妊娠すると妊婦さんが定期的に受ける検査が妊婦健診ですが、妊娠期間10か月間のうちどれくらいの頻度で受けるものなのでしょうか?
今回は妊婦健診のスケジュールとその内容、費用などについてご紹介しています。
妊婦健診とは
妊婦健診とは、妊娠中に妊婦さんやおなかの赤ちゃんの健康状態などを定期的に調べる検査のことです。
胎児の成長など妊娠の経過が順調か確認することはもちろんのこと、自覚症状のない隠れた病気やトラブルの早期発見にも役立ちます。
定期的に健診を行うことで、流産や早産の兆候をいち早く発見でき早めの対応が可能になります。
また安心して妊娠生活や出産に臨めるよう、医師や助産師や栄養士など専門家の指導を受けたり相談することができます。
特に気がかりなことがなかったとしても、妊娠中はなにがあるかわかりません。
安心して妊娠期間中を過ごすためにも、定期的に健診を受けることが大切です。
妊娠したかもと思ったら
妊娠の初期症状が出るのは、次の生理予定日前後からです。
生理が遅れていて、ムカムカする、吐き気がある、おりものの量が増えた、なんとなくだるいなどの症状がある場合、妊娠している可能性があります。
上記のような症状がある場合は、次の生理予定日の1週間後くらいに妊娠検査薬で調べてみましょう。
妊娠検査薬で陽性反応(妊娠の可能性あり)と出たら、婦人科を受診して本当に妊娠しているか?正常な妊娠か?を診断します。
病院で妊娠が確定したら、お住まいの地域の市区町村に「妊娠届」を提出します。
妊娠届を提出することによって、自治体からのさまざまなサポートを受けることができます。
提出期限は特には決まっていませんが、厚生労働省では妊娠11週(妊娠3か月)までの届け出を推奨しています。
お住まいの地域の市区町村に妊娠届を提出すると、妊婦健診の助成が受けられる受診券や、母子手帳の交付、保健師さんなどによる相談会や、妊娠や出産・育児に関する情報提供を受けることができます。
妊娠届を提出していないと妊婦健診の費用の助成を受けることができませんので、妊娠が確定したらできるだけ速やかに届け出をしましょう。
【妊娠発覚から妊婦健診までの流れ】
- 妊娠したかも?と思う
- 妊娠検査薬で陽性を確認する
- 病院で妊娠が確定する
- 妊娠届を自治体へ提出する
- 妊婦健診の費用補助のための受診券をもらう
妊婦健診のスケジュールと内容
妊婦健診は妊娠が確定してから出産まで約14回受けることが基本で、妊娠週数が進むにつれてその頻度は増えていきます。
【妊婦健診の基本的な回数】
- 妊娠23週未満 4週間に1回 →計4回
- 妊娠24~35週 2週間に1回 →計6回
- 妊娠36週~出産 1週間に1回 →計4回
妊娠初期にはそれほど大きな変化はないため頻度は多くありませんが、妊娠中期にはおなかの赤ちゃんがどんどん大きくなるため健診の間隔も短くなり、妊娠後期の中でも出産間近になると1週間に1回の間隔になり出産に備えます。
健診の内容は毎回共通して行う基本的な項目と、必要に応じて行う医学的検査があります。
【毎回共通して行う基本的な内容】
- 健康状態の把握
- 検査計測
- 保健指導
*健康状態の把握*
現在の状態を知るために、妊娠週数に応じた問診や診察などを行います。
*検査計測*
妊婦さんの健康状態と胎児の発育状態を確認するための計測を行います。
検査例)
- 体重
- 血圧
- 腹囲
- 子宮底長
- 尿検査(尿タンパク、尿糖)
- 浮腫
*保健指導*
特にはじめての妊娠生活の場合は分からないことだらけで不安が募りますね。
保健指導では妊娠期間の食事や過ごし方などの生活に関するアドバイスや、妊娠・出産・育児に対する不安や悩みの相談ができます。
【必要に応じて行う医学的検査の内容】
- 血液検査
- 超音波検査
- 子宮頸がん検診
- B群溶血性レンサ球菌
- 性器クラミジア
- 感染症検査(抗原抗体検査)
