近年は双子が生まれる確率が高くなっているのをご存じでしょうか?
これは出産年齢の高齢化や不妊治療の影響などによるもので、令和2年のデータによると日本ではおよそ100件の分娩に対して1組の双子が誕生しています。
双子の芸能人が活躍している姿を見ると、「うちにも双子ちゃんが産まれたらな。。。」と思う方もいらっしゃることでしょう。
望んで双子を産むことはできるのでしょうか?
そもそもどうして双子になるのでしょうか?
今回はそのような双子にまつわるあれこれについてご紹介しています。
なぜ双子になる?
双子って神秘的ですよね。
なぜ双子になるのでしょうか?
一卵性か二卵性かによってそのメカニズムは違いますが、受精する段階で二つの受精が同時におこったり、受精したあとに受精卵が偶然に分離したりすることで双子になります。
二人の赤ちゃんを同時に妊娠していることを「双胎妊娠(そうたいにんしん)」、二人以上の赤ちゃんを同時に妊娠していることを「多胎妊娠(たたいにんしん)」といいます。
双子の妊娠では受精卵の数によって「一卵性」と「二卵性」に分けられ、その特徴や妊娠におけるリスクなどが異なります。
一卵性双生児
一卵性の双子は、もとは一つの受精卵だったのが早い段階で二つに分裂することでおこります。
なぜ受精卵が二つに分かれるのかは分かっておらず、人種などにかかわらず一定の確率で偶然におこります。
元が一つの受精卵だったため遺伝情報は基本的に同じであり、血液型や性別はもちろんのこと、見た目がそっくりといった特徴があります。
一般的に双子と言われて真っ先にイメージするのが一卵性の双子です。
身体能力も似ますが、スポーツや勉強の得意不得意や、性格などは異なることも多いようです。
双子では指紋もよく似ますが完全に一致はしません。
目の虹彩などは異なるため高精度の顔認証システムなら双子を識別できますが、スマートフォンでは認証できない場合もあります。
DNA鑑定については少し前までは一卵性双生児を識別できませんでしたが、現在では技術的には可能なようです。
一卵性の双子は胎児の段階では「一卵性双胎(そうたい)」といいます。
二卵性双生児
二卵性の双子は、本来なら一つの卵子と一つの精子が出会い受精卵となるところ、二つの受精が同時におこることで生まれます。
排卵では一度に一つの卵子が排出されますが、何らかの原因で二つの卵子が排出されることがあり、それぞれが別の精子と出会って受精し着床すると二卵性の双子になります。
二つの卵子が排出される理由としては人種や体質、ママの年齢などが挙げられます。
また、不妊治療で排卵誘発剤を用いた場合も二卵性の双子になる確率が高くなります。
二卵性の双子は同時に生まれてくるきょうだいと同じことなので、遺伝情報は異なり、性別や血液型、見た目や肌の色なども異なる場合があります。
双子が生まれる確率
みなさんの周りには双子の方がいらっしゃいますか?
「何組か知っている」という人もいるかもしれませんね。
双子が生まれる確率はどれくらいなのでしょうか?
