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ターナー症候群と女性不妊

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author:DNAサイエンス
ターナー症候群と不妊

ターナー症候群は性染色体の異常によっておこる染色体異常の一つで、胎児の染色体異常を調べる検査である新型出生前診断(NIPT)で分かることがあります。

また、不妊治療の過程で、女性不妊の原因としてターナー症候群だと発覚することもあります。

ターナー症候群とはどのような症状があり、どのような治療を行うのでしょうか?

ここではターナー症候群に関するさまざまな疑問についてご紹介しています。

ターナー症候群は女性にのみおこる染色体異常で、1)身長が低い2)ほとんどは不妊である、という特徴以外は命にかかわるような合併症もなく、一般の女性と同じように自立した生活を送っています。

ターナー症候群の見た目の特徴としては、身長が低いこと以外はほとんど分かりません。

特定の染色体に変化があるため「症候群」と呼んでいますが、遺伝子の変化がすべて悪いわけではなく、ターナー症候群も基本的に健康上の問題はなく自立した生活を送ることができるため、アレルギーなどと同じように「生まれつきの体質」とし、疾患ではなく多様性や個性の一つとの考え方から「ターナー女性」と呼ぶ動きが増えています。

特徴

ターナー症候群の特徴

ターナー症候群は女性におこる染色体異常の中では一番多く、大きな特徴としては「低身長」と、「性発達の遅れ」があげられます。

【ターナー症候群の特徴】

  • 低身長
  • 性発達の遅れ
  • 不妊
  • 耳のトラブル
  • 骨のトラブル
  • 腎臓のトラブル
  • 心臓のトラブル
  • 目のトラブル
  • 生活習慣病になりやすい

小児期にはなかった症状でも、成長とともに合併しやすい症状がありますので、ライフステージに合わせた検診・健康管理により症状の進行や悪化を防ぐことができるものもあります。

なおこれらの特徴は個人差が大きく、すべてのターナー症候群の女性に見られるわけではありません。

特有の顔つきと見た目の特徴

ターナー症候群の身長

ターナー症候群の見た目の特徴としては、身長が低いこと以外は一般の女性と大きな違いはなく、特有の顔つきもありません。

しかし、首の回りの皮膚がたるんでいるなど、専門家が見ると分かるような特徴がいくつかあります。

【ターナー症候群の見た目の特徴】

  • 低身長
  • 翼状頸(よくじょうけい)
  • 外反肘(がいはんちゅう)
  • 毛髪線低位
  • 小顎症
  • 高口蓋(こうこうがい)
  • 楯状胸(たてじょうむね)
  • 乳首の間隔が広い
  • 首が短い
  • ほくろが多い
  • 爪の発育が悪い
  • 中指、薬指が少し短い

日本人成人女性の平均身長は158~159cm程度ですが、ターナー症候群では治療を行わなかった場合、平均身長は139cm程度と、約20cm程度も低くなります。

なお、適切に治療をおこなった場合は、147cm程度まで平均身長は高くなります。

翼状頸(よくじょうけい)とは、首から肩にかけての皮膚がたるんでいる状態で、両肩に向けてすそが広がっていることから首が太く見えます。

外反肘(がいはんちゅう)とは、腕をだらんと伸ばしたときに腕が一直線にならず、ひじから先が外側に曲がっている状態をいいます。

他にも、首の後ろの髪の毛の生え際が低かったり(毛髪線低位)、あごが小さい(小顎症)、楯のように胸周りが広くて厚い(楯状胸)、などの特徴があります。

なおこれらの特徴の有無やその程度はかなり個人差があります。

症状・合併症

ターナー症候群の症状の特徴としては、性発達の遅れに由来するさまざまな症状と、次の合併症があげられます。

【ターナー症候群の合併症】

  • 性腺機能不全、卵巣機能不全
  • 生理がない(無月経)
  • 不妊
  • 早い閉経
  • 中耳炎、難聴
  • 腎奇形、腎疾患
  • 心疾患
  • 骨粗しょう症
  • 脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)
  • 遠視、斜視
  • 甲状腺機能障害
  • 生活習慣病(肥満、糖尿病、高血圧)

性発達の遅れについては後述します。

生まれたときから心疾患や腎疾患などの合併症があることが多く、ほとんど無症状で治療が必要ないケースから、手術が必要で日常生活に支障をきたすケースまでさまざまあります。

