれば妊娠高血圧腎症です。

  1. タンパク尿がある
  2. タンパク尿はないが以下のいずれかにあてはまる
    • 基礎疾患のない肝機能障害
    • 進行性の腎障害
    • 脳卒中、神経障害(間代性痙攣・子癇・視野障害・頭痛など)
    • 血液凝固障害
    • 子宮胎盤機能不全

【タンパク尿とは】

尿中にタンパクが1日あたり0.3g以上出ること(重症では2g以上)

加重型妊娠高血圧腎症

もともとあった高血圧やタンパク尿が、妊娠をきっかけに悪化した状態を「加重型妊娠高血圧腎症」といいます。

【加重型妊娠高血圧腎症】

  1. 高血圧が妊娠前を含む妊娠20週までにあり妊娠20週以降に以下のいずれかが当てはまる場合
    • タンパク尿
    • 基礎疾患のない肝腎機能障害
    • 脳卒中
    • 神経障害
    • 血液凝固障害
  2. 高血圧とタンパク尿が妊娠前を含む妊娠20週までにあり、妊娠20週以降にどちらかもしくは両方が増悪する場合
  3. タンパク尿が妊娠前を含む妊娠20週までにあり、妊娠20週以降に高血圧を発症した場合
  4. 高血圧が妊娠前を含む妊娠20週までにあり、妊娠20週以降に子宮胎盤機能不全をともなう場合

高血圧合併妊娠

もともと妊娠前から高血圧だった場合は「高血圧合併妊娠」といいます。

【高血圧合併妊娠】

  • 高血圧が妊娠前を含む妊娠20週までにあった
  • 加重型妊娠高血圧腎症ではない

妊娠中に高血圧になった場合と比べると急激な血圧上昇がおこりにくく、きちんと管理すれば出産に適した時期である正期産まで妊娠を継続できることが多くなります。

もとから血圧コントロールのためにお薬を飲んでいた人でも妊娠中に服用できるお薬があります。

症状チェック

めまいがする妊婦

高血圧は初期のころは自覚症状がほとんどないため妊婦健診で診断を受けるケースが多いのが特徴です。

血圧が高い状態が続くとさまざまな症状があらわれてきます。

【妊娠高血圧症候群の症状と合併症】

  • みぞおちの痛み
  • 胃の痛み
  • 嘔吐
  • けいれん
  • 片麻痺
  • 意識障害
  • 発音がうまくできない
  • 強い頭痛
  • 目の前がチカチカする
  • 一時的な視力障碍
  • 血が固まりにくくなる
  • 脳出血
  • 肝機能障害
  • 腎機能障害

上腹部痛、嘔吐(HELLP症候群)

みぞおちからおへそあたりの痛み、胃のあたりの痛み、悪心や嘔吐などの消化器系異常症状がある場合はHELLP症候群が疑われます。

HELLP症候群とは「赤血球が破壊される」「肝機能障害」「血小板数減少」が妊娠中に同時に起こることをいいます。

妊娠後期に発症しやすいですが、分娩期や産褥期にも発症する可能性があります。

早く治療を行なわないと血が固まりにくくなったり、全身の臓器がダメージを受けて母児ともに危険な状態になる可能性がありますので、上記のような症状を感じたらすぐに受診してください。

けいれん発作(子癇)

妊娠中にけいれんの発作や意識消失がおこることがあり、「子癇(しかん)」といいます。

子癇とは妊娠20週以降にはじめておきたけいれん発作のことで、てんかんや脳炎など明らかな原因がある場合は除きます。

発症の予兆として目がチカチカするなどの視覚障害が60-70%の人に見られ、そのほか頭痛やみぞおちあたりの痛みがある場合もあります。

けいれんが起こった場合は速やかに治療をする必要があり、おさまらなければ母児ともに危険な状態になります。

脳卒中

脳卒中とは、脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血などを総称したものです。

基本的に若い人にはおこりにくい疾患ですが、妊娠高血圧腎症では発症リスクが4.4倍になります。

脳卒中では、片麻痺や意識障害、発音がうまくできなくなる、強い頭痛、嘔吐やけいれんなどがおこる可能性があります。

胎児への影響

胎児のイメージ

ママとおなかの赤ちゃんは胎盤を通して臍帯でつながっていますので、母体の高血圧状態が続くともちろん胎児へも影響がでてきます。

【妊娠高血圧症候群による胎児への影響】

  • 常位胎盤早期剥離
  • 胎児発育不全
  • 胎児死亡
  • 低出生体重児
  • 将来の生活習慣病リスク

妊娠週数に対して成長が悪くなり小さく生まれるほか、生まれた後も成人後に生活習慣病になりやすいなど長きに渡って影響を及ぼします。

合併症が重症化すると胎児死亡につながる恐れもあり十分に管理する必要があります。

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)とは、胎盤が出産より前にはがれてしまうことをいいます。

