妊娠中のエコー検査で「うちの子、他の赤ちゃんより大きいのかな?」と不安になることはありませんか?
胎児の成長は個人差があり、エコー検査で得られる推定体重は、成長の目安となるものです。
とはいえ、「平均よりも大きい」と言われると気になりますよね。
本コラムでは、胎児の測り方や発育曲線の見方について詳しく解説します。
赤ちゃんの成長を正しく理解し、安心してマタニティライフを過ごすための知識を一緒に深めていきましょう。
胎児発育曲線とは?
「胎児発育曲線」とは妊娠週数別に胎児の望ましい体重を示したグラフのことです。
妊婦健診で得られたデータを元に推定した胎児の体重を書き込むことで、胎児の発育の状態を視覚的に評価することができます。
胎児発育曲線は正期産で正常体重(2,500g~3,999g)で生まれたたくさんの赤ちゃんのデータを元に作成されています。
正期産かつ正常体重で生まれた赤ちゃんの約95.4%は胎児発育曲線の上下の線の間に入ることから、推定体重がこの中に当てはまっていれば順調に成長している可能性が高いととらえることができます。
胎児の体重の測り方
お腹の中にいる胎児を体重計に乗せて量ることはもちろんできませんので、妊婦健診で行われる超音波検査(エコー検査)のデータを元に体重を推定します。
エコー検査ではお腹の赤ちゃんの頭の大きさやお腹周りの長さ、大腿骨の長さを計測し、それらのデータから推定体重を算出します。
胎児の推定体重はどれくらい正確なの?
胎児の推定体重は、あくまで「推定」であり、実際の体重と多少の誤差が生じることがあることに注意しなくてはなりません。
超音波機器を用いることによる装置の精度の限界、人間が操作することによるヒューマンエラーなどによって、推定体重は±10%の範囲で誤差があります。
たとえば妊娠20週で胎児の推定体重が250gだったとすると、実際の体重は225gから275gの間だろうということになります。
そのため、推定体重は点で見るのではなく、線として継続して観察することが大切です。
性別の違い・初産・双子すべて同じ基準値?
胎児の発育にはさまざまな条件が影響します。
例えば、一般的に男児の方が女児よりも少し大きめになりますし、初産婦の胎児よりも経産婦の胎児の方がやや大きく成長する傾向があります。
また、単胎よりも双子や三つ子などの多胎児の方が小さく生まれる傾向にあることから、これらは別の基準値を用いるべきでは?という声もあります。
2022年の統計データを見ると、出生時の平均体重は男の子は3.05kg、女の子は2.96kgでした。1)
出生時の男女の平均体重差は3%程度であることから、上記の推定体重の10%の誤差の範囲内と考えることができます。
またもともとの個人差や妊婦さんの食べているものの違いなどもあるため、胎児の性別や初産経産、胎児の数による区別は必要なく、同じ胎児発育曲線を用いてよいと考えられています。
双子の場合は上下の線の間に入っているか?体重が右肩上がりに増えているか?二人の体重の増え方に差がないか?という点に注意して成長を観察していきます。
胎児が大きい:発育曲線を上回っている
胎児発育曲線の上下の線からはみ出したとしても、一次的ならそれほど心配する必要はありません。
ただし、継続して上の線を超えている場合は以下のことが考えられます。
【胎児発育曲線を上回っている原因】
- 母体の糖尿病
- 遺伝的要因や胎児の体質
胎児が大きく育ちすぎてしまう原因として一番多いのは妊婦さんに糖尿病がある場合です。
妊娠前からの糖尿病はもちろん、妊娠すると高血糖になりやすいため約8人に1人の割合で妊娠糖尿病になります。
母体が高血糖状態の場合、結果的に胎児の体重が増加します。
母体に病気などの異常がなく、検査でも問題が無かった場合は体質や遺伝的要因だと考えられます。
大きいと何が問題?
大きい赤ちゃんの出産は分娩時に母体に負担がかかりすぎる可能性があるため、帝王切開を検討します。
巨大児で生まれた赤ちゃんは新生児低血糖を引き起こしやすく、電解質異常や黄疸も起こりやすいため、適切なケアが必要です。
また、胎児期に高血糖にさらされていると血糖値を調整するためにインスリンを多量に分泌することになり、その影響は大人になったときにまで及び、太りやすかったり糖尿病になりやすかったりします。
胎児が小さい:発育曲線を下回っている
継続して胎児発育曲線の下の線を超えている場合は胎児発育不全と診断されます。
胎児発育不全ではお腹の赤ちゃんが十分に栄養を摂取できていない可能性や何らかの異常で成長が遅れている可能性もありますが、約70%は体質的なもので特に原因はありません。
ですので、赤ちゃんの成長状況を詳しくモニタリングし、その他の検査データと総合して必要に応じてケアや治療を行います。
胎児発育不全の可能性
【胎児発育不全のリスクとなるもの】
- 胎児の染色体異常
- 胎児の形態異常
- 多胎妊娠
- 栄養不足
- 感染症
- 薬剤
- 喫煙
- 飲酒
- 前置胎盤
- 絨毛膜下血腫
- 臍帯結節
- 母体の疾患(妊娠高血圧症候群、糖尿病、腎疾患、膠原病など)
先天性感染症のうち、特に風疹ウイルスとサイトメガロウイルスが原因としてよく知られています。
そのほかエイズウイルスやヘルペスウイルス、トキソプラズマなども胎児発育不全につながる可能性があります。
母体の疾患や生活習慣は胎児の発育に直結しやすいため、禁煙禁酒はもちろんのこと、妊婦健診を通して母体の健康を管理することが大切です。
まとめ
胎児発育曲線は、妊娠中に赤ちゃんの成長を見守るための重要なツールです。
体重や成長の推移を把握することで、赤ちゃんが順調に育っているかどうかを確認できます。
ただし、推定体重には10%程度の誤差があるため、継続して観察することが大切です。
胎児発育曲線の上下の線の間に入っていれば順調に成長していると考えられますが、心配なことがあれば遠慮なく医師に相談しましょう。
赤ちゃんの成長に一喜一憂せず、リラックスして妊娠生活を楽しんでくださいね。
【参考URL】
1)人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生上巻 4-27 性・単産-複産別にみた出生時の体重(500g階級)別出生数及び百分率並びに出生時の平均体重 | 統計表・グラフ表示