妊娠中はアルコールはNGだとかカフェインは控えた方が良いなどと聞きますが、他にはどのような飲み物に気をつければよいのでしょうか?
毎日の摂取が習慣となる飲み物だからこそ、正しい知識を持って選びたいですよね。
このコラムでは、妊娠中の飲み物選びのポイントをわかりやすくご紹介しています。
妊娠中にOK・NG飲み物チェックリスト
妊娠中に「絶対飲んではダメ!」という飲み物は、アルコール以外は基本的にありません。
しかし、あまり摂らない方がよいもの、量を控えれば楽しめるものなどがあります。
【妊娠中の飲み物チェックリスト】
◎ | 麦茶、ルイボスティー、そば茶 |
◎ | 炭酸水(無糖) |
◎ | カフェインレスコーヒー |
○ | 野菜ジュース、100%果汁ジュース、ジュース |
○ | コーラ、サイダー、炭酸水(加糖) |
○ | スポーツドリンク |
○ | 牛乳、乳酸菌飲料 |
○ | ココア |
△ | コーヒー |
△ | 紅茶、ウーロン茶、緑茶、抹茶、ほうじ茶 |
△ | ハーブティー |
△ | エナジードリンク、栄養ドリンク |
△ | ノンアルコールビール |
△ | 甘酒 |
× | アルコール飲料 |
おすすめの飲み物
妊娠中はカフェインが入ってなく、糖分が少ない飲み物がおすすめです。
体内の循環血液量が増える妊娠中は、水分を意識して積極的に摂りましょう。
特に、つわりの時期は吐いてしまうことで水分が不足しがちなため、無理のない範囲でこまめに水分補給ができると良いですね。
OKなお茶(麦茶・ルイボスティー・そば茶)
お茶にはさまざまな種類がありますが、以下のリストに挙げたお茶はノンカフェインであるため、妊娠中の方でも安心して楽しむことができます。
【妊婦さんOKのノンカフェインのお茶】
- 麦茶
- ルイボスティー
- そば茶
麦茶やルイボスティーはコンビニでもペットボトル飲料がありますので、お手軽に飲むことができるという点でもおすすめです。
ルイボスティーはミネラルやポリフェノールが豊富でカフェインレスのため妊娠中でも安心して飲むことができるお茶として知られています。
しかし一方で、妊娠中の特に妊娠後期にポリフェノールを過剰摂取すると胎児の動脈管が閉じて心臓に影響を与えたり命にかかわることがあります。
ポリフェノールの妊娠中の明確な摂取基準はありませんが、「毎日500~1000mgのポリフェノールを摂っていた妊婦さんに過剰摂取の影響が疑われる症例が報告されている」とのことです。1)
ルイボスティーの500ml入りペットボトル飲料あたりポリフェノールは100mg含まれていますので(商品による差あり)、日常で飲む量としては問題ないと思います。
健康に良いとされているものも、何事も適量が大切ですね。
カフェインレスコーヒー
妊娠前からコーヒーが大好きだった人にとって、いきなり「コーヒーを控えなさい!」と言われたら酷かもしれませんね。
少し風味は違うかもしれませんが、カフェインレスコーヒーならカフェインの量を気にせず妊娠中でも安心して楽しむことができます。
紅茶もカフェインレスのものがあります。
色々な種類を試してみてお気に入りを探すのも良いかもしれませんね。
炭酸水(無糖)
「つわりがツラい時期でも炭酸水ならさっぱりとして飲めた」という妊婦さんは少なくありません。
最近は無糖の炭酸水もさまざまな種類があり、炭酸の強度の違いやレモンフレーバーなどの違いを楽しむことができます。
加糖の炭酸ジュースはカロリーオーバーや糖分過多になる心配がありますが、無糖なら気にせずに楽しめますね。
白湯
白湯は内臓が温められて血流を良くする効果があり、妊婦さんにもおすすめです。
水を意識して飲んでいる方も多いと思いますが、水だけをずっと飲むより気分転換にもなります。
レモン果汁を数滴入れたり、はちみつを少量混ぜるのもおすすめです。
妊娠中もOKな飲み物
基本の水分補給は水や水にレモンスライスを入れたもの、ノンカフェインのお茶などがおすすめですが、その他に妊娠前から飲んでいた嗜好飲料も適量を守れば楽しむことができます。
OKとは言っても、ガブガブ飲んでいると糖分過多などで健康に良くないのは妊娠前と同じです。
嗜好飲料はコップで1日1杯程度を目安量にしましょう。
ジュース
妊娠中にジュースを飲むことは基本的に問題ありませんが、糖分の多い飲み物は血糖値を乱高下させ血管に負担を与えます。
1日1杯程度にして、少量を楽しみましょう。
野菜ジュースや100%果汁ジュースなどは一見体に良さそうですが、固形のままの野菜や果物の代わりにはなりませんので、あくまで補助的なものととらえて量は摂り過ぎないようにしましょう。
コーラにはカフェインが含まれていますが、100ml当たり約10mg程度ですので、コップで1~2杯程度なら問題ないでしょう。
スポーツドリンク
つわりがひどいときは嘔吐によって水分やミネラルが失われてしまい、そのままの状態で水分だけを摂取しても吸収されにくくなります。
スポーツドリンクは失われた水分やミネラルを効率良く補給できますので、何も食べられないときなどにもおすすめです。
ただし、糖分や塩分が多く含まれているため、水代わりにがぶがぶ飲まないよう注意しましょう。
牛乳
胎児の体をつくったり授乳することなどで母体からカルシウムが失われるため、妊娠後期から授乳期にかけては非妊娠時より1日のカルシウム摂取推奨量が多く設定されています。
妊娠初期から中期にかけては特に付加量は設定されていないものの、日本人はもともとカルシウムの摂取量が不足しがちなため、妊娠中は積極的に摂りたい栄養素です。
牛乳なら毎日コップ1杯程度を飲むと良いでしょう。
