妊娠の安定期ということばをよく耳にしますが、いつからのことを妊娠の安定期と呼ぶのでしょうか?
特につわりがツラい時期には安定期が待ち遠しく感じるのではないかと思います。
ここでは妊娠安定期にみられる変化や注意すること、過ごし方のポイントなどをご紹介しています。
安定期はいつからいつまで?
「安定期」とは妊娠5ヶ月(妊娠16週)頃のことをよび、医学用語ではありませんが一般的に使われています。
妊娠5ヶ月になると赤ちゃんの生命維持と成長に重要な役割を担っている胎盤が完成し、初期流産のリスクが減ります。
ママもつわりが落ち着いてくる人が多く、母子ともに妊娠期間中では最も安定した状態といえます。
安定期は専門用語ではありませんのでいつからいつまでという定義はありませんが、妊娠5ヶ月~妊娠7ヶ月頃とすることが多いようです。
ただし妊娠中の体調の変化は人それぞれですので、安定期というのはあくまでも目安と考えて、ご自身の体調と妊婦健診の結果などを考慮して行動しましょう。
安定期に見られるママの変化
安定期を迎える妊娠5ヶ月頃になると、胎盤が完成し心身共に安定しやすくなります。
おなかの赤ちゃんの成長とともに、ママの体にもさまざまな変化が見られます。
【安定期に見られるママの変化】
- 胎盤が完成する
- 流産のリスクが減る
- つわりがおさまる
- おなかが大きくなりはじめる
- 胎動を感じるようになる
- バストがサイズアップ
胎盤が完成する
胎盤はへその緒でおなかの赤ちゃんとつながっており、まだ赤ちゃんが自力ではできない栄養補給や老廃物の排出、呼吸などのために必要な成分の受け渡し場所として機能しています。
そのほかママの血液を介して赤ちゃんに有害な物質が届かないようフィルターの役目も果たしています。
胎盤は妊娠後に作られ始め、赤ちゃんとともに成長し完成するのが安定期頃です。
流産のリスクが減る
流産してしまうことは決して珍しいことではなく、医療機関で妊娠を確認された女性のうち、約15%が流産しています。
そのなかでも、特に妊娠12週未満の妊娠初期におこる初期流産が、8割以上を占めています。
妊娠12週以降も流産になる可能性はありますが、そのリスクはぐんと減ります。
つわりがおさまる
つわりの程度や期間は人によって異なりますが、妊娠8~10週頃につらさのピークを迎え、多くの人が落ち着いてくるのは妊娠15~16週頃です。
つわりだけでなく、基礎体温が下がり始めることで熱っぽさや体のだるさが治まる人が多いのもこの時期です。
おなかが大きくなりはじめる
妊娠5ヶ月になると子宮は大人の頭くらいの大きさになり、ピタッとした服を着ているとお腹が目立ち始めますが、一見すると分からないかもしれません。
皮下脂肪もついてきて、体全体がふっくらと丸みのある体つきになります。
胎動を感じるようになる
多くのママが胎動を感じ始めるのは妊娠18~20週頃ですが、早いと妊娠16週ぐらいから感じるママもいます。
胎動の感じ方の差は、ママが痩せていて皮下脂肪が少ない、羊水が少なめ、日中の活動量が少ないなどの影響を受けます。
バストがサイズアップ
乳腺が発達するためバストが大きくなります。
マタニティ用のブラジャーがありますので、サイズのあったものを選びましょう。
母乳のようなものが出ることがありますので、清潔な布でふき取るようにしましょう。
安定期に見られる赤ちゃんの変化
安定期に入る頃には、おなかの赤ちゃんの体重はりんご1個分程度の約250g、身長約25cmになり、手足が完成し人間らしい見た目になっています。
【安定期に見られる赤ちゃんの変化】
- 手足を自由に動かせるようになる
- 胎毛が生えてくる
手足を自由に動かせるようになる
妊娠5ヶ月になると赤ちゃんは前頭葉や神経が発達し、手足を自由に動かせるようになります。
まだ赤ちゃんの大きさに対して子宮の中に動き回れるスペースがありますので、活発に動くようになってきます。
胎毛が生えてくる
