妊娠中に切迫早産だと言われたら、早産になってしまうの?と不安になりますね。
これまで妊娠の経過が順調だったとしても、切迫早産になる可能性はあります。
切迫早産の原因とは何なのでしょうか?また、なりやすい人の特徴や予防法などはあるのでしょうか?
ここでは切迫早産の症状や兆候などに加えて、早産で生まれた赤ちゃんの生存率などについてご紹介しています。
切迫早産とは
切迫早産とは、まだ赤ちゃんが生まれてはいないが早産の一歩手前の状態のことをいいます。
妊娠中は胎児の出口である子宮頸管は閉じていて、お産に伴って少しずつ短くなり開いていきますが、切迫早産ではまだ出産には適さない早い時期にそのような変化がはじまってしまう状態です。
切迫早産ではおなかの張りや痛み、時には出血や破水があり子宮口が開きかけていて早産が避けられない重度の場合もありますが、安静にすることで治まる比較的軽いケースもあります。
早産とは?
早産とは妊娠22週0日~36週6日までに出産することをいい、全妊娠の約5%におこっています。
母子ともに一番リスクが少なく出産に適した時期を「正期産」といい、妊娠37週0日~41週6日までに出産することをいいます。
妊娠42週以降での出産は「過期産(かきさん)」といいます。
赤ちゃんはママのおなかの中で日々成長しており、早産の中でも妊娠34週を過ぎれば外界でも人工呼吸器に頼らず自力で呼吸ができる可能性が高くなり、重篤な合併症がなく無事に退院できる場合が多くなります。
しかし、それでも赤ちゃんの体はまだ成熟しておらず、呼吸障害や哺乳不良、低体温症や低血糖症などがおこる可能性があり油断はできません。
妊娠22週未満の出産は流産といい、現在の医療では残念ながら生存例はありません。
早産ぎりぎりの妊娠22週で生まれた赤ちゃんは体重が500g程度しかなく体の各器官が未熟なため、長期に渡る新生児集中治療室(NICU)での治療が必要となります。
早産の中での妊娠週数が短く、早く生まれた赤ちゃんほど脳性麻痺など重篤な障害が出る可能性が高くなります。
妊娠28週になると赤ちゃんの体重は1,500g程度まで増え、内臓器官や中枢神経の機能がほぼ完成するため、医療技術の進歩により生存率は95%程度と高くなります。
切迫早産の症状
切迫早産の主な症状は下腹部の張りや痛みです。
【切迫早産の症状】
- 下腹部の張り
- 下腹部の痛み
- 出血
- 破水
妊娠後期になり子宮が大きくなるにつれておなかの張りや痛みを感じやすく、ほとんどの妊婦さんが経験します。
長時間歩いたあとや体が冷えたときに感じるおなかの張りは生理的なものがほとんどで、しばらく横になるなどして安静にすることで治まるようならあまり心配はありません。
しかしそれでも周期的に痛む、張りが続く、強い痛みがあるという場合は早めにかかりつけの産院に相談してください。
このようなおなかの張りや痛みとともに性器からの出血がある場合はなんらかのトラブルが考えられます。
陣痛がおこる前に破水してしまう「前期破水」の場合、赤ちゃんが細菌感染するおそれがあります。
量が少なくおりものや尿と区別ができないこともありますが、破水は自分の意思では止めることができずチョロチョロと出てきます。
出血や破水があった場合はすぐに受診してください。
切迫早産の原因
切迫早産になる原因は、細菌の感染や体質によるもの、妊娠中のトラブルなどがあります。
切迫早産や早産の原因として最も多いのは細菌やウイルスによる感染症です。
膣炎や性感染症などによる炎症がおこると子宮の収縮や破水がおこりやすくなります。
子宮頸管無力症とは、赤ちゃんの出口である子宮頸管が子宮の収縮がなく開いてしまう状態のことで、痛みがなく自覚症状がありません。
子宮頸管無力症の原因ははっきりとはわかっていませんが、体質や過去の子宮頸部の手術などが関係すると考えられています。
子宮筋腫や子宮奇形があると早産がおこりやすくなります。
双子などの多胎妊娠の場合、子宮がより大きくなることでおなかが張りやすくなります。
妊娠高血圧症候群や前置胎盤(胎盤が子宮の出口あたりにある)、常位胎盤早期剥離(胎盤がはがれてしまう)があると、人工早産として帝王切開になる可能性があります。
無理なダイエットによる痩せすぎや妊娠中の喫煙などは赤ちゃんに十分な栄養が届かず胎児発育不全になる可能性があり、結果的に早産や人工早産のリスクとなります。
タバコは妊婦さん本人の喫煙はもちろんのこと、受動喫煙にも気をつけましょう。
切迫早産のリスクが高い人の特徴
切迫早産のリスクが高い人の特徴としては、上記のような切迫早産の原因となる要素を持っている人や、過去に早産した経験のある人が挙げられます。
