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猫鳴き症候群(5pマイナス症候群)の特徴と症状

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author:DNAサイエンス
猫鳴き症候群の染色体

猫鳴き症候群とは染色体異常の一種で、赤ちゃん期の泣き声が猫の鳴き声に似ていることからその名がつけられました。

「クリ・デュ・チャット症候群」や、後述するその原因から「5pマイナス症候群」とも呼ばれます。

猫鳴き症候群の症状としては特徴的な泣き声のほか、顔貌の特徴(例えば、小さな頭、広い目の間隔)、身体的および精神発達の遅れ(知的障害)などがあり、影響は生涯にわたって子どもの健康と発達に及びます。

染色体異常そのものを治療することは出来ず、長期にわたる継続的な治療やケアが必要なことから、猫鳴き症候群は小児慢性特定疾病に指定されています。

猫鳴き症候群の特徴と症状

【猫鳴き症候群の特徴と主な症状】

  • 新生児期の高く特異的な泣き声
  • 小頭症
  • 成長障害
  • 筋緊張低下
  • 運動発達の遅れ
  • 精神発達遅滞(精神障害)

主な症状としては、1)新生児期から乳児期の甲高い泣き声、2)小頭症、3)成長障害があります。

猫の鳴き声のような泣き声

新生児期から乳児期にかけての赤ちゃんの頃は猫のような、甲高い独特の泣き声をあげます。

顔貌

小頭症

【顔立ちの特徴】

  • 小頭症
  • 小顎症
  • 丸顔
  • 目の間隔が離れている
  • 内眼角贅皮
  • 耳介低位

小頭症とは頭が異常に小さい状態のことで、多くの場合は脳の発達が不完全で小さいために起こります。

頭の小ささは思春期から成人期にかけてより顕著になります。

小顎症とはあごが極端に後退した状態で、遺伝性疾患でしばしば見られます。

哺乳の弱さや歯並びの悪さなどにもつながります。

内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)とは目がしらを皮膚が覆っている状態で、5pマイナス症候群のほかダウン症の特徴の一つとして挙げられます。蒙古ひだとも呼ばれます。

内眼角贅皮、蒙古ひだ

耳介低位(じかいていい)は耳の位置が通常より下にある状態で、遺伝性疾患でしばしば見られます。

成長障害

胎児期から発育不全があり、多くは2,500g未満の低出生体重児として生まれてきます。

胎児発育不全にはさまざまな要因がありますが、胎児の染色体異常においてよく見られます。

生まれた後も哺乳障害などのため、同年代の子と比べて体が小さく低身長、低体重です。

筋緊張低下

筋緊張低下とは、筋肉の張りが弱く筋収縮が起こりにくい状態です。

一般の赤ちゃんと比べて体がふにゃふにゃしていてだらんとした感じがあり、頭を持ち上げたり支えたりするのが難しいことがあります。

そのほか哺乳の力が弱かったり、呼吸の力が弱く呼吸困難になりやすいなどの弊害があります。

運動発達の遅れ

筋緊張低下によって全身の筋肉が柔らかいため、はいはいや座る、立つといった運動機能の発達が遅れます。

転びやすいため注意が必要です。

精神発達遅滞(知的障害)

軽度から重度にわたる精神発達の遅れが見られ、精神発達の遅れがある人のうち、約350人に1人がこの猫鳴き症候群であるとされています。

言葉の遅れや学習障害があり、コミュニケーションが苦手なことが多く、多動やこだわりといった行動障害が見られることもあります。

合併症

【猫鳴き症候群の合併症】

  • 先天性心疾患
  • 呼吸困難
  • 消化器系の問題
  • 泌尿生殖器の問題
  • 筋骨格の問題
  • 視覚、聴覚の問題
  • 歯科系の問題
  • 難治性てんかん