「胎毛(たいもう)」とよばれる産毛のようなものが全身に生えてきて皮膚を守るはたらきをします。
眉毛やまつげ、髪の毛もうっすらと生えてきます。
妊娠安定期に注意することとは
安定期とはいわれますが、妊娠中に完全に安心できる時期というのはなく、様々なマイナートラブルがつきものです。
【安定期に注意すること】
- おなかの張り
- 妊娠線
- 動悸・息切れ
- 貧血
- 便秘や頻尿
- 頭痛
- 肌トラブル
- 歯周病
おなかの張り
妊娠6ヶ月頃になるとおなかがさらに一回り大きくなることで、おなかの張りを感じやすくなります。
体が冷えたり長時間歩いて疲れたときなどにおなかの張りを感じることが多いようですが、少し安静にしていて自然と治まるようなら心配いりません。
おなかの張りや痛みが長時間続いたり、出血がある場合はすぐに受診してください。
妊娠線
安定期はおなかが徐々に大きくなる時期ですので、それに伴って皮膚が引き伸ばされて妊娠線ができやすくなります。
最も妊娠線ができやすいのは妊娠後期の赤ちゃんがどんどん成長する時期ですが、早い人は安定期頃からできてしまうこともあります。
乾燥していると妊娠線ができやすくなりますので、妊娠の早い段階から保湿クリームなどでケアをする習慣をつけておきましょう。
一度妊娠線ができてしまうと、薄くはなっても消えないためしっかりとケアをして予防することが大切です。
つわりがおさまり急に食欲が増した人も妊娠線には要注意です。
動悸・息切れ
赤ちゃんの成長にともなってママの体内の循環血液量が増えるため、動悸やめまいがおこりやすくなります。
心臓や肺が大きくなった子宮に圧迫されることで息切れもしやすくなります。
急に立ち上がったりしないよう注意し、動悸や息切れを感じたらすぐに安静にしておさまるのを待ちましょう。
貧血
妊娠中は血液量は増えますが、赤血球の数はあまり増えないために相対的に貧血になりやすくなります。
また胎児の成長や胎盤への鉄貯蔵のためにも需要が高まるため、妊娠前より多くの鉄分を摂取する必要があります。
食事にはほうれん草や小松菜など、鉄分を多く含む食材を使った副菜を一品添えるようにしましょう。
便秘や頻尿
子宮が大きくなってくると腸が圧迫されて便秘になりやすくなります。
膀胱が圧迫されると頻尿になったり、我慢していると膀胱炎になりやすいため、外出時はトイレの場所をチェックしておきましょう。
腰痛
おなかが大きくなってくると、突き出たおなかを支えてバランスを取ろうとするため反り腰になりがちです。
立っている時や座っている時に、腰が反ったり猫背になったりしないよう日常の動作で心掛けましょう。
適度な運動で筋力をつけることは腰痛予防に効果的です。
肌トラブル
妊娠すると新陳代謝が活発になったりホルモンバランスの変化などで、肌トラブルがおこりやすくなります。
肌が乾燥しやすく、かゆみや時には蕁麻疹のような症状が出ることもあります。
かゆみが強く我慢できないときには、皮膚科で妊娠していることを伝えて相談しましょう。
歯周病
妊娠中は女性ホルモンの増加により、唾液の分泌量が減るため歯周病やむし歯になりやすくなります。
歯周病を放置すると早産や低出生体重児が増えるというデータもありますので、妊娠中は特に念入りに歯磨きをして気をつけましょう。
安定期に起こり得るトラブル
安定期といわれる妊娠中期頃にもさまざまなトラブルや症状がおこる可能性があります。
重症化する前に対処できるよう妊婦健診をしっかり受けましょう。
【安定期に起こり得るトラブル】
- 切迫早産
- 子宮頸管無力症
- 前置胎盤
- 妊娠高血圧症候群
- 妊娠糖尿病
切迫早産
切迫早産は、まだ早産ではありませんが「早産になりかけている」状態のことをいいます。
強いおなかの張りや出血があったり、子宮口が開き始めている状態をさします。
早産とは妊娠22週~37週未満で生まれることをいいます。
切迫早産と診断された場合は基本的には安静にして、赤ちゃんができるだけママのおなかの中で長く過ごせるようにします。
