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新型出生前診断(NIPT)では何がわかるの?

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author:DNAサイエンス
可愛い赤ちゃんの寝顔

新型出生前診断(NIPT)は胎児の染色体異常について調べる検査のことですが、身近に妊娠・出産したことのある人がいない方にとっては聞きなれないかもしれません。

新型出生前診断は2011年に米国で開始され、2019年には世界で推定1,000万件行われ急速に拡大しています。

最近では新聞やネット記事などでその話題を見かけることもあり、気にはなっているけど詳しくはよく分からないという方もいらっしゃると思います。

ここでは、新型出生前診断の検査内容や結果の解釈の仕方、また倫理的な問題など、NIPTに関するさまざまな疑問についてご紹介しています。

新型出生前診断(NIPT)とは

新型出生前診断(NIPT)とは、妊婦さんの血液を分析することで、おなかの赤ちゃんの染色体異常について調べる検査のことです。

何が「新型」なのかというと、日本では2013年から開始した比較的新しい検査だからです。

それまでも、「出生前診断(しゅっせいぜんしんだん / しゅっしょうまえしんだん)」には「母体血清マーカー検査」や「コンバインド検査」などいくつかの種類がありました。

しかし、従来の検査は検査精度が高いとはいえず、結果が確率でしか分からなかったり、偽陽性率(本当は染色体異常がないのに、以上の可能性有との結果が出ること)が高いなどの状況がありました。

新型出生前診断は、正式には「無侵襲的出生前遺伝学的検査」、英語では”noninvasive prenatal testing”といい、頭文字をとって「NIPT(エヌ・アイ・ピー・ティー)」と略されます。

新型出生前診断は、従来の出生前診断と比べて以下のような特徴があります。

【新型出生前診断(NIPT)の特徴】

  • 感度が高い(陽性ならだいたい陽性)
  • 特異度が極めて高い(陰性ならほぼ陰性)
  • 妊娠初期の妊娠10週から検査ができる
  • 流産や死産のリスクがない

対象疾患によって違いますが検査精度が高く、ダウン症であれば検出率は99.1%~99.9%程度です。

また、妊婦さんの腕からの採血だけで検査ができるため、羊水検査のような流産や死産のリスクがないので安心して受けることができます。

一方で、以下のようなデメリットもあります。

【新型出生前診断(NIPT)のデメリット】

  • 検査精度は高いものの、妊婦さんの年齢によって的中率に差があり
  • 検査軽度は高いものの、確定検査ではない
  • すべての先天性の病気がわかるわけではない
  • 費用が高額

検査精度が高いとはいえ、確定検査ではないため、「陽性」の判定が出た場合羊水検査などの確定検査を受ける必要があります。

他の出生前診断と比べると検査精度は高いものの、妊婦さんの年齢によって的中率に差があり、若い方ほど偽陽性(陽性の結果だったが本当は病気ではなかった)の割合が多くなります。

新型出生前診断は胎児の染色体異常を調べるものですが、「染色体異常」は先天性の病気のうちの一つにすぎず、すべての病気や障がいが分かるわけではありません。

検査を受けて陰性だったとしても、生まれてから対象疾患以外の病気が見つかる可能性は残ります。

検査費用はおよそ15万円~25万円程度と高額で、保険は適用されません。

出生前診断については「コラム:出生前診断ってなに?」もご参考にしてください。

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検査のメカニズム

新型出生前診断(NIPT)の仕組み

新型出生前診断のNIPTは、妊婦さんから10ml~20mlの血液を採取し分析することで、お腹の赤ちゃんの染色体異常について調べることができます。

直接お腹の赤ちゃんのDNAを調べているわけではないのに、なぜそんなことが分かるのでしょうか?

妊婦さんの血液中には、お腹の赤ちゃんの胎盤に由来するDNAが存在します。

母体とお腹の赤ちゃんは胎盤でつながっているわけですが、胎盤は基本的にお腹の赤ちゃんの組織ですので、その胎盤に由来するDNAを分析することによって、お腹の赤ちゃんの染色体異常を調べることができます。

妊娠の経過とともに胎盤も成長することによって、妊婦さんの血液中の「胎児DNA濃度」もゆるやかに上昇しますので、まれにですが新型出生前診断では、「胎児DNA濃度」が足りず再検査になるケースがあります。

