
染色体異常による障害は、おなかの赤ちゃんの成長や健康に影響を及ぼし、成長障害や先天性の病気を引き起こす可能性があります。
妊娠中に胎児の染色体異常を調べる検査である「NIPT(新型出生前診断)」では、ダウン症、18トリソミー、13トリソミーが基本検査項目とされており、検査機関によってはさらに多くの染色体異常を調べることも可能です。
染色体異常にはどのような種類があるのか?その特徴も含めて一覧表にまとめました。
赤ちゃんの健康と向き合う第一歩として、ぜひご参考にしてください。
常染色体トリソミー

染色体とは、ヒトの体を作る遺伝情報を運ぶ「設計図」のようなものです。
そのため、この設計図に異常があると、体の機能や構造に影響が出ることがあります。
ヒトの染色体は、1番~22番までの「常染色体」と、23番の「性染色体」から成り、どの染色体にも異常が発生する可能性があります。
染色体異常には、「染色体の数」や「構造」に異常が見られる場合があります。
染色体は通常ペアで存在しますが、3本になると「トリソミー」、1本だけになると「モノソミー」と呼ばれます。
【主な常染色体トリソミー(数的異常)】
疾患名 | 特徴 |
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21トリソミー (ダウン症) |
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18トリソミー |
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13トリソミー |
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7トリソミー |
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8トリソミー |
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9トリソミー |
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10トリソミー |
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12トリソミー |
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14トリソミー |
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16トリソミー |
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20トリソミー |
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22トリソミー |
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「モザイク」とは、正常な細胞と異常のある細胞が混ざった状態のことで、症状は軽くなる傾向にあります。
出生児に見られる染色体異常の多くは、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの順で、これらが全体の約7割を占めます。
その他の染色体異常のほとんどは流産となりますが、モザイク型ではまれに出生することがあります。
常染色体でモノソミーが発生することは非常にまれで、ほとんどは妊娠初期に流産します。
母親の年齢が上がるにつれて卵子の分裂エラーのリスクが高まるため、高齢出産ではトリソミーの発生率が増加します。
性染色体トリソミー・モノソミー

性染色体の組み合わせは、男性が「XY」、女性が「XX」です。
性染色体異常は、出生時には明確な症状が現れないことが多く、思春期の身体の変化の異常や不妊などをきっかけに検査を受け、診断されることがよくあります。
【性染色体トリソミー・モノソミー】
疾患名 | 特徴 |
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ターナー症候群 X |
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クラインフェルター症候群 XXY |
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トリプルX症候群 XXX |
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XYY症候群 |
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ホルモン異常や生殖機能の問題が多くみられます。
学習障害や行動面での問題がみられることがありますが、寿命は一般の人と変わりません。
適切な支援や治療により、生活の質を高めることが可能です。
微小欠失・重複症候群

染色体の構造異常とは、染色体の一部が欠ける(欠失)、同じ部分が繰り返される(重複)、染色体の一部が逆向きになる(逆位)、または2本の染色体の一部や全体が入れ替わる(転座)といった異常のことです。
特に、染色体上の非常に小さい欠失や重複によって引き起こされる症候群を、微小欠失症候群 / 重複症候群と呼びます。
成長障害や発達遅滞、先天奇形などを伴いやすいことが特徴です。
【主な微小欠失・重複症候群】
疾患名 | 特徴 |
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1p36欠失症候群 |
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4pマイナス症候群 (Wolf-Hirschhorn症候群) |
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5pマイナス症候群 (猫鳴き症候群) |
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プラダーウィリー症候群 (15q11.2欠失症候群) |
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アンジェルマン症候群 (15q11.2欠失症候群) |
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ディジョージ症候群 22q11.2欠失症候群 |
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「1p36欠失症候群」は1番染色体の、「4p欠失症候群」は4番染色体の欠失(重複)によって発生します。
上記の表の疾病はすべて小児慢性特定疾病の対象です。
その理由としては、長期的な医療管理の必要性や医療費の負担の大きさ、早期介入の重要性、そして社会的支援の必要性が挙げられます。
寿命は症状の重さや合併症の有無によって大きく異なりますが、生命予後は比較的良好です。
また、父親の年齢が高くなると、染色体の構造異常が発生するリスクが高まることが知られています。
まとめ

染色体異常は胎児期にしばしば発生していますが、その大半は流産となり出生まで至りません。
出生時に最も多くみられる染色体異常はダウン症で、次いで18トリソミー、13トリソミーと多く、これらで染色体異常全体の約7割を占めます。
性染色体の異常は生殖機能や学習障害を伴いやすい一方で、生命にかかわる合併症は少なく、平均寿命は一般の人と変わりません。
微小欠失・重複症候群は染色体の変化はごくわずかですが、成長障害や発達遅滞、先天奇形などを伴いやすいことが特徴です。
DNAサイエンスで調べることができる染色体異常についてはこちらをご参考にしてください。
【参考文献】
編著:関沢明彦,佐村修,四元淳子,「周産期遺伝カウンセリングマニュアル 改訂3版」,中外医学社,2020年5月