妊娠したら喜びと幸せいっぱいなのと同時に、妊娠中は不安に感じることもたくさんあり、流産もその一つだと思います。
流産の中には防げるものとそうでないものとがあり、特に妊娠初期におこる流産の原因の多くは受精卵の段階でその運命が決まっており、ママが努力をしてなんとかなるものではありません。
ここでは流産の原因や症状、流産の確率や年齢との関係などについてご紹介いたします。
流産とは
流産とは、おなかの赤ちゃんが妊娠22週より前に亡くなってしまうことをいいます。
【流産の時期】
妊娠22週とは妊娠中期である妊娠6ヶ月にあたり、それより早い時期では赤ちゃんの身体が未熟すぎてママのおなかの外では生きていけない、助けられない時期とされています。
亡くなった赤ちゃんがママのおなかの中にいるのか外に排出されているかは関係なく、妊娠22週より前に胎児(胎芽)が亡くなり妊娠が継続できない状態はすべて流産とよびます。
流産になる確率
流産になってしまうことは決して珍しいことではなく、医療機関を受診して妊娠を確認された女性のうち、約15%が流産しています。
実に6~7人に1人の確率です。
そのなかでも特に妊娠12週未満の妊娠初期におこる流産が8割以上を占めています。
妊娠12週を過ぎても流産になる可能性はありますが、そのリスクはぐんと減ります。
流産の原因
なぜ流産になってしまうのでしょうか?
妊娠初期の流産の原因は、その多くは赤ちゃんに遺伝子や染色体の異常などがあり育つことができないためにおこります。
胎児の染色体異常は、多くの場合両親に原因はなく偶然におこります。
染色体は遺伝子を正確に子孫へ伝えるのに重要な役割を担っています。
遺伝子はタンパク質をつくる情報を持っており、どの細胞で、どのようにタンパク質(身体)を作るかを管理しています。
染色体異常があると遺伝情報がうまく伝わらずその多くは受精卵の段階で、着床できても正常に育つことができず妊娠初期の早い段階で流産となります。
流産をしてしまった場合、「自分の行動や生活習慣になにか問題があったのか。。。」と悩まれるかもしれませんが、妊娠初期にママが運動をしたり仕事が忙しかったことなどは影響しないとされていますので、どうかご自身を責めないでください。
一方で、妊娠12週を過ぎてからの流産の原因としては、感染症によるものやママの子宮に異常があるなど、ママ側の原因が考えられます。
子宮奇形や子宮筋腫、頸管無力症や自己免疫疾患などが流産の原因として挙げられます。
流産の症状
流産の兆候として、出血や下腹部痛、お腹の張りなどがありますが、これらの症状がほとんどなく流産がおこる場合もあります。
不正出血は正常な妊娠経過でも起こる可能性があり、出血のすべてが流産のサインというわけではありません。
妊娠中は子宮内の血液循環が豊富になっていますので、ちょっとした刺激でも出血しやすくなっています。
少量の出血はよくあることですが、何が原因の出血か自分では判断できませんので、落ち着いて色や量を確認しましょう。
特に鮮やかな色の血が出る場合や量が多い場合、おなかの痛みが強い場合はすぐに受診してください。
妊娠初期の出血は流産?
妊娠初期に少量の出血やおなかの痛みを感じることはよくあります。
着床出血や内診などの刺激により出血することもありますし、子宮頸管ポリープなどあまり心配のいらない出血から、子宮外妊娠など妊娠を継続できないものまでさまざまあります。
妊娠初期に出血したからといって、流産や切迫流産だとは限りません。
流産の種類
流産にはその状態や原因、症状などによる分類でさまざまな呼び方があります。
【原因による分類】
- 人工流産
- 自然流産
「中絶」か「それ以外」かに分けられます。
【症状による分類】
- 稽留流産
- 進行流産
進行流産とは現在進行形で流産している、つまり出血がはじまり胎児を含めた子宮の内容物が出てきている状態のことです。
【流産の進行具合による分類】
- 完全流産
- 不全流産
子宮の内容物がすべて出ているか、残っているかの違いがあり、それによって流産後の手術の要否が分かれます。
【流産に伴う状態による名称】
- 感染流産
【流産の回数による名称】
- 反復流産
- 習慣流産
【流産の時期による名称】
- 化学流産
人工流産
人工流産とはいわゆる「中絶(人工妊娠中絶)」のことです。
中絶手術は母体の保護を目的としており、母体保護法で定められた条件でのみ行うことができます。
手術が可能な期間は妊娠22週未満(妊娠21週6日)までと決まっていて、手術を受けるための条件や医師の条件などが定められており、該当しない場合は中絶手術を受けることはできません。
自然流産
自然流産とは、人工流産以外のすべての流産のことをいいます。
例えば、妊娠22週未満で胎児がママのおなかの中にいる状態で亡くなり、手術で取り出したとしても自然流産に当てはまります。
稽留流産
稽留流産(けいりゅうりゅうざん)とは、出血や腹痛などの流産の兆候はないものの、妊娠初期の段階で胎児(胎芽)がママのおなかの中で成長が止まっているのに、子宮内に留まっている状態のことをいいます。
稽留流産は、超音波検査により診断されるようになりました。
自覚症状がありませんので、医療機関での診察で初めて確認されます。
妊娠5週頃に胎嚢(たいのう:赤ちゃんが入っている袋)が確認された後、胎児心拍が確認できない場合や、心拍を確認できたあとでできなくなった場合などがあります。