原因は不明とされていますが、妊娠高血圧症候群で合併しやすいことが知られています。

胎盤は赤ちゃんに栄養や酸素などを届けていますので、はがれた部分が大きいと大量に出血し胎児死亡にもつながります。

お腹が異様に張って痛かったり、性器出血が見られる、胎動が急に減ったなどの異常を感じたらすぐに受診してください。

常位胎盤早期剥離と診断されたら母児の状態や妊娠週数にもよりますが、多くの場合は緊急帝王切開となります。

胎児発育不全

ママの血圧が高い状態が続き特に重症の場合には胎盤での血液の流れが悪くなり、おなかの赤ちゃんに十分な栄養や酸素が届かず成長に影響がでます。

赤ちゃんの発育が悪くなったり状態が悪くなる可能性があり、低出生体重児として生まれたり亡くなってしまうこともあります。

胎児の状態によっては出産予定日を待たずに帝王切開とすることもあります。

胎児死亡

常位胎盤早期剥離や胎児発育不全などはおなかの赤ちゃんが生まれる前に亡くなってしまう、もしくは生まれてすぐに亡くなってしまう原因にもなります。

低出生体重児

低出生体重児とは、体重が2,500g未満で生まれることをいいます。

小さく生まれた赤ちゃんは体が十分に発達していないことがあり、生まれた妊娠週数によっては発達や発育が遅れたり、障害が残る可能性や感染症にかかりやすいなどの健康上の問題がおこる可能性があります。

将来の生活習慣病リスク

体の機能が十分に発達せずに生まれた場合、将来成人してからメタボや糖尿病など生活習慣病になるリスクが高くなります。

なりやすい人の特徴

遺伝する妊娠高血圧症候群

血圧が高くなりやすい生活習慣や遺伝的な要因がある人は、妊娠高血圧症候群にもなりやすいといえます。

【リスクが高い人の特徴】

  • 肥満(BMI25以上)
  • やせすぎ
  • 高齢出産(35歳以上)
  • 双子妊娠
  • 家族に高血圧の人がいる
  • 腎臓や心臓に持病がある
  • 前の妊娠で妊娠高血圧症候群になった

妊娠前から太っている人のほか、痩せすぎている人も妊娠による身体への負担が大きいためリスクが高くなります。

高齢妊娠・高齢出産では血管が衰えてきており、双子以上の多胎妊娠では循環血液量が増えるためそれだけ血管に負担がかかります。

また食生活や生活のリズムが乱れていたり、過度なストレスを感じている人も血圧が高くなりやすくなります。

原因

妊娠高血圧症候群の原因についてははっきりとは分かっていません。

現在有力な説としては妊娠初期に胎盤が作られる際に何らかの不具合があり、さまざまな物質が異常に分泌されるために全身の血管に影響を及ぼしているのではないかと考えられています。

治療法

リラックスする妊婦

妊娠高血圧症候群の治療は、安静と食事療法が基本になります。

【妊娠高血圧症候群の治療】

  1. 安静
  2. 食事療法
  3. 降圧薬の使用
  4. 妊娠を終わらせる

症状がそれほど重くないときは生活指導や食事指導を受けて外来での経過観察とします。

重症の場合は入院して安静にし、徹底した食事と血圧の管理を受けます。

安静

安静にすることで交感神経の緊張が緩んで血圧が下がりやすくなります。

食事療法

高血圧のための食事というと減塩がまっさきに思い浮かぶのではないかと思います。

近年では減塩による血圧を下げる効果は疑問視されていますが、塩分を摂りすぎるとむくみやすくなりますので、過度に塩分制限をする必要はありませんが適切な量を心がけましょう。