子宮頸管無力症
子宮頸管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)とは、本来はかたく閉じてなければならない、赤ちゃんが出てくる道の子宮頸管が痛みや自覚症状もなく開いてしまう症状のことをいいます。
妊娠16~24週頃におこりやすく、子宮頸管が開くと赤ちゃんが出てきてしまいますので流産や早産をひきおこします。
前置胎盤
前置胎盤(ぜんちたいばん)とは通常は子宮の上のほうにあるはずの胎盤が、子宮の出口あたりに形成されてしまい、赤ちゃんの通り道の一部もしくは全部を塞いでしまっている状態のことです。
妊娠初期の検査で前置胎盤だといわれても、妊娠の経過とともに正常な位置になることも多く、分娩前までに90%以上は自然に解消されます。
ただし、前置胎盤のまま妊娠後期になり子宮が大きくなると胎盤が子宮壁からはがれて突然の大量出血がおこることがあります。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群とは、妊娠前は正常な血圧だった女性が妊娠をきっかけに高血圧となった状態のことをいいます。
妊娠高血圧症候群は妊婦さんのおよそ10人に1人の割合でおこっています。
胎児発育不全や胎盤がはがれてしまう常位胎盤早期剥離、胎児死亡などのリスクが高くなります。
もともと肥満気味だった人や血圧が高めだった人は妊娠高血圧症候群になりやすいため、特に体重コントロールに気をつけましょう。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠前は糖尿病ではなかった女性が妊娠をきっかけに血糖値があがってしまい糖尿病予備軍となった状態のことをいいます。
妊娠糖尿病は妊婦さんのおよそ8人に1人の割合でおこり珍しいものではありません。
ママの血糖値が高いとおなかの赤ちゃんの血糖値も高くなり、大きく育ちすぎたり胎児死亡となるリスクが高くなります。
また産まれた子が将来肥満や糖尿病になる可能性も高くなります。
安定期にやることリスト
つわりが落ち着き、妊娠後期のように慌ただしくない安定期の間に妊娠の報告や出産後の準備を進めておきましょう!
【安定期にやることリスト】
- 周囲への妊娠報告
- もらえるお金のチェック
- ベビーグッズのリストアップ
周囲への妊娠報告
周囲への妊娠報告は、「安定期に入ってから」とよく言われますが、これは初期流産のリスクが減るためです。
職場への報告は直属の上司へは早いほうが良いですが、同僚やチームのメンバーなどには安定期頃を待った方がよいでしょう。
お互いの両親やお友達への報告も、もしものことを考えると安定期を待つ方がおすすめですが、身の回りのことを手伝ってもらう必要がある場合などは臨機応変に対応しましょう。
もらえるお金チェック
妊娠出産でもらえるお金としては次のようなものがあります。
【妊娠や出産でもらえる助成金・給付金制度】
- 出産育児一時金
- こども一人につき50万円
- 高額療養費
- 高額な治療が必要になったときに適用
- 医療費控除
- 確定申告で返ってくるお金があるかも
- 出産手当金
- 勤めている企業からの手当金
- 傷病手当金
- 妊娠のトラブルで仕事を休んだときの手当金
もらえるお金は働き方のタイプや加入している健康保険などによって異なりますので、今のうちにチェックしておきましょう!
ベビーグッズのリストアップ
妊娠後期になるとおなかが大きくなり動きづらくなりますので、今のうちにベビーグッズの用意を始めておきましょう。
とはいっても、何から用意すればよいのか悩みますし、思いついたものから買っていると買いもれがあるかもしれません。
まずは必要なものをリストアップして、すぐに必要なもの、もらえるもの、レンタルできるものなどをチェックしておきましょう。
安定期の過ごし方のポイント!
