胎児の染色体異常や先天性疾患を調べる出生前診断は、一般的に高額な費用がかかります。
高齢出産が増えていることで出生前診断への関心が高まり、検査実施数も年々増加しています。
出生前診断にはいくつかの種類があり、検査で分かることや実施期間、費用などそれぞれ特徴が異なります。
ここでは出生前診断にかかる費用の相場やお金にかかわることについてご紹介しています。
出生前診断の費用の相場
出生前診断にかかる費用は、同じ検査であっても医療機関や地域、検査内容などによって異なるためあくまでも目安になります。
【出生前診断の費用の相場】
*胎児超音波検査*
基本的な胎児超音波検査は妊婦健診で受けますが、それとは別に一部のクリニックでは「胎児ドック」などの名称でより詳しく精密に調べる超音波検査を実施しています。
費用は施設によってバラつきがありますが、3~5万円程度が多いようです。
*母体血清マーカー検査*
いくつの成分を調べるかなどによっても価格が異なり、1万円程度で受けられるケースもありますが、2~3万円程度が多いようです。
*NIPT*
いわゆる「認可施設」「無認可施設」によっても異なり、認可施設では20~25万円程度、無認可施設では15~20万円程度が多いようです。
無認可施設での対象疾患はダウン症、18トリソミー、13トリソミーの3種類に限られていますが、認可施設ではその他の対象疾患を追加して、いくつかのメニューを用意している場合が多いようです。
羊水検査と絨毛検査の費用の相場は、15~20万円程度が多いようです。
保険は適用外
どの出生前診断も高額なため保険適用になるかについては大きな関心事ですが、妊婦健診に含まれる胎児超音波検査は除いて、すべての出生前診断が保険適用外です。
健康保険は病気や怪我をした際の治療費が対象となるため、直接の治療につながらない出生前診断は保険の対象となりません。
同じ理由で、医療費控除や高額療養費制度についても対象外とされています。
ただでさえ妊娠中はお金がかかりますので、出生前診断を検討する際は、費用についても考慮する必要があります。
出生前診断とは
出生前診断とは、妊娠中におなかの中にいる胎児について何らかの異常がないか調べる検査のことです。
すべての先天性(生まれつき)の病気が分かるわけではなく、いくつか種類がある出生前診断では分かることや結果の出方に違いがあります。
検査を行う目的は、胎児が持つ染色体異常や遺伝的な病気を早期に発見し、異常が発覚した場合には治療計画やサポート体制の整った出産施設の検討を行い、妊婦さんや家族が将来にわたって必要な対策を立てられるようにすることです。
妊婦健診で実施している胎児超音波検査は妊婦さん全員が受けますが、その他の出生前診断についてはリスクが高いなどの理由で医師から検査を勧められた人や、ご自身の判断で希望をした人などが受けることになります。
出生前診断は必ず受けなければならないわけではありません。
それぞれの検査で分かること
それぞれの検査は対象となる疾患や検査精度、リスクや検査時期などに違いがありますので、必要に応じてどの検査を受けるか選択します。
【妊娠週数と出生前診断が受けられる時期】
基本的にどの検査も妊娠初期か妊娠中期のはじめ頃までに行うことが一般的です。
それ以降でも検査が可能なものもありますが、検査を受けてから結果がでるまでの期間、中絶を選択しなければならない場合の猶予期間などを加味すると妊娠18週頃までに検査を受けることが推奨されます。
エコー検査(胎児超音波検査)
エコー検査では妊婦さんのお腹に機械をあてて、超音波画像から診断を行います。
赤ちゃんが順調に育っているか発育や成長の様子を確認するほか、内臓や四肢に異常はないかなど画像から分かる異常についても調べます。
妊婦健診で行われるため妊婦さん全員が受けますが、一部のクリニックでは「胎児ドック」などとしてより高い精度で調べることも可能です。
胎児のうなじの厚み(浮腫)を測定することによってダウン症などの染色体異常を調べる検査をNT(エヌティー)といい、厚みがあるほど染色体異常の可能性が高くなります。
NTの測定には熟練の技術と知識を要求されるため、かならずしも妊婦健診で行われるわけではなく施設によって異なります。
厚みがあっても染色体異常ではない場合もありますので、一般的にはniptや羊水検査などによってより詳しく検査や診断を行います。