これは一卵性か二卵性かで異なります。
一卵性双生児が生まれる確率は人種や地域、遺伝や技術などにかかわりなく一律で0.4%程度です。
0.4%というのは1,000組に4組の割合ですね。
人種や地域などによって出生率の差が出るのは二卵性の双子で、アフリカ系血統など黒人系に多く、黄色人種である日本人は世界的にみると少なめです。
また遺伝的に双子が産まれやすい家系があると考えられていますが、実際に双子を産んだ方がそういった家系なのか、はたまた偶然だったのかは分かりません。
近年では出産年齢の高齢化や不妊治療の影響などにより二卵性双生児が生まれる割合が増えています。
日本での双子の出生割合は1995年では0.79%でしたが、2022年では1.1%とこの30年弱でも増加していることが分かります。
【単産-複産別にみた分娩件数(2022年)】
2022年(令和4年)の人口動態調査によると、分娩件数が777,115件のうち双子が二人とも出生した件数は8,583件と総数に占める割合は1.1%でした。
双子妊娠のリスクが変わる!膜性による分類
双子の妊娠では「一卵性かな?二卵性かな?」ということが気になると思いますが、妊娠のリスクや管理方法について言えばそれよりも「膜性」の方が重要になります。
絨毛膜や羊膜の数によって赤ちゃんたちがママのおなかの中でどのように分かれているかを分類できます。
赤ちゃんの生命維持と成長に重要な役割をはたしている胎盤(たいばん)ですが、胎盤の胎児側の部分は絨毛膜(じゅうもうまく)が分化してできています。
そのため、絨毛膜の数=胎盤の数と考えます。
羊膜とは一番赤ちゃんに近いところを包んでいる膜のことで、羊膜の数=赤ちゃんの部屋と考えます。
それぞれの赤ちゃんに個室があるのか、それとも同じ部屋にいるのかが重要なポイントになります。
【膜性による分類】
- 胎盤も羊膜も2つに分かれている
- 胎盤は1つだが羊膜は2つ
- 胎盤も羊膜も共有していて1つしかない
胎盤はおなかの赤ちゃんが自力ではできない呼吸や栄養補給、老廃物の排出などを血液を介して受け渡しする場所として機能しています。
そのため胎盤が一つの場合、お互いの血液が胎盤を通じて行き来しているため血流が影響し合います。
二絨毛膜二羊膜双胎
胎盤も羊膜も2つに分かれている状態を「二絨毛膜二羊膜双胎」といいます。
二卵性の双子は基本的にすべてこのタイプになります。
胎盤も羊膜もそれぞれに一つずつあるため、個室がありお互いの血流が影響しあうこともありません。
一卵性の双子の約25%もこのタイプに当てはまります。
【一卵性双胎の膜性】
- 胎盤も羊膜も2つ:約25%
- 胎盤は1つだが羊膜は2つ:約75%
- 胎盤も羊膜も共有していて1つ:1%未満
一絨毛膜二羊膜双胎
胎盤は1つだが羊膜は2つに分かれている状態を「一絨毛膜二羊膜双胎」といいます。
一卵性の双子で最も多いのがこのタイプで約75%に当てはまります。
部屋はそれぞれ個室がありますが、胎盤を共有しているためお互いの血流が影響しあいます。
胎盤を共有していると、赤ちゃんへの栄養供給バランスが崩れて片方の児の成長が著しく妨げられる可能性などがあります。
詳しくは「双胎妊娠のリスク」の項目をご覧ください。
一絨毛膜一羊膜双胎
胎盤も羊膜も共有していて1つしかない状態を「一絨毛膜一羊膜双胎」といいます。
最も珍しいタイプで一卵性の双子の1%未満が当てはまります。
胎盤を共有しているためお互いの血流が影響しあいます。
さらに、部屋が同じなためへその緒が絡んでしまうなどの可能性があり、胎児の突然死のリスクも高くなります。
双子妊娠のリスク
多胎妊娠では、母体内のスペースや能力には限りがあるのにもかかわらず赤ちゃんの人数が増えるため、当然1人の妊娠よりも母体への負担が増え妊娠・出産に伴うリスクも高くなります。
【双子の妊娠・出産に伴うリスク】
- 早産
- 双胎間輸血症候群
- 一児発育不全
- 先天異常
- 一児死亡
- 低出生体重児
- 妊娠高血圧症候群
- 妊娠糖尿病
おなかの赤ちゃんが一人でも二人でもそれ以上でも、絶対安全な妊娠や出産というのは無くトラブルがおこる可能性は誰にでもあります。
ただし、双子の場合はさまざまなリスクの頻度がより多くなり、単胎児よりも早産になる確率がおよそ10倍高くなります。