安定期にはおなかの赤ちゃんが元気に育つことができる習慣を意識しつつ、きれいなママでいるためにご自身の体をいたわって、体調と相談しながら自分のペースでリラックスして過ごしましょう。
【安定期の過ごし方のポイント!】
- 食事のバランス
- 体重管理
- お肌のケア
- 体を冷やさない
- 旅行
- マタニティスポーツ
- 両親学級
- 歯の治療
食事のバランス
妊娠初期のつわりがある時期は「食べれるものを食べれる時に」が基本ですが、安定期にはバランスのよい食事を心掛けましょう。
ご飯やパンなどの主食を中心に、肉や魚などの主菜を組み合わせてタンパク質も摂りましょう。
野菜や豆類などを使った副菜でビタミンやミネラルを補いましょう。
特に妊娠期に不足しがちな鉄分やカルシウムは積極的に摂りましょう。
体重管理
おなかの赤ちゃんを育てるためには適正に体重を増やす必要があります。
妊娠中の理想的な体重増加量は妊娠前の体格によって違いますが、7~15kg程度の増加が推奨されています。
妊娠中の体重増加が少なすぎると、早産や低出生体重児のリスクが高まるだけでなく、産まれた赤ちゃんが将来生活習慣病になりやすくなります。
妊娠中の体重増加が多すぎると出産時のトラブルがおこりやすくなり帝王切開になるケースが多くなります。
安定期は特につわりがおさまり食欲が増しやすい時期ですので、体重が急激に増えたりしないよう、定期的に体重を測って管理しましょう。
お肌のケア
妊娠中はホルモンバランスの変化で肌が乾燥したり髪の毛がパサつきがちです。
妊娠線を防ぐためにも、全身の保湿ケアを習慣にしましょう。
お風呂上りや朝の着替えをするときなど、生活のルーティンの一部に保湿ケアを組み込むと毎日続けやすくなります。
また保湿クリームを寝室やリビング、職場などいろんなところへ置いておくと気になったときにすぐに塗れておすすめです。
髪の毛のパサつきには、十分な睡眠とバランスの良い食事を心掛けましょう。
体を冷やさない
妊娠中はホルモンバランスの変化により自律神経が乱れやすく、血行が悪くなり体が冷えやすくなります。
体温調節がしやすいように、重ね着をしたり厚手の靴下をはくなど工夫しましょう。
特に下半身が冷えると腰痛の原因になったりおなかが張りやすくなるため、腹巻やひざ掛けなども積極的に利用しましょう。
旅行
「体調も落ち着いているし、夫婦二人だけで旅行に。。。」と思われる方も多いのではないでしょうか。
妊娠中の旅行はNGではありませんが、安定期とはいってもいつ何がおこるかわかりません。
長時間の移動は避けて、トラブルがおこったときにどうすればいいのかを常に考えて行動するようにしましょう。
飛行機の移動も可能ですが、途中で何かあっても降りられないということを頭に入れておいてください。
マタニティスポーツ
適度な運動は体重管理やお産に向けての体力づくりにもおすすめです。
妊娠前に運動習慣がなかった方も、軽いウォーキングや自宅で簡単にできるヨガなど、体を動かすことによって血行が良くなりむくみや腰痛改善などが期待できます。
ストレッチやヨガなどは自宅で動画サイトを見ながらマイペースに行うことができます。
水中で行うアクアビクスなどは妊婦さん専用のプログラムがある施設に通うと、ママ友もできて一石二鳥かもしれません。
激しい運動や体調が悪い時は控えて、無理せずご自身に合った運動を選びましょう。
両親学級
妊娠や出産、育児についての基本を学ぶことができるのが両親学級です。
妊娠中の悩みを相談できたり出産後の情報が得られたり、ママ友作りにも役立ちます。
パパも一緒に参加して育児に臨めるといいですね。
市区町村や病産院などで開催されているので、体調が落ち着いている安定期に参加するのがよいでしょう。
歯の治療
妊娠前からむし歯があり、妊娠初期はつわりがツラくてなかなか治療へ行けなかったという人も、つわりが落ち着いた安定期が治療のチャンスです。
つわりで歯磨きがしっかり出来なかったという人も、妊娠中は歯周病やむし歯になりやすいため定期的に歯の健診を受けて予防に努めましょう。
悪化すると歯周病原細菌が歯肉から血管へと侵入し全身疾患につながるおそれがあります。
まとめ
安定期とよばれる妊娠5ヶ月頃ですが、早産などのリスクがまったくないわけではありません。
そのため、今しかできないことをやりつつもご自身の体調を最優先して、マタニティライフを楽しみましょう。
もし、いつもと違う違和感を感じたら、お医者さまに相談するようにしましょう。