成長とともにおこりやすい合併症として、中耳炎があります。

中耳炎を繰り返していると、難聴になりやすくなります。

骨のトラブルが起こりやすく、背骨が横方向に曲がる「脊柱側彎症(せきちゅうしょくわんしょう)」や、骨粗しょう症に若いうちから注意が必要です。

脊柱側弯症
脊柱側弯症(※画像の女性はターナー症候群ではありません)

目のトラブルとしては遠視(近くのものが見えづらい)や斜視(左右の目が違う方向を向く)があります。

そのほか、肥満や糖尿病、高血圧などといった生活習慣病にもなりやすく、定期的な健診によって早期発見・早期治療につとめることが大切です。

早くから治療ができれば、症状の進行を抑えることができる場合もあります。

不妊との関係

ターナー症候群と不妊

性発達の遅れとしては、卵巣の機能が弱いために無月経や月経不順、不妊などがあります。

一般的には10~12歳ころに二次性徴がおこり生理がはじまる、胸が膨らみ女性らしい体つきになるなどの変化がおこりますが、ターナー症候群の場合は二次性徴がおこらないことが多く生理がこないために無月経となります。

なお、約20%のターナー症候群の人は自然に生理がきますが、それでも規則正しく生理が続くことはまれで、99%以上のほぼすべてのターナー症候群の人は不妊となります。

排卵がある場合は自然に妊娠できた例もありますが極めて少なく、妊娠できても流産や死産の割合が多く4割程度との報告もあります。

また、妊娠できた場合の母体トラブルが多く、妊娠高血圧症候群妊娠糖尿病、腎臓機能異常や甲状腺機能異常などの合併症のほか、大動脈解離や動脈瘤破裂などにより死亡する例もあり、十分な管理が必要です。

排卵がある場合でも、10代のうちに閉経を迎えることもあるため、自身の卵子を凍結保存し、将来的に自身の卵子で妊娠できる可能性を残す、生殖補助医療もあります。

排卵がない場合の不妊治療としては、第三者からの卵子の提供により、体外受精を行う方法があります。

ターナー症候群では通常の不妊治療で妊娠に至ることはほとんどありません。

将来設計については、パートナーとよく話し合う必要があります。

治療方法

ターナー症候群の身長

【ターナー症候群の治療】

  • 成長ホルモン補充療法
  • 女性ホルモン補充療法
  • 心臓の外科的手術
  • 性腺腫瘍に対する治療
  • 外性器の形態異常に対する手術

ターナー症候群の主な治療としては、「低身長に対する成長ホルモン療法」と、「性腺や骨の発育を促すための女性ホルモン療法」があります。

そのほか合併症に対する治療を症状に合わせて行います。

生まれたときから心臓の疾患を抱えていることが多く、必要に応じて手術を行います。

性腺に癌(がん)ができる可能性が高いと判断された場合には、予防として癌ができる前に性腺摘出手術を行います。

外性器に形態異常があれば、手術を行うこともあります。

心臓や腎臓、耳など異常が起こりやすい部位が分かっているため、定期的に検査を受けて健康管理を行います。

成長ホルモン補充療法

低身長に対しては、成長ホルモン補充療法が有効です。

治療を行った場合と行わなかった場合を比べると、平均身長は約10cm違います。

成長ホルモン補充療法は非常に高価なため、多額の費用が必要になりますが、ターナー症候群は「小児慢性特定疾病」に指定されているため医療費助成制度が受けられます。

女性ホルモン補充療法

女性ホルモン補充療法は卵巣機能不全に対して有効で、ほとんどすべてのターナー症候群の人に必要な治療です。

胸が大きくなる、生理がはじまるといった二次性徴を助けるほか、正常な生理周期を維持する効果も期待できます。

そのほかにも、女性ホルモンである「エストロゲン」は、骨の形成と代謝に関与しているため、骨粗しょう症予防につながります。

さらに「エストロゲン」の血管をしなやかに保つはたらきにより、動脈硬化予防にもつながります。

女性ホルモン補充療法は二次性徴がはじまる時期である10~12歳頃から開始すると効果的なため、早い段階からターナー症候群であると分かっていることは意味があります。

原因

ターナー症候群の染色体

ターナー症候群は性染色体異常の一つです。

染色体とは、遺伝子を含むDNAが、大量に折り重なってできた構造体のことをいいます。

一本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれていて、染色体は遺伝子を正確に子孫へ伝えるのに重要な役割を担っています。