出生前診断の目的と倫理的問題

新型出生前診断を含むすべての出生前診断の目的は、「生まれる前に病気や障害を見つけることで、早期の治療や適切な出産環境の準備、出生後の育児環境の準備につなげるためのもの」です。

しかし、特に人工妊娠中絶が可能な妊娠の早い時期に実施をすることから、命の選別につながる恐れがある、障がいのある者の排除につながる恐れがあるとして、倫理的な問題と社会的な課題があります。

そもそも、日本では胎児の障がいを理由としての人工妊娠中絶は認められていません。

母体保護法では、妊婦の身体的または経済的な理由により母体の健康を著しく害する恐れがある場合にのみ人工妊娠中絶が認められています。

現在行われている中絶手術は、胎児の障がいを理由としてではなくこれらを理由として実施されています。

妊娠・出産については妊婦とそのパートナーが社会的な圧力を受けることなく、自由に意思決定をする権利があります。

それと同時に、障がいの有無にかかわらず、すべての国民は等しく生きる権利や福祉サービスを受ける権利があります。

出生前診断が、障がいのある胎児の生まれる権利や、障がいのある者の人権を脅かしたり排除につながるものであってはなりません。

障害者福祉の充実が図られてきているとはいえ、それを取り巻く環境はまだまだ十分ではありません。

出生前診断を受けることと、障がいのある者を排除することは全くイコールではなく、もしお腹の赤ちゃんに何らかの障がいがあると分かった場合、どのような福祉サービスや支援があるのかを知っておくことはとても重要です。

日本におけるNIPTを取り巻く問題

日本では新型出生前診断に関する法律はなく、日本産科婦人科学会が指針を出し、対象となる妊婦さんや検査を行う施設についての要件を定めています。

検査を行う施設については日本医学会など関係団体による認定制度があり、指針の要件を満たしている施設をいわゆる「認可施設」、それ以外を「無認可施設」と一般的に呼んでいます。

認可施設では、高齢妊娠であることや、胎児に染色体異常がある可能性のある妊婦さんを対象とするなどいくつかの条件があり、それらに該当しないが検査を受けたい妊婦さんは、必然的に無認可施設で受検をしています。

認可施設では検査前後での遺伝カウンセリングを必須とする一方で、無認可施設では任意での実施、もしくは実施しない場合が多いとされ、適切なサポートが行われていない可能性があると指摘されています。

しかし2021年8月現在では施設数と検査実施数ともに無認可施設が上回っていると推定されており、NIPTの受検を希望する妊婦さんが急激に増加していることから、厚生労働省による現状把握の調査が行われ、今後は認定制度に国が関与する方針となっています。

対象疾患

ダウン症の子ども
ダウン症の子ども

認可施設では次の染色体疾患を検査対象としています。

  • ダウン症候群(21トリソミー)
  • 18トリソミー
  • 13トリソミー

染色体疾患をもって生まれてくる赤ちゃんのうち、「ダウン症、18トリソミー、13トリソミー」の3つのトリソミーで約70%を占めています。

この3つのトリソミーは他の染色体疾患と比べて生まれることができる可能性が比較的高いことと、臨床的妥当性があり、検査結果の意味付けが陽性的中率などの情報に基づいてなされているためにNIPTの対象疾患となっています。

染色体疾患については「コラム:染色体とは?」もご参考にしてください。

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生まれてくる赤ちゃんに多い染色体異常についてはこちらの3つのコラムもご参考にしてください。

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NIPTの基本対象疾患以外にも技術的には検査が可能で、次の染色体異常を調べることができる無認可施設もあります。

  • 全染色体(性染色体を含む)の数的異常
  • 特定の微小欠失症

検査ができる項目は施設によって違いますので、詳しくはご検討中の施設のウェブサイトをご参考にしてください。

対象者

日本産科婦人科学会による指針では、NIPTの対象となる妊婦さんは次のように示されています。

  1. 高齢妊娠である(分娩予定日に35歳以上)
  2. 染色体異常のあるお子さんを妊娠もしくは出産したことがある
  3. 他の出生前診断で胎児が染色体の数の異常(ダウン症、18トリソミー、13トリソミー)をもつ可能性を指摘された、もしくはご夫婦のどちらかが上記の染色体異常に関わる転座保因者である