【切迫早産のリスクが高い人の特徴】
- 過去に早産の経験がある
- 前回の出産から半年以内の妊娠である
- 痩せすぎ
- 喫煙習慣がある
- ストレスや無理のある生活
- 子宮頸管を切り取る手術の既往
- 歯周病がある
長時間の労働やストレスは出来る限り避けましょう。
歯周病など体のどこかが炎症していると血管を通じて全身の疾患につながり早産になるリスクが高くなります。
切迫早産の治療
切迫早産になったら、ママのおなかの中で成長できる期間をできる限り延ばすことが大切です。
切迫早産の治療は安静にすることです。
安静にも程度があり、日常生活の中で出来る限り負担を減らして長時間の作業を控える軽度の場合から、入院して絶対安静を指示される重度の場合までさまざまあります。
切迫早産の下腹部痛や張りの症状は子宮が収縮することでおこりますが、その程度が軽い場合は自宅安静を指示され、長時間の労働や移動、重いものを持つことなどを避けて過ごします。
子宮の収縮が強く早産が避けられない場合は、即日入院し必要に応じて新生児集中治療室(NICU)がある専門の設備がある病院へ救急搬送されることもあります。
子宮の収縮を抑える張り止めによる処置を行う場合もあります。
細菌感染が疑われたり破水している場合、赤ちゃんに感染するおそれがありますので抗菌薬などで対処しますが、妊娠34週以降であれば帝王切開とすることもあります。
切迫早産の予防
切迫早産の確実な予防法はありませんが、原因となる状況を防ぐことでその可能性を低くすることはできます。
妊婦健診をしっかりと受けることで、妊娠高血圧症候群など早期発見により重症化を防ぐことができます。
子宮頸管無力症や常位胎盤早期剥離など防げないような症状でも、早期発見により対処の仕方が変わってきます。
感染症予防のために、妊娠中のセックスはコンドームを使用して性感染症に気をつけましょう。
そして、できるだけストレスを溜めずゆとりのある妊娠生活を心掛けることが推奨されています。
おなかの赤ちゃんのためにも、疲れたらしっかりと休める環境を作り無理のない生活を送りたいですね。
早産で産まれた赤ちゃんの生存率
早産で生まれた赤ちゃんの生存率は、在胎週数が大きく影響します。
【早産で生まれた赤ちゃんの生存率】
- 妊娠22-23週:66.1%
- 妊娠24-25週:86.5%
- 妊娠26-27週:94.0%
- 妊娠28-29週:96.7%
- 妊娠30-31週:97.5%
ママのおなかの中にいる期間が短く妊娠22-23週で生まれたときの生存率は66.1%で、以降在胎週数が長くなるほど早産での生存率は高くなります。
妊娠22週というのは妊娠6ヶ月で妊娠中期にあたり、赤ちゃんの体の重要な器官はほぼ出来上がり性別が分かるようになる時期です。
とはいっても体の各器官が未熟なことに変わりはなく、早く生まれた赤ちゃんほど運動障害や知覚障害が残る可能性が高くなります。
早産で産まれた赤ちゃんのリスク
早産になり、体重が2,500g未満の低出生体重児で生まれると体の各器官が未熟であるため、出生直後だけでなく将来にわたり健康上の問題を抱える可能性があります。
【早産で生まれた赤ちゃんのリスク】
- 障害が残る可能性
- 発達や発育の遅延
- 感染症にかかりやすい
低出生体重児の中でも1,500g未満で生まれた赤ちゃんを極低出生体重児といいますが、脳性麻痺などの運動障害や知的障害などの合併症の頻度が高くなります。
妊娠28週で赤ちゃんの体重は1,500g程度になります。
体の各器官が未熟なため、呼吸障害や心不全、脳室内出血や視力障害などさまざまなトラブルがおこりやすくなります。
また出生後に明らかな障害がない子であっても、運動や言葉の発達が遅く、一人一人に合ったケアが必要になることもあります。
早産で生まれると母体を介しての抗体をまだ十分にもらえていないため、腸管や気管支粘膜での感染防御や細胞性免疫機能が弱く感染症にかかりやすくなります。
さらに感染症にかかると重症化しやすいため、予防接種が重要です。
まとめ
切迫早産だといわれても必ずしも早産となるわけではなく、安静にしてできるだけ赤ちゃんがママのおなかの中で成長できるようにすることが大切です。
早産の原因となる感染症や生活の乱れなどに気をつけながらできるだけそのリスクを減らして予防に努めますが、切迫早産の原因は複合的なことも多く「これが悪かった」と一概には言えません。
もし早産となった場合でも自分に落ち度があったのでは。。。とご自身を責めず、赤ちゃんに出会えた喜びを感じて成長を見守ってあげてくださいね。
【参考】