子宮内に留まっている胎児は、自然排出されるのを待つか手術で取り出します。
感染流産
感染流産とは、細菌やウイルスなどによる感染を伴った流産のことをいいます。
風疹やB型肝炎などのウイルスに感染すると流産のリスクが高くなり、無事に生まれたとしても風疹ウイルスでは先天異常がおこったり、肝炎ウイルスでは将来肝硬変になりやすいなどのリスクがあります。
クラミジアや梅毒などの性感染症は流産や早産になりやすいうえに、無事に生まれたとしても母子感染のリスクがあります。
反復流産・習慣流産
妊娠した女性の6~7人に1人は流産していますので、意外と多く起こっています。
しかし、それぞれの妊娠は独立していると考えますので、同じ女性が続けて流産する頻度は2~5%程度と決して高くはありません。
流産を2回以上繰り返すことを「反復流産」、3回以上繰り返す場合を特に「習慣流産」といいます。
繰り返す流産は「不育症」などなんらかの原因が考えられますので、両親の染色体異常やママの子宮の形の異常、血液検査など不育症の検査を受けてみたほうがいいでしょう。
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切迫流産とは
切迫流産とは「流産がせまっている」状態、つまり流産してはいないが流産の一歩手前の状態のことをいいます。
「流産」とついていますが流産との決定的な違いは、「おなかの赤ちゃんが生きているか?」にあります。
妊娠22週未満で不正出血やおなかの張り、痛みなどがあると、通常より流産のリスクが高い状態として「切迫流産」と診断されることがあります。
流産では赤ちゃんは亡くなってしまっているので残念ながら助けることはできませんが、切迫流産は必ずしも流産になるわけではなく、切迫流産と診断されても7割くらいは無事に出産しています。
切迫流産の治療
切迫流産の治療の基本は「安静にすること」です。
安静の程度は人それぞれですので、医師に確認しましょう。
妊娠12週までの切迫流産に対して、流産を予防する有効な治療薬はないとされています。
妊娠12週以降で出血が多くおなかの痛みが強い時は子宮が収縮していると考えられますので、子宮収縮抑制剤などを用いることもあります。
流産後の処置と手術
流産後の処置は「完全流産」か「不全流産」かによって変わります。
「完全流産」とは、胎児を含めて胎盤など子宮の内容物がすべて体外へ排出されている状態ですので手術は必要ありません。
「不全流産」とは、子宮内に何らかの組織が一部残っている状態です。
不全流産の場合、子宮内に残っている組織を取り除く手術を行うことが一般的ですが、最近では不全流産でも一定期間経過後に自然と排出され完全流産となるのを待つ方法も可能なことが知られるようになってきました。
不全流産と診断されても1~2週間で、7割くらいは自然排出されます。
流産後に手術で取り除く場合、施術時間そのものは15~20分程度で終わります。
当日帰宅できることが多く、手術後2~3日は安静にして過ごします。
高齢出産の方が流産になりやすい?
高齢出産・高齢妊娠とは明確な定義はありませんが、一般的には「35歳以上で初めて出産・妊娠すること」をいいます。
35歳になったからといって急に流産しやすくなるわけではありませんが、統計として妊娠年齢が上がるほど流産の確率が高くなることが知られています。
【母の年齢と自然流産率】
30~34歳での自然流産率は10.0%ですが、35~39歳では20.7%で有意差があり、確率が高くなっていることが分かります。
40歳以上では41.3%と、実に5人に2人の割合で自然流産しています。
これは35歳頃から卵巣機能の低下が始まり、年齢が高くなるほど卵子も年齢を重ねるために卵子の老化がおこり、受精したとしてもうまく細胞分裂できず流産してしまう確率が高くなるためです。
流産と死産の違い
ところで、流産と死産はどのように違うのでしょうか?
厚生労働省によると、
”死産とは、妊娠満12週(妊娠第4月)以後の死児の出産をいう。”
とされています。
一方で流産とは「胎児が妊娠22週未満で死亡すること」をいいますので、「妊娠何週目でおなかの赤ちゃんが亡くなったか?」に違いがあります。
妊娠満12週以降になると、死産届を7日以内に提出する義務や火葬許可証が必要になるなど、法律上必要なことがでてきます。
また、妊娠満12週以降になると死産・流産でも出産育児一時金が支給されます。
流産と早産の違い
妊娠22週から妊娠37週未満の間に赤ちゃんが産まれることを「早産」といい、妊娠22週0日を境に流産と早産が区別されます。
妊娠22週より早く出てきた赤ちゃんの生存例はありませんが、22週を過ぎるとNICU(新生児集中治療室)でのケアにより生きられる可能性が出てきます。
とはいっても、妊娠22週の赤ちゃんの体重は500g程度しかなく体の各器官も未熟ですので、早く生まれるほど重篤な障害が残る可能性が高くなります。
まとめ
妊娠初期におこる流産の原因の多くは胎児側にあり残念ながら防げるものではありませんので、もしそうなったとしても決してご自身のことを責めないでください。
妊婦健診などでママの身体に問題がなければ、流産は心配していても対処のしようがありませんので、赤ちゃんに会える日を楽しみに今しかないマタニティライフを満喫なさってください。