妊娠中期以降はどんどん赤ちゃんが成長してママのおなかも急激に大きく重くなるため、腰痛や胃の圧迫感、おなかの張りやむくみなどが単胎児に比べてひどくなりやすく、こまめに休むなどしっかり対策を取る必要があります。
循環血液量が増えるため貧血にも要注意です。
早産
早産とは妊娠22週0日~36週6日の間に出産することをいい、全妊娠の約5%が早産です。
双子の出産では単胎の場合と比べてママのおなかはより早く大きくなるため早産になりやすく、出産時のリスクを考慮して人工早産とするケースも多いため早産の割合が多くなります。
人工早産を含めた双子出産の約50%は早産となっています。
早産の中でもママのおなかの中にいる期間が短いほど赤ちゃんの体の各器官は未熟なため、長期に渡る新生児集中治療室(NICU)での治療が必要となったり生存率にも影響を及ぼします。
ただし双子出産では早産の中でも妊娠34週以降の比較的「正期産」に近い妊娠週数での出産が多く、この頃になると赤ちゃんは外界でも人工呼吸器に頼らず自力で呼吸できる可能性が高いため重篤な合併症などもなく無事に退院できる場合が多くなります。
双胎間輸血症候群
双胎間輸血症候群は一卵性の双子で胎盤を共有している場合、お互いの血液が行き来するため血液量のバランスが崩れることでおこります。
血流量が少なくなる方の子は低酸素状態になり羊水過少や発育不全などの合併症がおこりやすくなります。
血液量が多くなる方の子は羊水過多になり心不全や胎児水腫などの合併症がおこりやすくなります。
双胎間輸血症候群がおこる原因としては、胎盤の中でお互いの血管がつながっている箇所があることです。
胎盤を共有している「一絨毛膜二羊膜双胎」の約1割におこり、治療をせず放置すると後遺症が残ったり流産や早産になる可能性が高くなりますので、しっかり妊婦検診を受けて早期発見・早期治療につなげましょう。
一児発育不全
上記のように血管がつながっているわけではなくても、双子ちゃんの成長に差がでて片方の子が標準より小さく発育不全になることがあります。
一児発育不全になる原因としては、それぞれの赤ちゃんが占有している胎盤の面積が違うことなどが考えられ、栄養や酸素の供給バランスに偏りが生じます。
先天異常
先天異常(先天性疾患)とは、体のかたちや体の機能に生まれつき異常のある場合をいいます。
先天異常は生まれた赤ちゃん全体の3~5%の割合でおこっていますが、双子ではその確率がおよそ2倍に高くなります。
双子の片方の子に先天異常があってももう一人の子にもおこるとは限りませんが、二卵性よりも一卵性の方が頻度は高くなります。
一児死亡
おなかの中にいる双子の赤ちゃんのうち、片方の子だけが亡くなってしまうことがあります。
亡くなった赤ちゃんのへその緒はつながったままですので、血液が急激に移動してきて生存している赤ちゃんが重い貧血になることがあります。
亡くなった赤ちゃんを手術で取り出さなければ、もう一人の子に障害が残ったり亡くなってしまうこともあります。
低出生体重児
双子の赤ちゃんは、妊娠中から単胎児と比べて体が小さい傾向にあります。
低出生体重児とは2,500g未満の体重で生まれた赤ちゃんのことをいい、単胎児ではその割合は8.1%(2022年)ですが双子を含む多胎児では70.6%と、多くの双子の赤ちゃんが低出生体重児で生まれていることが分かります。(令和4年人口動態統計より)
双子は小さく生まれることが多いですが、3~6歳ごろには単胎児の成長に追いつく傾向が見られます。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群とは妊娠をきっかけに高血圧になることをいい、全妊婦さんの約10%に起こります。
双子妊娠では循環血液量が増えるためより妊娠高血圧症候群になりやすく、単胎妊娠と比べておよそ3倍になります。
重症化すると胎児発育不全や常位胎盤早期剥離などを引き起こしママもおなかの赤ちゃんも危険な状態になることがあります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは妊娠中に初めて指摘された糖代謝異常のことをいい、全妊婦さんの約8人に1人に起こります。
双子妊娠では妊娠糖尿病になる可能性が高くなり、新生児低血糖や早産、子宮内胎児死亡などのリスクが高くなります。
双子はいつわかる?