「必要に応じて行う医学的検査」は妊娠週数によって必要な検査を適宜行っていきます。
上記はあくまでも厚生労働省が推奨する標準的な内容ですので、医療機関の方針やママやおなかの赤ちゃんの健康状態などに応じて必要な検査を追加で実施することもあります。
妊娠確定の初回健診
「妊娠したかも?」と思ったら婦人科で正常な妊娠かどうかの検査を受けましょう。
この妊娠を確定させる初回健診は妊婦健診の14回には含まれず自費診療となりますので、余裕をもって1~2万円程度は用意しておきましょう。
【初回健診の主な内容】
- 問診
- 体重測定
- 尿検査
- 血圧
- 内診(触診)
- 経腟エコーによる超音波検査
*問診*
問診では次の内容を聞かれますのであらかじめ確認しておくと記入がスムーズです。
【問診で聞かれやすいこと】
- 最終月経開始日
- 生理周期
- 初潮の年齢
- 使用中の薬
- 自分と家族の持病、手術歴
- 流産、死産、人工妊娠中絶の有無とその妊娠週数
- 不妊治療歴
*内診*
・内診はショーツを脱いで内診台に足を広げてのり、医師が膣の中に指を入れて子宮や膣の状態を確認します。
*超音波検査*
経腟(けいちつ)エコー検査とは、細い棒状の検査器具を膣から挿入して画像から正常な妊娠かどうかを判断していくものです。
妊娠初期~23週
妊娠が確定してから妊娠中期の妊娠23週までは、4週間に1回の頻度で合計4回の健診があります。
基本検査に加えて、子宮頸がんや各種抗原抗体検査などを行います。
【血液検査(初回に1回)】
- 血液型
- 血算(白血球数、赤血球数、血小板数)
- 血糖
- HIV抗体
- 梅毒血清反応
- 風疹ウイルス抗体
- B型、C型肝炎
超音波検査はこの期間内に2回ほど行います。
妊娠の早い段階ではまだおなかの赤ちゃんが小さいため膣からエコー検査をしますが、妊娠12週ごろからはお腹の上からのエコー検査ができるようになります。
そのほか、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)抗体検査と性器クラミジアの検査を妊娠30週までに行います。
妊娠24週~35週
妊娠中期の妊娠24週から妊娠後期の妊娠35週までは、2週間に1回の頻度で合計6回の健診があります。
基本検査に加えて、血液検査と超音波検査を期間内に各1回行います。
B群溶血性レンサ球菌検査を1回行います。
妊娠24週は妊娠7か月にあたり、ママの体重は妊娠前より4~5kg程度増えているはずです。
おなかの赤ちゃんは見た目は新生児と変わらない程度にまで成長しており、おなかの中でくるくる動き回ります。
おなかが張りやすいため、無理をしないように過ごしましょう。
妊娠36週~出産
妊娠後期の妊娠36週から出産までは、1週間に1回の頻度で合計4回の健診があります。
基本検査に加えて、血液検査と超音波検査を期間内に各1回行います。
妊娠37週から41週までに出産することを「正期産」といい、一番母子ともにリスクが少ない期間とされており、分娩の95%以上が正期産だといわれていますので、いつ生まれてもおかしくない時期です。
おなかの赤ちゃんの向きや状態、胎盤の位置などを確認してお産に備えます。
検査費用
妊娠は病気ではありませんので、基本的に妊娠に関わる費用は保険適用外で自己負担になります。
ですが、国や自治体によるサポート制度がさまざまあり、妊婦健診についても費用の一部または全部が無料になります。
妊娠届をお住まいの自治体に提出すると全14回分の妊婦健診の受診券がもらえます。
妊婦健診を自費で払うと7~14万円程度になりますのでこれは大きいですね。
ただし、超音波検査の助成回数やその他検査項目の適用範囲は自治体によって異なります。
また、基本の健診以外に妊娠中のトラブルなどにより特別な検査や治療をした場合は実費になります。
妊婦健診は受けなくてもよい?
妊婦健診を受けないとどうなるのでしょうか?