クアトロテスト(母体血清マーカー検査)
母体血清マーカー検査とは、妊婦さんの血液中に含まれる特定の物質を測定することで、胎児の染色体異常(ダウン症、18トリソミー)や開放性神経管奇形のリスクを判定する検査のことです。
妊婦さんからの採血と母体年齢からリスクを算出し、例えば「異常がある可能性は295分の1」といった確率で結果が出ます。
そのため、高い確率が出ても確定検査で調べたら問題なかった、ということも少なくありません。
どのくらいの確率が出たら確定検査を受けるか?受けないか?を事前に考えておかないと、思わぬ結果の場合混乱してしまうかもしれません。
母体の血液中に含まれる4つの成分を測定する検査を「クアトロテスト™」、母体の血液中に含まれる3つの成分を測定する検査を「トリプルマーカー検査」といいます。
検査時期は妊娠15週~18週頃に行われます。
NIPT
NIPT(ニプト/エヌ・アイ・ピー・ティー)とは、新型出生前診断とも呼ばれ、妊婦さんの血液を分析することで胎児のダウン症などの染色体異常について調べる検査のことです。
対象疾患はいわゆる「認可施設」ではダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3種類ですが、「無認可施設」と呼ばれる検査施設では性染色体を含むすべての染色体の数の異常や、微小欠失症と呼ばれる染色体の小さな部分の異常についても選択して調べることができます。
「認可」とは日本産科婦人科学会が認定しているという意味で、検査を受けるには一定の条件があります。
「無認可」施設は独自の条件があったとしても年齢や対象者についての縛りが緩く、より多くの希望する妊婦さんが検査を受けることができます。
NIPTはエコー検査やクアトロテストなどと比べて検査精度が高く、羊水検査のように流産のリスクがない点が特徴です。
さらに、妊娠10週という妊娠初期から検査ができるのもメリットの一つです。
ただし、検査精度は高いものの「非確定検査」であり、NIPTで陽性だったとしても実際は異常がない可能性もあります。
また、すべての染色体異常や先天性の疾患が分かるわけではないことに注意が必要です。
羊水検査
羊水検査とは妊婦さんのお腹に針を刺して羊水を採取することで、胎児の染色体異常の有無を診断する検査のことです。
結果が出るまでに2週間ほどかかることや、検査の結果で異常があった場合の対応期間などを考慮して、検査時期は妊娠15週~18週頃までに行うことが一般的です。
50年くらいの歴史のある検査で、日本では年間に約2万件程度の羊水検査が行われています。
胎児の染色体異常をほぼ100%の確率で判定できることから、出生前診断の非確定検査である新型出生前診断(NIPT)やクアトロテストなどで陽性になったときの確定診断検査としても用いられます。
しかし、お腹に針を刺すため流産のリスクが約0.3%ほどあるといわれており、また感染症などの合併症のリスクもあります。
絨毛検査
絨毛検査は胎盤となる絨毛(じゅうもう)を採取することで、胎児の染色体異常の有無を診断する検査のことです。
羊水検査と同じく確定診断として行われますが、羊水検査より早い妊娠10~13週で受けられるのがメリットです。
そのため染色体異常や遺伝子疾患の疑いが強く、早期診断が必要な場合に行われます。
検査の方法としては、妊婦さんのお腹に針を刺す方法と、膣から管を入れて採取する方法があります。
流産のリスクが1~2%程度と高めで、また腹膜炎や子宮内感染などの合併症のリスクもあるため、メリットとデメリットをよく理解したうえで検査に臨む必要があります。
採取した絨毛細胞の培養に時間がかかるため、結果が出るまでに2週間程度かかります。
絨毛の採取に高い技術が必要なため実施している医療機関は限られており、年間の実施数は2,000件程度です。
まとめ
どの出生前診断を受けるか迷うとき、選ぶポイントは次の通りです。
- 検査でわかることはなにか
- 検査でわからないことはなにか
- 検査のメリットとデメリット
- 費用
- 検査時期
- 検査を受けられる施設
それぞれの出生前診断で特徴が異なりますので、ポイントをしっかり理解したうえで、納得のできる決断をすることが大切です。
今回は費用についての相場をまとめましたが、あくまでも目安のため詳しくはご自身が検討するクリニックにご確認くださいね。