染色体は2本ずつペアになっており、ヒトの染色体23対(46本)のうち、1~22番までの22対は「常染色体」、23番目の残りの1対は男女の性別を決める「性染色体」と呼びます。

常染色体は番号が小さい方が基本的に大きく(1番の染色体が大きい)、また保有している遺伝子の数も多い傾向にあります(一部例外あり)。

性染色体には「X染色体」と「Y染色体」があり、その組合せにより男性になるか女性になるかが決まります。

「XY」の組合せで一般的な男性、「XX」の組合せで一般的な女性になります。

性染色体, X染色体, Y染色体

染色体は両親から子に受け継ぐ際に、対になっている片方を父親から、もう片方を母親から1本ずつ受け渡します。

ターナー症候群は、この両親から染色体を受け継ぐ過程がうまくいかず、「XX」の性染色体のうち1本がない、もしくは一部が欠けている状態です。

ターナー症候群の染色体の変化はいくつかのタイプがありますが、正常な細胞と異常のある細胞の両方が混ざった状態を「モザイク型」といい、ターナー症候群ではこのモザイク型が多いのも特徴の一つです。

モザイク型は症状が軽くなる傾向にあり、変化のない細胞が多いほどその傾向が強くなります。

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寿命

基本的に命にかかわるような重篤な合併症はありませんので、ターナー症候群だからといって特別に寿命が短いことはなく、一般の人と同じです。

ターナー症候群の子が生まれる確率

生まれてくる女の子の赤ちゃんのうち、約2,500人に1人の確率でターナー症候群であるとされていますが、症状がほとんどない場合はターナー症候群だと一生気づかないこともあるため、実際はもっと多いとも考えられています。

そもそも、受精卵の段階では多くの染色体異常が起こっています。

ターナー症候群は女性におこる染色体異常の中では最も多いのですが、その99%は流産や死産となってしまい出生まで至りません。

生まれることができたターナー症候群の赤ちゃんは生命力が強いともいえるかもしれません。

高齢出産で確率は高くなるのか?

ママの年齢が35歳以上で、はじめて出産する場合を一般的に「高齢出産」といいます。

高齢出産では胎児の染色体異常がおこる確率が高くなりますが、特に通常2本である染色体が1本や3本になる「数の異常」がおこりやすくなることがデータ上分かっています。

これは主に「常染色体」におこり、「性染色体」の数の異常は、基本的にそれほど女性の出産年齢に依存しません。

ターナー症候群は高齢出産でも発生頻度はわずかに上昇する程度です。

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遺伝するのか

親から子へ遺伝するイメージ

染色体異常と聞くと、遺伝するのではと思われるかもしれませんが、そのほとんどは遺伝ではなく偶然に起こります。

ターナー症候群も両親や環境のせいではなく、誰にでも起こりうると言われています。

先に生まれたきょうだいがターナー症候群だからと言って、次に生まれる子に影響はほとんどの場合ありません。

検査

生まれる前や生まれたあとに、特徴的な症状からターナー症候群である疑いが持たれることがあります。

染色体異常は生まれつきのものなので後天的になることはありませんが、胎児期や新生児期にはターナー症候群だと気づかれず、思春期に二次性徴がおこらないなどの特徴からその疑いを持ち検査をして、はじめてわかることもあります。

ただし、ターナー症候群の症状の程度は個人差が大きく、軽い場合は一生ターナー症候群だと気づかないこともあります。

ターナー症候群の診断には血液検査により染色体の分析を行います。

出生前検査

出生前診断とは

妊婦健診の超音波検査で、お腹の赤ちゃんの首の後ろの厚みを指摘されることがあるかもしれません。

これは「NT(エヌティ―:ヌーカル・トランスルーセンシ―)」といい、この値が一定以上あるとダウン症などの染色体異常の可能性が疑われます。

NT肥厚(厚みがあること)で疑われる染色体異常は、ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーなどがありますがターナー症候群もその一つです。