妊娠中は適切に体重が増える必要があるため、食事制限ではなく食べ過ぎや栄養バランスに気をつけて体重コントロールを行ないます。

薬物療法

血圧を下げるための降圧薬がありますが、急激にママの血圧が下がるとおなかの赤ちゃんへ酸素や栄養が届きにくくなり、赤ちゃんが低酸素や低栄養状態に陥ることがあり慎重に使用する必要があります。

そのほかけいれん予防のためのお薬を用いることもあります。

妊娠を終了させる

妊娠高血圧症候群は妊娠していることが原因ですので根本的に治療することはできず、症状をコントロールできない場合は帝王切開などで早く赤ちゃんを取り出すことになります。

出産後はママの症状は収まることが一般的です。

赤ちゃんはできる限りママのおなかの中で成長することが理想ですが、妊娠の継続によって母児に命の危険があると判断された場合は、たとえ妊娠週数が短く早産になったとしても妊娠を終わらせることになります。

出産方法:帝王切開

帝王切開

妊娠高血圧症候群での出産方法は、ママとおなかの赤ちゃんの状態や緊急度、妊娠週数などによって帝王切開か経腟分娩かを選択します。

【分娩とするタイミング】

  • 妊娠34週以降で重症の場合
  • 妊娠34週未満だが母児の生命に危険と判断された場合

血圧がコントロールできており、母児ともに経過が順調であれば正期産を目指します。

正期産(せいきさん)とは、妊娠37週~41週までの間に出産することで、母子ともに一番リスクの少ない時期とされています。

ただし妊娠34週になると赤ちゃんは肺が機能するようになり、ママのおなかの外に出ても自力で呼吸ができるようになりますので、母児の経過が芳しくない時は妊娠34週をめどに妊娠を終わらせます。

経過が悪く母児の生命に危険と判断された場合は、妊娠34週を待たずに妊娠を終わらせます。

次のような重篤の場合には妊娠週数に関係なく妊娠を終わらせることを検討します。

【急いで分娩する必要があるケース】

  • 母体臓器障害が著しい
  • 子宮胎盤機能不全
  • 治療に抵抗する重症高血圧症

分娩様式としては帝王切開分娩誘発による経腟分娩がありますが、どちらを選択するかは母児の病態の重篤度や緊急度、在胎週数や胎位、子宮頸管の状態などを考慮して慎重に選択する必要があります。

どちらの分娩様式を選択しても出産後のママの体調に影響はありませんが、経腟分娩で24時間以上かかると母体予後が悪化したとの報告もあります。

また経腟分娩でも途中で状態が悪化すれば緊急帝王切開となる可能性が常にありますので、どちらの分娩様式が良いというわけではありません。

予防するポイント!

妊婦健診を受ける妊婦

妊娠高血圧症候群の予防法については確立されたものはありませんが、次の点に気をつけることが効果的とされています。

【妊娠高血圧症候群を予防するポイント】

  • 妊婦健診を受ける
  • 体重管理
  • 塩分を摂り過ぎない
  • 休息をしっかりとる
  • ストレスをためない

初期は自覚症状がほとんどないため、早期発見のためにまずは妊婦健診をしっかり受けることが大切です。

体重管理や塩分を摂り過ぎないことは妊娠中の食生活の基本でもあります。

日本人の食事摂取基準によると妊婦だからといって特別に塩分制限をする必要はありませんが、成人女性の塩分摂取の目標量は1日に6.5g未満とされています。

これは外食や加工食品の利用が多いとすぐに超えてしまう量ですので、お出汁を生かして薄味を心がけるなど工夫してみましょう。

ストレスが多かったり活動量が多いと交感神経が刺激されて血圧が上昇します。

妊娠中はできるかぎりリラックスして過ごすことを意識し、疲れたらすぐに横になって休息をとれる環境を作ることが理想的です。

まとめ

ストレスをためないよう過ごす妊婦のイメージ

妊娠高血圧症候群は重症化させないためにまずは早期発見に努めることが大切です。

出産後は多くの場合は正常な血糖値に戻りますが将来に高血圧となるケースも珍しくないため、妊娠中に指導された食生活や過ごし方のポイントなどを継続できるとよいですね。


【参考】

妊娠高血圧症候群 | 日本産科婦人科学会(外部サイトへ移動します)

産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020 | 日本産科婦人科学会(外部サイトへ移動します)


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