おなかの赤ちゃんが双子だと発覚するのはいつ頃になるのでしょうか?
妊娠は超音波検査(エコー検査)によって、赤ちゃんが入っている袋である胎嚢(たいのう)と心拍を確認することで診断します。
胎嚢が確認できるようになるのが妊娠5週頃で、心拍を確認できるようになるのが妊娠6週頃になります。
これは双子でも単胎でも同じですが、双子の場合は膜性によって胎嚢が2つだったり心拍が2つだったりしますので、それによって双子だと分かります。
双子の大半は胎嚢が2つある「二絨毛膜」ですので、胎嚢が確認できるようになる妊娠5週頃から分かります。
一卵性の双子の1%未満にあたる「一絨毛膜」の場合は、胎嚢が1つですので双子だと分かりづらいこともあります。
はじめは単胎だと思っていても、後から心拍が2つあると分かり双子だと判明することもあります。
双子は妊娠検査薬が陰性になる?
「双子の妊娠では妊娠検査薬に反応するホルモンが多すぎて逆に陰性になる?」という話があります。
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌される「hCG」というホルモンに反応しており、検出できる範囲があります。
確かに何らかの異常がありホルモンの分泌量が多すぎると陰性になる可能性はありますが、正しい時期に正しく使えていれば、双子だからといって陰性になることは考えにくいでしょう。
もし妊娠検査薬が陰性だったのにその後生理が始まらない場合は、医師にご相談なさってください。
なお、妊娠検査薬では双子かどうかまでは分かりませんので、婦人科で診断してもらう必要があります。
双子の分娩方法
「できればおなかを切りたくない、帝王切開は避けたい」と考える方は多いのではないでしょうか。
双子の出産では帝王切開になるというイメージがあるかもしれませんが、これは状況によって異なり帝王切開か経腟分娩か選択できる場合もあります。
双子を出産する際に経腟分娩を選択できるのは次のようなケースです。
【双子を経腟分娩できる条件】
- 先に出てくる子が頭位であること
- 妊娠週数が34週以降であること
- 両児の推定体重が1,500g以上であること
- 妊娠の経過が順調であること
妊娠週数や推定体重などは産院によって条件が異なりますが、母子ともに合併症などがなくコンディションが良い必要があります。
頭位とは頭を下にした状態のことです。
赤ちゃんの頭が上を向いた逆子であったり、極低出生体重児になりそうな小さい赤ちゃんなどの場合は、経腟分娩のリスクが高いため帝王切開になります。
赤ちゃんたちの向きや成長度合い、妊娠週数などを考慮して分娩様式を選択します。
経腟分娩でも途中で赤ちゃんの状態が悪くなったときや、お産が進まないときは帝王切開に切り替えることもあります。
また、これらの条件が揃っていても産院の診療体制や方針などによっては帝王切開とする場合もあります。
もしどちらかの分娩様式を強く希望する場合は、出産する産院を選ぶ際によく確認しておきましょう。
バニシングツインって?
双子を妊娠していると判明したのにもかかわらず、次の検診では一人しか確認できないことがあります。
これを「バニシングツイン」といい、妊娠のごく初期に双子の片方が亡くなり消えたように見える現象です。
亡くなってしまった子は母体へ吸収されてあたかも子宮内から消えた(バニシング)ように見えています。
バニシングツインではおなかに残っているもう一人の赤ちゃんに与える影響は非常に少なく、特別な治療は必要ありません。
とても不思議な現象ですが双子の妊娠では意外と多く起こっており、バニシングツインは双子妊娠の10~15%にみられ決して珍しいものではありません。
まとめ
双子は人種や不妊治療の有無などによりその頻度は変わってきますが、授かりもののため意図的に産み分けることはできません。
また、双子の妊娠ではバニシングツインという不思議な現象も一定数おこります。
原因は分かっておらず予防法も残念ながらありませんので、もしバニシングツインだと告げられてもご自身を責めず、もう一人の赤ちゃんに二人分の愛情を注いであげてくださいね。