一方で、無認可施設ではほとんどの場合上記のような縛りは無く、検査可能な妊娠週数であれば検査を受けることができます。

検査可能な妊娠週数は検査機関によって多少異なりますが、妊娠9週~10週頃から妊娠15週程度までの間で行われます。

妊娠15週を過ぎても検査は可能ですが、万が一NIPTの結果が陽性だった場合は羊水検査を受ける必要があるため、NIPTの検査結果が出るまでの期間と羊水検査の結果が出るまでの期間を考慮する必要があります。

結果の解釈の仕方

新型出生前診断(NIPT)の検査結果は、「陽性」「陰性」もしくはまれにですが「判定保留」という形で出されます。

「陽性」との言葉から、疾患があると思ってしまいそうですがそうではありません。

新型出生前診断は検査精度が高いのが特徴の一つですが、あくまで非確定検査であり、「陽性」というのは「対象の染色体異常がある可能性がかなり高い」という意味です。

それならはじめから確定検査を受ければよいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、確定検査である羊水検査や絨毛検査は0.2~2%程度の割合で流産や胎児死亡が起こる可能性があり、検査ができる時期も新型出生前診断ほどは早くないため、胎児に異常がある可能性が高い方を除いては、まずは新型出生前診断を含む非確定検査を受ける方が増えています。

陽性

検査結果が陽性の場合、対象の染色体異常がある可能性が高いため、基本的には羊水検査などの確定検査を受けます。

陽性の判定が出たときに実際どのくらいの確率で染色体異常があるかは、対象の疾患と母体年齢によって変わってきます。

母体年齢が高くなるほど胎児の染色体異常がある確率も高くなります。

また、検査機関によっても検査精度が異なります。

例えば、35歳の妊婦さんが「ダウン症(21トリソミー)が陽性」との結果だった場合、胎児が本当にダウン症である確率は84%程度です。

妊婦さんの年齢が若いとこの確率はもっと低くなります。

いずれにしても、本当にそうか?を知るためには羊水検査などの確定検査を受ける必要があります。

陰性

検査結果が陰性の場合、「対象の染色体異常がある可能性は極めて低い」といえます。

「極めて低い」というのは、例えば35歳の妊婦さんが「ダウン症(21トリソミー)が陰性」との結果だった場合、99.99%の確率で胎児はダウン症ではありません。

100%ではなく、1万人に1人くらいの割合で偽陰性(陰性の判定だったのに実際は疾患があった)がありますが、ほぼ大丈夫だろうと言えます。

新型出生前診断(NIPT)の検査結果が陰性だった場合、対象となる疾患についてはひとまずは安心できますが、対象ではないその他の先天性疾患については分かりません。

判定保留

ごくまれにですが、検査結果が出せず「判定保留」となることがあります。

判定保留となるのは0.3~1%程度とされています。

判定保留の原因としては、母体血中の胎児DNA濃度が低いことや、母体血を解析しているため胎児の染色体異常の評価が出来ないことなどが考えられます。

母体血中の胎児DNA濃度が低い原因としては、母体の高体重や自己免疫疾患、胎児が18トリソミーや13トリソミーであることが考えられます。(胎児が18トリソミーや13トリソミーだった場合、胎児DNA濃度が低くなるため)

新型出生前診断では母体血を用いて検査を行うため母体の疾患に影響を受けることがあります。

母体に染色体異常やがんなどの腫瘍性疾患があると胎児の染色体異常が評価できないことがあります。

判定保留となった場合、母体血中の胎児DNA濃度は妊娠の経過とともに増加するため再採血をすることによって結果が出せることもあります。

検査精度とは?感度と特異度

検査精度のイメージ

新型出生前診断の検査精度は、「感度」と「特異度」という言葉が使われます。

さらに、「陽性的中率」と「陰性的中率」という言葉も出てきます。

新型コロナウイルス感染症のPCR検査で聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

例えばダウン症を例に挙げます。

感度とは、胎児にダウン症がある妊婦さんに検査をおこなって「陽性」となる割合のことです。

ダウン症の感度が99%の検査の場合、胎児にダウン症がある100人の妊婦さんに検査を行った結果、1人は陰性と判定されることになります。

一方で、「胎児にダウン症がある妊婦さんもない妊婦さんもすべて含み検査を行ったところ、100人の妊婦さんが陽性との結果だった。そのうちの80人の妊婦さんのお腹の赤ちゃんに実際にダウン症があった」場合、陽性的中率が80%ということになります。