ただし、あくまで染色体異常がある「可能性」でしかなく、NT肥厚は染色体が正常な胎児にも見られます。

そのほかにも、エコー検査による以下の特徴的な所見などから、生まれる前にターナー症候群である疑いが持たれることがあります。

【ターナー症候群にみられる胎児の超音波所見】

  • NT肥厚
  • 胎児発育不全
  • 胎児水腫
  • 心臓の奇形(大動脈縮窄症、左心形成不全)

胎児発育不全とは、妊娠週数のわりに胎児の成長が遅い状態をいいます。

胎児水腫とは、赤ちゃんのお腹や胸などに水がたまり全身がむくんだ状態です。

エコー検査の他にも、妊婦さんの血液を分析することで、おなかの赤ちゃんの染色体異常について調べる検査である「新型出生前診断(NIPT)」を行なっている一部の施設では、ターナー症候群も検査対象に含まれます。

新型出生前診断(NIPT)もエコー検査も非確定検査で、「ターナー症候群の可能性があるかどうか?」を知ることができます。

もしこれらの検査でターナー症候群、もしくは何らかの染色体異常が疑われた場合、「羊水検査」や「絨毛検査」などの確定検査を受けて、本当にそうなのかを調べます。

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出生後の検査

生まれてすぐの新生児期に、手や足の甲がむくんでいたり、心臓の血管が細いことや、左右の腎臓がつながっている「馬蹄腎(ばていじん)」である、首が太く短いなどの特徴からターナー症候群だと疑われることがあります。

ターナー症候群の多くは、小児期に身長が低いことや、思春期に二次性徴があらわれないことなどにより検査が行われます。

そのほか不妊症の評価の過程でターナー症候群や何らかの異常を疑い、検査をすることもあります。

ターナー症候群の症状の程度や、症状があらわれる時期は人によって異なるため、疑いをもち検査をするタイミングも人それぞれです。

どの場合も診断は血液検査によって行います。

出生前診断でターナー症候群と分かったら?

出生前診断でダウン症などの染色体異常が発覚した場合、中絶を選択する人が多いことについて議論がつきませんが、ターナー症候群は生きていくうえで重篤な症状があるわけではなく、多くの人は自立した普通の生活を送っています。

ターナー症候群の合併症の一部は、早期から治療をすることで、症状の出現や進行を抑えることができます。

思春期の頃からホルモン補充療法を行うことで、低身長に対して成長を促進したり、骨や性腺発育を促すことができます。

子どもの頃にターナー症候群だと分かっていなければ、ホルモン補充療法などが遅れてしまう可能性があります。

ターナー症候群では学習障害や運動の遅れがある可能性がありますが、しかしそれはターナー症候群に限ったことではなく、染色体異常がない人にもその可能性はあります。

どのくらいの症状があらわれるかは生まれる前には分かりませんが、起こりやすい病気や症状が分かっていれば、定期的な検査により早期発見・早期治療が可能になります。

間違っても、思わぬ疾患名を告げられて気が動転し、冷静でない判断をしてしまわないよう、正しい情報を得る必要があります。

染色体の疾患については、遺伝医学に関する専門家である「臨床遺伝専門医」や「遺伝カウンセラー」というプロがカウンセリングを行っていますので、相談してみるものいいでしょう。

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就学・就労

ターナー症候群では知的障害は基本的にないため、就学について大きな問題はなく一般の人と同じように就学し進学しています。

就労についても同様で、一般の人と同じように働いています。

好きな人ができ結婚を考えるようになったとき、将来設計について十分に話し合う必要があります。

ほとんどすべてのターナー症候群の女性は不妊であり、子どもを授かることは難しいかもしれませんが、絶対に不可能というわけでもありません。

生殖補助医療のさらなる発展もあるかもしれませんし、養子を迎えるという選択肢もあります。

夫婦二人だけの生活を楽しむこともできます。

まとめ

ターナー症候群は身長が低いことと、ほとんどは不妊であるという特徴以外は基本的に命にかかわるような合併症もないため、症状が軽度の場合はターナー症候群だと診断されていない人も多いといわれています。

生まれる前の出生前診断でターナー症候群だと分かった場合、どのような疾患か分からず不安になるでしょうが、早い段階で発覚したからこそできる対応があります。

ターナー症候群は家族の会も全国にたくさんありますので、お話を聞いてみるのもよいかもしれませんね。

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