すべての合併症が起こるわけではなくその程度にも個人差がありますが、上記のようにたくさんの合併症を抱える可能性があります。

筋骨格の問題として、背骨が左右に曲がる脊柱側弯症などがあります。

脊柱側弯症

斜視や白内障などの視覚障害が起こりやすいほか、中耳炎を繰り返して難聴になりやすいため定期的な検診が欠かせません。

また、免疫が弱いため感染症に対する抵抗力が低く、一般的な病気への感染リスクが高くなります。

治療方法

猫鳴き症候群そのものに対する治療法はなく、症状や合併症に対する治療を行っていきます。

心臓疾患や呼吸器系の問題など、臓器の問題については必要に応じて手術を行います。

新生児期は呼吸障害や成長障害がよくみられるため、呼吸困難がある場合は人工呼吸器を、哺乳障害や成長障害には経管栄養を行って成長を促します。

成長するにつれて言語発達の遅れや運動の遅れが出てくるため、言語療法、作業療法、理学療法などによって発達支援を行っていきます。

そのほか歯科、眼科、耳鼻科については定期健診によって早期治療をすることが大切です。

てんかんに対しては必要に応じて薬物療法を行います。

原因

猫鳴き症候群の染色体

猫鳴き症候群は染色体異常の一つです。

ヒトの染色体は23対(46本)あり、そのうち22対の常染色体は長いものから順番に1~22番の番号が割り振られています。

猫鳴き症候群は、5番目の染色体の特定の一部分が欠けることによって起こります。

猫鳴き症候群の染色体の変化はいくつかのタイプがありますが、約85%は遺伝ではなく偶然に起こります。

約12%は両親のどちらかが保因者(染色体の変化はあるものの本人に症状はない)で、遺伝によって起こります。

正常な細胞と異常のある細胞の両方が混ざった状態を「モザイク型」といい、約5%はこのタイプで、症状が軽くなる傾向にあります。

寿命

生命の維持にかかわる重篤な合併症がなければ生命予後は良好です。

心臓疾患や重度の呼吸障害など特定の合併症があると寿命に影響を与える可能性がありますが、近年の医学の進歩により予後は改善しており、合併症の管理と適切な治療が重要になります。

猫鳴き症候群の子が生まれる確率

出生頻度は15,000~50,000人に1人と推定されています。

遺伝するのか

染色体、遺伝子の突然変異

染色体異常は遺伝するのではと思われるかもしれませんが、そのほとんどは遺伝ではなく突然変異によって偶然に起こります。

猫鳴き症候群もその多くは両親や環境のせいではなく、誰にでも起こり得ます。

ただし両親に猫鳴き症候群の症状がなくても、原因である染色体の型を持っている保因者である場合は遺伝する可能性があります。

検査

猫鳴き症候群の診断は染色体検査によって行われ、この検査は生まれる前と出生後のどちらでも可能です。

染色体異常は生まれつきのものなので後天的になることはありませんが、症状が軽い場合は新生児期には猫鳴き症候群だと気づかれず、成長とともに発達の遅れなどによって何らかの異常を疑い検査をして、はじめてわかることもあります。

出生前診断

新型出生前診断(NIPT)の仕組み

妊娠中に胎児の病気や障害について調べる検査を「出生前診断」といい、広義には妊婦健診で行うエコー検査も含まれます。

猫鳴き症候群を調べるために出生前診断を受けることはほとんどないと思いますが、ダウン症などを調べる「NIPT(新型出生前診断)」を受けた結果、思わず発覚することがあります。

NIPTを実施している施設では基本的に猫鳴き症候群は調べませんが、一部の「微小欠失症検査」を行っている検査施設では検査対象疾患となっています。

DNAサイエンスでは猫鳴き症候群(5p欠失症候群)も検査対象疾患です。

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出生後の検査

生まれたときに猫の鳴き声のような啼泣(泣き声)、小頭症、成長障害、筋緊張の低下、特徴的な顔立ちなどがあると猫鳴き症候群を疑い染色体検査を行います。

出生前診断で猫鳴き症候群と分かったら?

出生前診断でダウン症などの染色体異常が発覚した場合、中絶を選択する人が多いことについて議論がつきませんが、猫鳴き症候群は基本的には命にかかわる重篤な症状があるわけではありません。

出生前診断では生まれた後の障害の程度までは分かりませんが、生まれる前に猫鳴き症候群が明らかになることで適切な分娩環境を整えたり、出生後に起こり得る問題について早期に計画を立てることが可能になります。

猫鳴き症候群では精神発達の遅れや運動の遅れがある可能性がありますが、それは猫鳴き症候群に限ったことではありませんし、誰しも生きていれば後天的に病気や障害を負うリスクと常に隣り合わせです。

しかし長期的なケアが必要になることで、将来に渡る不安は抱くことと思います。

染色体の疾患については、遺伝医学に関する専門家である「臨床遺伝専門医」や「遺伝カウンセラー」による遺伝カウンセリングを受けて、現状を正しく理解し取れる選択肢を知ったうえで自己決定することが大切です。

ご参考にしてください。

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まとめ

並んで歩く夫婦の後ろ姿

猫鳴き症候群は赤ちゃん期の鳴き声が猫の泣き声に似ているという特徴のほか、運動機能や精神発達の遅れなど、健康と成長に多くの影響があります。

原因そのものに対する治療法はありませんが、早くから治療や健診や各リハビリを行うことで自分でできることの幅が広がります。

生まれる前の出生前診断で猫鳴き症候群だと分かった場合、どのような疾患か分からず不安になるでしょうが、早い段階で発覚したからこそできる対応もあります。


【参考文献】

5p欠失症候群(指定難病199)/難病情報センター


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