ややこしいですが、

感度とは、疾患のある人が陽性となる割合

陽性的中率とは、検査で陽性となった人に実際に疾患がある割合

のことです。

新型出生前診断(NIPT)における感度の説明
新型出生前診断(NIPT)における陽性的中率の説明

陰性の場合も同様です。

胎児にダウン症がない妊婦さんに検査をおこなって「陰性」となる割合のことを「特異度」といいます。

ダウン症の特異度が99.9%だった場合、胎児にダウン症がない1,000人の妊婦さんに検査を行った結果、1人は陽性と判定されることになります。

一方で、「胎児にダウン症がある妊婦さんもない妊婦さんもすべて含み検査を行ったところ、1,000人の妊婦さんが陰性との結果だった。そのうちの1人の妊婦さんのお腹の赤ちゃんには実はダウン症があった」場合、陰性的中率は99.9%ということになります。

検査の陽性的中率が高いと、陽性と判定された場合に実際にその疾患がある可能性が高いといえます。

逆に、陰性的中率が高いと、陰性と判定された場合はその疾患がない可能性が高いといえます。

費用

新型出生前診断の費用は検査をする施設によって異なりますが、認可施設では遺伝カウンセリングなど諸々の費用を含めて20万~25万円程度が一般的なようです。

無認可施設では検査の内容を選べることが多くメニューによって費用は異なりますが、10万~20万円程度のようです。

認可施設でも無認可施設でも、もし陽性となった場合の羊水検査費用は基本的に追加でかかりません。

海外におけるNIPTの状況

色々な人種の子どもたち

日本ではNIPTに対する公的な補助制度はなく自費診療となりますが、イギリスやドイツ、イタリアやスウェーデンなどでは公的補助制度があり、検査項目や費用、対象者などが国や地域によって異なります。

例えばイギリスでは、全ての妊婦さんに対しNIPTを含む出生前スクリーニングが提供されています。

もちろん検査を受けないこともできます。

1次スクリーニング検査でリスクが高いと判断された妊婦さんは、NIPTを無料で受けることができます。

新型出生前診断(NIPT)を検討する際に考えること

NIPTを受ける動機は人それぞれです。

子どもを産み育てることについては誰しも何らかの不安や心配があり悩まれていることでしょうが、あなたは具体的には何が不安なのでしょうか。

NIPTを受検する理由としては、次のような内容がよく挙げられます。

  • 高年齢での妊娠である
  • 親族などに障がいのある者がいる
  • 過去に流産を経験している
  • 障がいのある子どもを育てる精神力と経済力に不安がある
  • 知人や親族から受検を強く勧められた
  • 医師に勧められた
  • 検査を受けて安心したかった

一方で、逆に検査を受けて不安になったという声もあります。

NIPTを検討する際に考えてほしいことは

  • 何が不安で検査を受けたいのか?
  • 検査を受けることでその不安は解消されるのか?

ということをあなたとあなたのパートナーで整理してみてください。

それでも、悩んでいる間にお腹の赤ちゃんはどんどん成長します。

検査に迷うときは、遺伝医学の専門家である臨床遺伝専門医などによる「遺伝カウンセリング」で相談してみてください。

検査に関することや対象疾患についてなど、あなたの不安に思うことについて価値観を最大限尊重しつつ可能な限りサポートしてくれます。

遺伝カウンセリングについては「コラム:遺伝カウンセリングとは?」もご参考にしてください。

遺伝カウンセリング
遺伝カウンセリングとは?出生前診断を考えたときに
出生前診断を受けるか迷うとき、遺伝カウンセリングというものがあります。 出生前診断(しゅっしょうまえしんだん・…
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最終的な決断はあなたとあなたのパートナーがしなければなりませんが、納得のいく選択・決断ができるということが大切です。

まとめ

幸せそうな家族

いかがでしたでしょうか。

新型出生前診断は母体からの採血のみで検査ができるため検査自体は簡単に受けることができます。

しかし、検査を受けるということは時に重い決断をしなければならず、安心したくて受けた検査なのに思わぬ結果に戸惑ってしまうことも考えられます。

出生前診断を受けることは、個人を取り巻く環境や価値観・人生観に基づくためこれという正解はありません。

あなたが納得のいく選択ができることを願っています。

【参考】

NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書 令和3(2021)年 5 月 厚生科学審議会科学技術部(外部サイトへ移動します)


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