お産には妊婦さんや胎児にとって少なからずリスクが伴います。
もし胎盤が子宮の出口をふさいでしまっている「前置胎盤」だった場合や、おなかの赤ちゃんにへその緒が絡まっている「臍帯巻絡(さいたいけんらく)」だった場合などは、妊娠の経過によっては予定帝王切開となります。
妊婦健診を受けていないと赤ちゃんが順調に育っているのか?妊婦さんに妊娠高血圧などのトラブルはないか?お産にあたって注意しなければならないことはないか?などが分かりません。
そのような状態で陣痛がはじまっていきなり病院へ行っても、どのようなリスクがあるか分からないため受け入れてくれる病院は限られてきます。
妊婦健診を受けていないとお産のための病院が見つからないかもしれないこともそうですが、ご自身やおなかの赤ちゃんの健康のためにも必ず定期的に受けましょう。
妊婦健診の服装
妊婦健診へはどのような服装で行くのがベストでしょうか?
【妊婦健診に適した服装】
- トップス:前開き、袖がまくりやすい
- ボトムス:スカート
- メイク:薄め
トップスは診察を受けやすいよう前開きで、採血のために袖がまくりやすいものが便利です。
内診は下着をとって内診台に足を開いた状態で受けますので、スカートかロングスカートがおすすめです。
ワンピースやぴたっとして脱ぎにくい服装、補整下着などは避けましょう。
また顔色やくちびるの色などから健康状態をチェックしますので薄めのメイクで、できればネイルも避けたほうがよいでしょう。
妊婦健診で見つかる可能性があるトラブル
妊婦健診では妊娠中のさまざまな異常や病気がみつかる可能性があります。
【妊婦健診で見つかる可能性があるトラブル】
- 切迫早産
- 胎児の見た目の異常
- 感染症
- 子宮のトラブル
- 妊娠糖尿病
- 妊娠高血圧症候群
- 前置胎盤
*切迫早産*
切迫早産とはまだ赤ちゃんが出てきてはいないが早産の一歩手前の状態のことをいい、子宮口が開きかけている場合などに診断されます。
治療としては安静にすることですが、状況によっては帝王切開となります。
*胎児の見た目の異常*
妊婦健診で行われる超音波検査(エコー検査)では、おなかの赤ちゃんの発育が順調か、胎盤や羊水に問題がないか、内臓や四肢などに見た目で分かる異常や奇形がないかなどを調べます。
*感染症*
妊娠をすると免疫力が下がるため、感染症にかかると重症化しやすく胎児にも影響する可能性があります。
梅毒やクラミジアなどの性感染症のほか風疹やB群溶血性レンサ球菌などについて検査を行います。
*子宮のトラブル*
子宮のトラブルは自覚症状があまりないため気づかれにくく、妊婦健診で初めて分かることが多いようです。
子宮筋腫や卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)など、大きさによっては経過観察となり特に問題ないこともありますが、進行した子宮頸がんなどは妊娠が継続できないこともあります。
*妊娠糖尿病*
妊娠糖尿病とは、糖尿病ほどではない糖代謝異常が妊娠中におこった状態のことをいいます。
基本的に自覚症状はありませんが、悪化すると流産や早産の原因となったり、生まれた赤ちゃんの将来の健康にまで影響する可能性があります。
*妊娠高血圧症候群*
妊娠高血圧症候群とは妊娠をきっかけに高血圧になった状態のことをいい、妊婦さんの約10人に1人の割合でおこっています。
初期は自覚症状はありませんが、悪化するとママの脳出血や胎児発育不全など母子ともに危険な状態になる可能性があります。
*前置胎盤*
前置胎盤(ぜんちたいばん)とは、子宮の出口の一部または全部をふさぐような形で胎盤ができてしまった状態のことをいいます。
妊娠初期の検査で前置胎盤の疑いがあると言われても、出産前までにその90%以上は自然に解消されますが、状況に応じて帝王切開となります。
まとめ
妊婦健診は、妊婦さんご自身の健康のためにもおなかの赤ちゃんの健やかな成長のためにもとても大切な検査です。
はじめての妊娠・出産は特に分からないことだらけで誰しもが不安になるものです。
気になることがあれば些細なことでも遠慮なく相談して、心穏やかに妊娠生活が送れるといいですね。