なお、妊婦さんが乳製品の摂取を制限してもおなかの赤ちゃんへのアレルギー予防効果はないとされていますので、成分を気にして制限をする必要はありません。
ココア
ココアにもカフェインが含まれていますが、1杯あたり10~20mg程度と多くはないため飲みすぎなければ問題ありません。
カフェインの量だけを見れば1日10杯程度まで許容範囲ですが、加糖のものは糖分も含まれているため、ほどほどにしておきましょう。
妊娠中はNG!アルコール
妊娠中の飲酒は母子ともに大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
【妊娠中の飲酒が胎児に与える影響】
- 発育不全
- 顔面を中心とする形態異常
- 中枢神経系の障害
- 知的障害
- ADHD
- うつ病
- 依存症
上記のような、妊婦さんがアルコールを摂取したことによる胎児への一連の影響を「胎児性アルコール・スペクトラム障害」といいます。
妊娠初期の飲酒や大量の飲酒はよりリスクが高くなりますが、アルコール摂取量のしきい値はわかっておらず、少量でも影響が出る可能性はあります。
飲酒量や飲酒時期、摂取するお酒の種類に安全域はないと考えられていますので、妊娠が分かったらアルコールは厳禁です。
そのほか、妊娠高血圧症候群や早産、癒着胎盤などのリスクも高くなります。
妊娠中は注意したほうが良い飲み物
アルコール以外は基本的に妊娠中にNGな飲み物はありませんが、カフェインの多い飲み物や一部のハーブティー、糖分が多い飲み物などは量に注意して楽しみましょう。
カフェインの含有量は製品や浸出時間などによって変わり一概には言えないため、以下はあくまでも参考にしていただいて、詳しくは製品の成分表をご確認ください。
カフェイン飲料(コーヒー)
妊婦さんのカフェイン摂取は完全にNGではなく、コーヒーなら1日に2~3杯は許容量とされています。
妊娠中のカフェイン許容量に関しては国や機関によって異なる指針が出されていますが、おおむね200~300mg/日を上限とすることを推奨しています。2)
コーヒー1杯(150ml)に含まれるカフェイン量はおよそ80~90mgです。
妊娠中にカフェインを摂り過ぎると流産のほか、低出生体重児となり将来の健康リスクが高くなる可能性がありますので、適量を守りましょう。
控えるお茶(ウーロン茶、日本茶、紅茶)
ウーロン茶や紅茶のほか、煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶などの日本茶(緑茶)は比較的カフェイン含有量が多いため、コーヒー同様に飲む量に注意が必要です。
【お茶のカフェイン含有量(150ml当たり)】
玉露(緑茶):240mg
煎茶(緑茶):30mg
ほうじ茶:30mg
ウーロン茶:30mg
紅茶:45mg
玉露を日常的に飲むという方は少ないかもしれませんが、実はエナジードリンク以上のカフェインが含まれています。
コンビニなどではさまざまな緑茶のペットボトル飲料が売られていますが、濃いものでは1本あたり100mg程度のカフェインが含まれていることもあります。
同様に、ウーロン茶のカフェイン含有量は500mlペットボトル当たりに換算すると100mg程度、紅茶は150mg程度になります。
夏は特に喉が渇きますので500mlなんてあっという間に飲んでしまうこともあるのではないかと思います。
購入前に含有量を確認するようにしましょう。
ハーブティー
ハーブティーは香りが良くリラックス効果があり、ノンカフェインのものが多く、大量に飲まなければ基本的に心配はいりませんが、一部のハーブティーには子宮収縮作用のあるものもあります。
ジャスミン、レモングラス、マテ、ハトムギなど避けた方がよいものもありますので、購入前に専門家にご確認ください。
エナジードリンク、栄養ドリンク
エナジードリンクは眠気覚ましや元気を出したいときに飲むよう配合されていますので、基本的にカフェインが多く含まれています。
製品にもよりますが、1本あたり30mg~200mg程度のカフェイン含有量ですので、飲む場合は十分確認してください。
また、栄養ドリンクは製品によって成分が大きく異なりますので、飲みたい場合は薬剤師さんなどに相談した方がよいでしょう。
ノンアルコールビール
妊娠前にビールが大好きだった妊婦さんにとって、ノンアルコールビールはとてもありがたい存在ですね。
日本のノンアルコールビールは基本的にアルコール度数0.00%ですが、1%未満であればノンアルコールに分類されます。
「アルコール度数0.00%」と記載の商品であればアルコールを全く含んでいませんので飲んでOKです。
甘酒
甘酒は「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養価が高いため妊娠中も飲みたいところですが、アルコールを含むものと全く含まないものの2種類があります。
アルコールを含むものも1%未満なので度数は高くありませんが、妊娠中は避けた方がよいでしょう。
また、糖分が多く高カロリー・高糖質のため、妊娠していなくても1日1杯程度にとどめた方が良いとされています。
まとめ
妊娠初期はつわりの嘔吐で水分やミネラルが失われやすく、中期から後期にかけては成長する胎児へ栄養や酸素を送るために十分な水分が必要になります。
おなかが大きくなると尿管や腸が圧迫されて尿路感染症や便秘になりやすくなるため、予防のためにもしっかり水分を摂ることが大切です。
何か疑問や不安がある際は専門家に相談することを忘れず、心地よい妊娠生活をお過ごし下さい。
【参考】
1)ポリフェノール、妊娠後期の取りすぎ注意 土谷総合病院の森田医師 | 中国新聞デジタル